【完結】パーティに捨てられた泣き虫魔法使いは、ダンジョンの階層主に溺愛される

水都 ミナト

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第二部 パーティに捨てられた泣き虫魔法使いは、ダンジョンの階層主に溺愛される

99. 終幕

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 アグニがメキメキと手足を竜化し、シンを迎え撃った。エレインの暖かな光に包まれ、防御力や呪詛耐性を付与されたアグニの爪は硬かった。

 ガキン!と鈍い音がして、振り下ろされた剣をアグニが爪で掴んだ。そしてそのまま握りつぶすように剣を粉々に打ち砕いたのだ。

「はっ!アグニ、やるじゃねぇか」
「見縊らないでくださいよ!僕だってホムラ様の立派な従者なんですから!」

 忌々しげに剣を握ったままのシンの腹をホムラが思い切り蹴り飛ばす。ボキッとあばらが折れる音がし、シンの身体は壁まで吹き飛ばされた。

「へぇ、力が漲ってくるようだな」

 ホムラはぼんやり光を纏った手を握って感触を確かめている。

 ガラガラと瓦礫の中からよろめきながらシンが立ち上がり、プッと血の塊を吐き出した。痛みに顔を歪めながら口元を拭い、ホムラを睨みつけている。

「アグニ、エレイン」

 ホムラはアグニとエレインの名を呼んだ。2人はそれだけでホムラの意図を汲んだらしく、大きく頷いた。

 ホムラが手のひらに魔力を集中させ、高火力の火球を作り出していく。アグニも大きく口を開き、喉の奥でバチバチと火花を散らしている。エレインは両手を前に突き出し、手のひらに金色に煌めく魔力を集中させる。

「行くぞ!」

 ホムラの声を合図に、ホムラとアグニが攻撃を放つ。アグニのブレスを纏い、威力と勢いを増した業火がシンに向かっていく。そして、その業火を包み込むようにエレインの魔力の光が追従する。

「クク…愚かな。俺に魔法は効かないと学習しなかったのか?」

 シンは余裕のある目つきで迫り来る業火を見据え、魔力反射させるべく手のひらを翳した。

「なっ…!?」

 だが、シンの闇魔法はホムラの業火に届く前に、業火を包み込むエレインの光によって昇華されていく。

「そう何度も同じ手を食うわけがねェだろうが。おら、爆ぜろォォ!!」

 シンはコマ送りのように業火が迫り来る中、キラキラと自身の闇魔法が淡い光となり霧散していく様が、皮肉にも美しいと感じてしまった。

「グアァァァァァっ!!!」

 シンの身体が業火に包まれ、激しい爆発を起こした。ホムラ達はエレインの《水の壁ウォーターウォール》に包まれ、熱風を凌ぎ、肩を寄せ合って激しい突風に耐える。

 ボスの間の中に立ち込めていた煙が霧散し、炎が静まっていく。

 シンの身体は地面に臥し、身体は煤け、黒い煙が立ち上がっていた。

「ぐ…どういう、つもりだ…手加減しやがって」

 シンは身体が動かないのか、顔だけをホムラ達に向けて呻くように声を絞り出した。あれほどの業火に焼かれたのだ、骨も残らず燃え尽きてもおかしくはなかったが、シンの身体は無数の火傷こそあるものの、命に別状はない。

「はっ、加減なんかしてねぇよ。お前を守ったのはエレインだ」

 シンはエレインに視線を移す。エレインはまっすぐな目でシンを見据えていた。

(ふん、なるほど。あの光は俺の闇魔法を打ち消すだけではなく、身体の持ち主をも守ったというのか。…なんて奴だ)

 エレインはこの戦いの勝利だけでなく、シンが操る冒険者を救うことも念頭に動いていたらしい。シンはホムラやエレインを傷つけ、ダンジョンの理に一矢報いることにのみ気を注いでいた。
 どう足掻いても彼らには勝てない、シンは素直にそう感じた。どちらにせよ、もう指一本も動かせそうもない。

 シンがホムラ達の動向を見守っていると、エレインがゆっくりとシンに歩み寄ってきた。

「おい、エレイン」
「大丈夫です。任せてください」

 ホムラに制止されるが、エレインは穏やかな笑みでホムラに応えると、シンの傍らに膝を突きその上体を起こした。シンはされるがまま訝しげにエレインを見上げる。

 そしてエレインは、無表情のままペチンとシンの頬を打った。シンは何が起きたのか理解が追いつかず、ポカンと口を開いている。エレインは悲しそうな笑みを浮かべると、そっとシンを抱きしめた。

「なっ…」
「…どうか、あなたにも生きる理由が見つかりますように」

 そう言ってエレインの身体から金の光の粒子が溢れる。光はシンの身体を包み込み、黒い靄が溢れては消えていく。

(ふん…生意気なやつだ)

 身体を乗っ取っていた冒険者のビルドから、シンの魂が抜けていく。シンは暖かな光に包まれながら、静かに目を閉じた。

「…行ったか?」
「…はい。この人に入り込んでいたシンの魂は浄化されました」

 エレインはそっとビルドの身体を横たえ、額に手を翳すと治癒魔法を施していく。ホムラとアグニは未だ倒れたままの他の冒険者を担ぎ上げて地上への魔法陣に向かっていく。

「こいつら、帰すぞ」
「はい」

 魔法陣に冒険者達を横たえると、転移の光に包まれて、4人はボスの間から姿を消した。最後に火傷や骨折を治癒したビルドをホムラが抱えて魔法陣へ移動する。

「今度は真っ当な挑戦者として挑みに来る日を待ってるぜ」

 そう言って口角を上げると、ビルドの身体を魔法陣に横たえた。

 ビルドの転移を見送ると、ホムラはエレインとアグニに向き合った。

「おう、終わったな」
「はい!」
「ホムラ様ー!!」
「うおっ」

 エレインとアグニは満面の笑みで頷くと、ホムラに飛びついた。

「っていうかお前、その姿のままなんだな」
「え?あ、本当ですね」

 ホムラに指摘され、エレインは自らの耳を触る。僅かに尖った耳はハイエルフの特徴を表している。ホムラの瞳に映るエレインの目には僅かに金色の光が宿っている。

「魔力が馴染んだからでしょうか…」

 エレインの中に眠っていたハイエルフの魔力が、正式にエレインの元来の魔力と同化した。その影響で、以前の一時的なものではなく、恒常的にハイエルフの特徴が顕現しているらしい。

 ホムラは照れ臭そうに耳をこねるエレインの髪を一房取り、そっと唇を添えた。

「姿が変わってもお前はお前だ」
「ホムラさん…」

 ホムラに見つめられ、エレインの頬に朱が差す。
 ゆっくりと2人の顔が近づきーーー

「ちょっと、僕のこと忘れてませんか?」

 ホムラにしがみ付きながら不服そうに見上げるアグニの一言によって、ぴたりと動きを止めた。

「…チッ」

 ホムラは気まずそうに舌打ちをし、エレインは顔を真っ赤に染めて俯いてしまった。そして3人同時に噴き出して、ボスの間には明るい笑い声が響いた。

「みんな無事だったみたいね。よかったわ」
「ど、ドリューさんっ!?」

 朗らかな空気の中、部屋の中心に転移の光が弾け、ドリューンが現れた。
 突然の登場にも驚かされたが、エレインはドリューンと共に現れた人物の姿を捉え、目を大きく見開いた。

「…ウォン?」
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