役立たずのお飾り令嬢だと婚約破棄されましたが、田舎で幼馴染領主様を支えて幸せに暮らします

水都 ミナト

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婚約破棄されてしまいました

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 あらあら、困りました。

 わたくし、伯爵令嬢であるクリスティーナ・ロレーヌは眉根を下げて首を傾げながら、思わず頬に手を添えてしまいました。
 目の前には私の婚約者であるフィリップ・ダルマン子爵令息様が、両脇に煌びやかなご令嬢を侍らせて身体が沈み込むほどふかふかなソファで踏ん反り返っていらっしゃいます。

「何をぼーっとしている?聞こえなかったのか?俺はお前との婚約を破棄すると言ったんだ」
「はぁ、理由を伺っても?」

 突然の申し出に理由を尋ねると、フィリップ様はうんざりしたように深いため息をつかれました。

「お前はいつも俺の側に居るだけ・・・・・・で、何の役にも立っていないじゃないか!いつも傍らでニコニコ笑っているだけで仕事の一つも手伝おうとしない!そんな“お飾り令嬢”は俺にはふさわしくない!」

 全く何を仰っているのでしょうか。私はいつもあなたの側に居た・・・・・・・・ではありませんか。本当に困ったお方ですこと。その本当の意味をご理解されていないのですね。

 まあ、確かに最近のフィリップ様はご自身で起こした事業を成功されて、傾きかけていたご実家を立て直して各所から注目を集めていらっしゃいます。
 私も出会った頃はご実家の力になりたいと努力されるお姿に共感して、手助け・・・をしようと、両親に反対されつつもフィリップ様からの婚約の申し出を受けたのですが…最近のフィリップ様の天狗っぷりは目に余るものがありましたわ。最近では側に控える私を邪険にし、数多のご令嬢と懇意にされてましたものね。ここらが潮時かしら。

「…分かりましたわ。今この時をもって婚約を解消いたしましょう。そちらの書類にサインすれば宜しくて?」
「あ、ああ…そうだ」

 私が泣いて縋るとでも思っていたのでしょうか?素直に婚約破棄を受け入れたことに少々面食らっておられますね。私はフィリップ様のアホヅラを横目で見つつサラサラと婚約解消の書類にペンを走らせます。

 こんな紙切れ一枚で婚約解消が成されるなんて、何とも虚しいことです。

 書き終わった書類をフィリップ様にお渡しすると、彼はたじろぎながらもその書類を受け取られました。

「う、うむ。確かに受け取った」
「では、失礼いたします」

 私は優雅に一礼すると、部屋の扉に手をかけ、肩越しに振り返りながら別れの挨拶をして部屋を後にいたしました。
 去り際には満面の笑みでこう言ってやりましたの。

「さようならフィリップ様…ああ、何があっても後から文句は仰らないでくださいね?どんなに乞われましても復縁も致しませんので。どうかお一人の力でせいぜい頑張ってくださいな」

 扉を閉める際に両脇のご令嬢がコソコソと何やら仰っているのが聞こえました。フィリップ様もふんと鼻を鳴らしておられましたね。

「はんっ!何を言っているんだアイツは。ただの強がりだろう。放っておけ」

 最後に耳に入ったのはそんなお言葉。

 あなたこそ、幸運の女神に見限られたことを後々後悔することになっても…まあ知ったこっちゃありませんわね。

「さて、晴れて自由の身になったというわけですね」

 このまま実家に帰ってもいいのですが、婚約破棄を言い渡されたなんてお父様の耳に入ったら…ああ面倒です。ただでさえ爵位が下のフィリップ様との婚約に難色を示しておられましたのに、そんなフィリップ様から婚約破棄を突きつけられただなんて…ああフィリップ様、お気の毒に。
 私はしばらくは伯爵家の別荘のあるリアス領にでも身を隠しましょうか。久しぶりに田舎でのんびりするのも素敵ですわね。

 私はそのままの足で馬車を捕まえ、のんびりと数時間揺られてリアス領へとまいりました。
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