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第三話 事件
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そして八歳になった私は、とある事件を起こしてしまう。
レイモンド殿下とアイシャ様は相変わらず相思相愛で、私を入れてよく三人でお茶会を開いていた。二人とも私を妹のように可愛がってくれる。私は大好きな二人がどうにか結ばれる方法はないかと考えるようになっていた。
そして閃いたのだ。
「アイシャ様!こっちです!」
「うふふ、ナターシャは足が速いのね」
アイシャ様がレイモンド殿下と結ばれないのはマナの扱いが苦手だから。では、マナの扱い方を私が教えてあげれば問題は解決するのではないか。そのためにはマナのたくさんある場所でマナに触れるのが手っ取り早い。
そう短絡的に考えた私は、シルフィード様が私のために密かに繋いでくれた精霊界への入り口付近へとアイシャ様を連れて行った。森の奥深く、綺麗な水が湧き出る泉の側でとても綺麗な場所。
きっとアイシャ様も気に入ってくれる、そう思っていた。
「はぁ…はぁ…随分森の深くに来てしまったわね…はぁ…」
私は慣れっこだが、可憐なアイシャ様には獣道はかなり大変な道中だったようで、すっかり肩で息をしている。
「アイシャ様、どうですか?ここはマナに溢れています。私とマナを扱う練習をしましょう!」
両手にマナを集めて柔らかな光を発する。すると周囲のマナも反応してチカチカと満天の星空のように煌めいた。さあ、アイシャ様も…と振り返ると、アイシャ様の様子がおかしかった。
「ナター、シャ…なんだか私…くるし…はぁっ…」
「アイシャ様?どうかしましたか?…アイシャ様っ!!」
顔は真っ白になり、息苦しそうに胸を押さえて、とうとう膝から崩れ落ちてしまったのだ。
「ど、どうしようっ…アイシャ様っ!アイシャ様っ!」
私が途方に暮れて泣き出しそうになっていると、ふわりと優しい風が溢れかけた涙を拭うように頬を撫でた。
「ナターシャ、何をしている」
「シルフィード様っ!アイシャ様が…」
「ふむ、マナにあてられたか。森の入り口まで送ろう。この場から離れてマナの暴走が落ち着けば元気になるだろう」
シルフィード様が手をくるりと回すと、温かな風が私たちの周りを旋風のように取り囲んだ。思わず目を閉じ、再び開くとそこは森の入り口だった。
「…すごい」
「ナターシャ」
「はいっ、シルフィード様、ありがとうございます」
呆気に取られていた私はハッと我に帰ると、シルフィード様にお辞儀をしてお礼を言い、アイシャ様の様子を確認した。頬は桃色に戻り、表情も穏やかになっていた。
「ナターシャ、普通の人間はマナの濃い場所に行くとこの娘のようになる」
「あ…」
私のせいでアイシャ様が…ようやくそのことに気付いて私は項垂れた。だが、そんな私の頭を優しくシルフィード様が撫でてくれた。
「お前は特別だということをゆめゆめ忘れるな」
そう言ってシルフィード様は風に乗って消えてしまった。
レイモンド殿下とアイシャ様は相変わらず相思相愛で、私を入れてよく三人でお茶会を開いていた。二人とも私を妹のように可愛がってくれる。私は大好きな二人がどうにか結ばれる方法はないかと考えるようになっていた。
そして閃いたのだ。
「アイシャ様!こっちです!」
「うふふ、ナターシャは足が速いのね」
アイシャ様がレイモンド殿下と結ばれないのはマナの扱いが苦手だから。では、マナの扱い方を私が教えてあげれば問題は解決するのではないか。そのためにはマナのたくさんある場所でマナに触れるのが手っ取り早い。
そう短絡的に考えた私は、シルフィード様が私のために密かに繋いでくれた精霊界への入り口付近へとアイシャ様を連れて行った。森の奥深く、綺麗な水が湧き出る泉の側でとても綺麗な場所。
きっとアイシャ様も気に入ってくれる、そう思っていた。
「はぁ…はぁ…随分森の深くに来てしまったわね…はぁ…」
私は慣れっこだが、可憐なアイシャ様には獣道はかなり大変な道中だったようで、すっかり肩で息をしている。
「アイシャ様、どうですか?ここはマナに溢れています。私とマナを扱う練習をしましょう!」
両手にマナを集めて柔らかな光を発する。すると周囲のマナも反応してチカチカと満天の星空のように煌めいた。さあ、アイシャ様も…と振り返ると、アイシャ様の様子がおかしかった。
「ナター、シャ…なんだか私…くるし…はぁっ…」
「アイシャ様?どうかしましたか?…アイシャ様っ!!」
顔は真っ白になり、息苦しそうに胸を押さえて、とうとう膝から崩れ落ちてしまったのだ。
「ど、どうしようっ…アイシャ様っ!アイシャ様っ!」
私が途方に暮れて泣き出しそうになっていると、ふわりと優しい風が溢れかけた涙を拭うように頬を撫でた。
「ナターシャ、何をしている」
「シルフィード様っ!アイシャ様が…」
「ふむ、マナにあてられたか。森の入り口まで送ろう。この場から離れてマナの暴走が落ち着けば元気になるだろう」
シルフィード様が手をくるりと回すと、温かな風が私たちの周りを旋風のように取り囲んだ。思わず目を閉じ、再び開くとそこは森の入り口だった。
「…すごい」
「ナターシャ」
「はいっ、シルフィード様、ありがとうございます」
呆気に取られていた私はハッと我に帰ると、シルフィード様にお辞儀をしてお礼を言い、アイシャ様の様子を確認した。頬は桃色に戻り、表情も穏やかになっていた。
「ナターシャ、普通の人間はマナの濃い場所に行くとこの娘のようになる」
「あ…」
私のせいでアイシャ様が…ようやくそのことに気付いて私は項垂れた。だが、そんな私の頭を優しくシルフィード様が撫でてくれた。
「お前は特別だということをゆめゆめ忘れるな」
そう言ってシルフィード様は風に乗って消えてしまった。
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