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第一部 ダンジョンの階層主は、パーティに捨てられた泣き虫魔法使いに翻弄される
45. 駆けるホムラ
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「へぇ、ここが地上か…って呑気に観光気分でいる場合じゃねぇな」
魔法陣により地上のダンジョン前へ降り立ったホムラ。夜間はダンジョンは閉鎖されており、周囲に人影はなかった。
「おい、それでおチビはどっちだ?」
「へぁっ!?あ、あっちです…!」
ホムラは肩に担いだリリスに案内を命じ、リリスが慌てて指差した方へと駆け出した。
走りながら、空いた手のひらに魔力を集中して火球を作り出した。だが、魔力を練り込んでも、その大きさは手のひらに収まる程である。
(チィッ、身体の中に感じる魔力も微々たるもんだ。こりゃあ思ったよりマズいかもな)
ダンジョンの魔物は、ダンジョンの外ではその力の10分の1も発揮できない。散々ドリューンに言われたことだが、実際に地上へ降りて初めて痛感した。
腰に携えた灼刀からもほとんど魔力を感じない。ホムラの灼刀は魔剣であり、剣自身が魔力を内包している。だが、今回はそれが裏目にでたようだ。
(刀もいつもの力が出せねぇときたか)
エレインを探しながら、ホムラは密かに焦っていた。
「あ…ここです!」
ホムラ達は、あっという間にエレインとリリスがアレクに襲われた街外れまでやって来た。ホムラはその場でどさりとリリスを下ろして、辺りを見回した。
「それで、どっちに連れて行かれた?」
「あちらの…廃屋街の方です」
リリスが指差した方は、人の気配がなくいずれ朽ち果てて消えて行きそうな、そんな雰囲気を醸し出した場所だった。
「よし、ここからは俺一人で行く」
「えっ?」
「ここまで案内ご苦労だった」
ホムラは戸惑うリリスを置いて、廃屋街へと駆け出した。残されたリリスは呆気に取られてホムラを見送ったが、我に返るととある場所へ向かって走りだした。
(どこだァ?気を失って拉致られたってんなら…どっかの廃屋の中か?)
道すがらリリスに事情を聞いていたホムラは、片っ端から廃屋を覗き込んでいく。が、その数は到底一晩で確認できるものではなかった。
リリスによると、アレクは何やら得体の知れない道具を使っていたという。ホムラは辺りへの警戒も怠らない。
埒があかないと判断したホムラは立ち止まると、顎に手を当てて逡巡した。そして辺りを見回し、一番高い廃屋の屋根に飛び乗った。
(集中しろ…微かでも、アイツの魔力を感知するんだ)
目を閉じ、意識を集中させる。エレインの魔力は、彼女を拾ったあの日から毎日触れて来た。細い糸をたぐるように、エレインの魔力の残滓を探る。
と、その時だった。
ドォォン!と大きな音を立てて、一瞬火柱が夜空を照らしたのだ。
「っ!あっちか!」
瞬時にエレインの魔法だと判断したホムラは、爆発の方向へと疾走する。
その後も何度も爆発音が響いて来た。
(例の如く泣いてんじゃねぇだろうな…ったく、無事でいろよォ…!)
あの日面白そうだからと拾ったエレインは、いつの間にか、70階層に居るのが当たり前の存在になっていた。
アグニやドリューンとも仲良く過ごし、べそをかきながらも修行に励み、魔法の腕も上達していった。そして、いつしかホムラは、エレインと過ごすうちに暖かな気持ちを抱くようになっていった。
(おチビを…エレインを傷つけたら、タダじゃおかねぇぞ…!)
廃屋の屋根を飛び移りながら駆けるホムラの額には、めったに流れることのない脂汗が滲んでいた。
◇◇◇
渾身の火球が、アレクに跳ね返されてしまったエレインは、足がすくみ、動くことができずにいた。
眼前に迫り来る火球に全身を焼かれることを覚悟し、ギュッと目を閉じた。のだが、一向に炎に焼かれる痛みが訪れがない。
エレインが恐る恐る目を開けると、そこにはーーー
「…よぉ、随分帰りが遅せぇから迎えに来てやったぞ」
「う、嘘…ほ、ホムラさん…?」
肩に灼刀を乗せたホムラが、悠然とエレインに背を向けて立っていたのだった。
魔法陣により地上のダンジョン前へ降り立ったホムラ。夜間はダンジョンは閉鎖されており、周囲に人影はなかった。
「おい、それでおチビはどっちだ?」
「へぁっ!?あ、あっちです…!」
ホムラは肩に担いだリリスに案内を命じ、リリスが慌てて指差した方へと駆け出した。
走りながら、空いた手のひらに魔力を集中して火球を作り出した。だが、魔力を練り込んでも、その大きさは手のひらに収まる程である。
(チィッ、身体の中に感じる魔力も微々たるもんだ。こりゃあ思ったよりマズいかもな)
ダンジョンの魔物は、ダンジョンの外ではその力の10分の1も発揮できない。散々ドリューンに言われたことだが、実際に地上へ降りて初めて痛感した。
腰に携えた灼刀からもほとんど魔力を感じない。ホムラの灼刀は魔剣であり、剣自身が魔力を内包している。だが、今回はそれが裏目にでたようだ。
(刀もいつもの力が出せねぇときたか)
エレインを探しながら、ホムラは密かに焦っていた。
「あ…ここです!」
ホムラ達は、あっという間にエレインとリリスがアレクに襲われた街外れまでやって来た。ホムラはその場でどさりとリリスを下ろして、辺りを見回した。
「それで、どっちに連れて行かれた?」
「あちらの…廃屋街の方です」
リリスが指差した方は、人の気配がなくいずれ朽ち果てて消えて行きそうな、そんな雰囲気を醸し出した場所だった。
「よし、ここからは俺一人で行く」
「えっ?」
「ここまで案内ご苦労だった」
ホムラは戸惑うリリスを置いて、廃屋街へと駆け出した。残されたリリスは呆気に取られてホムラを見送ったが、我に返るととある場所へ向かって走りだした。
(どこだァ?気を失って拉致られたってんなら…どっかの廃屋の中か?)
道すがらリリスに事情を聞いていたホムラは、片っ端から廃屋を覗き込んでいく。が、その数は到底一晩で確認できるものではなかった。
リリスによると、アレクは何やら得体の知れない道具を使っていたという。ホムラは辺りへの警戒も怠らない。
埒があかないと判断したホムラは立ち止まると、顎に手を当てて逡巡した。そして辺りを見回し、一番高い廃屋の屋根に飛び乗った。
(集中しろ…微かでも、アイツの魔力を感知するんだ)
目を閉じ、意識を集中させる。エレインの魔力は、彼女を拾ったあの日から毎日触れて来た。細い糸をたぐるように、エレインの魔力の残滓を探る。
と、その時だった。
ドォォン!と大きな音を立てて、一瞬火柱が夜空を照らしたのだ。
「っ!あっちか!」
瞬時にエレインの魔法だと判断したホムラは、爆発の方向へと疾走する。
その後も何度も爆発音が響いて来た。
(例の如く泣いてんじゃねぇだろうな…ったく、無事でいろよォ…!)
あの日面白そうだからと拾ったエレインは、いつの間にか、70階層に居るのが当たり前の存在になっていた。
アグニやドリューンとも仲良く過ごし、べそをかきながらも修行に励み、魔法の腕も上達していった。そして、いつしかホムラは、エレインと過ごすうちに暖かな気持ちを抱くようになっていった。
(おチビを…エレインを傷つけたら、タダじゃおかねぇぞ…!)
廃屋の屋根を飛び移りながら駆けるホムラの額には、めったに流れることのない脂汗が滲んでいた。
◇◇◇
渾身の火球が、アレクに跳ね返されてしまったエレインは、足がすくみ、動くことができずにいた。
眼前に迫り来る火球に全身を焼かれることを覚悟し、ギュッと目を閉じた。のだが、一向に炎に焼かれる痛みが訪れがない。
エレインが恐る恐る目を開けると、そこにはーーー
「…よぉ、随分帰りが遅せぇから迎えに来てやったぞ」
「う、嘘…ほ、ホムラさん…?」
肩に灼刀を乗せたホムラが、悠然とエレインに背を向けて立っていたのだった。
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