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第6話 獣人と魚人の隔たり①
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「う~ん、なんて爽やかな朝なのかしら!日差しがとっても気持ち良いわ」
昨日ラルフに王宮への滞在を許されたため、マリアンヌはありがたく与えられた部屋でゆっくりと休養させてもらった。
夕食時にはテディが部屋まで食事を運んでくれた。ザバン獣王国の特産物である果物や野菜を盛り沢山に使用したサラダは絶品で、果実がたっぷり入った甘酸っぱい果実水も癖になる美味しさだった。
美味しいご飯を食べ、湯浴みをし、ふかふかのベッドでぐっすり眠ったマリアンヌはすっかり元気になっていた。
ベッドから降りて大きな窓を開けると、暖かな朝の日差しが降り注ぎ何とも心地よい。海底では感じることのできない太陽の眩さに目を細める。
「マリアンヌ様、お目覚めですか?」
「テディ!ええ、どうぞ入ってちょうだい」
窓の外を眺めていると、コンコンと扉をノックする音と共に、メイドのテディの声がした。
マリアンヌはその声にパァッと表情を明るくする。
まだ知り合って一日しか経っていないが、愛らしくて優しくて気配りが効いて、おまけに可愛いもふもふしたお耳がついたテディのことがすっかり大好きになっていた。
「おはようございます。朝の支度をお手伝いしますね」
「おはよう!今日も素敵な笑顔ね。最高に癒されるわ」
「あ、ありがとうございます…」
「ねぇ、今日こそその可愛いお耳をすこーし触ってもいいかしら?」
「ひぇっ!あの、その…恥ずかしいのでご遠慮願いたく…」
「少し…少しでいいの!はぁ、はぁ…ねぇ、お願いよぉ…」
「おい、うちのメイドを困らせるな」
「あら、殿下。おはようございます。今日もご機嫌麗しく、とっても素敵ですわね」
マリアンヌの鼻息が荒くなってきた辺りで、いつの間にか呆れ顔で扉にもたれかかっていたラルフに制止された。テディは耳をぺたんと倒して顔を真っ赤にしており、ラルフの登場にホッと息を吐いていた。可愛い。
「随分と顔色が良くなってるな。よく眠れたか」
「ええ、お陰様ですっかり本調子ですわ。ありがとうございます。このご恩は一生かけて、伴侶として添い遂げることでお返しいたしますわ」
「いらん」
「あら、照れなくてもいいのですよ?」
「照れてない!いらんものはいらん!」
そっけない態度であるが、こうして部屋を訪ねてきたということは、わざわざマリアンヌの様子を見に来てくれたのだろう。ラルフは言葉はキツイが優しい人なのだとマリアンヌは感じている。
「それで、今日はどうするつもりだ?」
「ええ!今日こそはこの国の魅力を余すところなく味わい尽くす所存ですわ!!」
そう、昨日は着いて早々に倒れてしまったため、マリアンヌ憧れのザバン獣王国をほとんど見て回れていない。身体がウズウズして今すぐにでも王宮を飛び出して国中走り回りたいぐらいなのだ。
目を爛々と輝かせるマリアンヌを横目に、ラルフは小さくため息をついた。
「そうか、ならば俺がこの国を案内しよう」
「えっ!?良いのですか!?」
「お前みたいな危ない女を野放しにするわけにはいかんしな」
とは言いつつ、魚人の姫の身に危険があってはならないので、ラルフは獣人の王子としてマリアンヌの護衛に来たのであった。ラルフの王子としての気配りに、マリアンヌは両手を合わせて目を輝かせる。
「これは紛うことなきデートのお誘いですわね!謹んでお受けいたします!」
「だから違う!人の話を聞け!」
こうしてマリアンヌはラルフの案内を受け、獣王国を見て回ることとなった。
国を案内する話をしに来ただけなのだが、すっかりマリアンヌのペースに呑まれ、ラルフは既にこの先気力が保つのか心配でならなかった。
◇◇◇
「ああ…あっちにも…はぁっ!こっちにも…!どこを見ても素敵な獣人さんで溢れているわ…!」
「獣王国だからな」
支度と朝食を済ませたマリアンヌは、ラルフと共に王宮の外に出た。当たり前だが至る所に獣人の姿があり、マリアンヌの興奮は絶頂だ。
キョロキョロと首がちぎれるのではないかと心配になるほど落ち着きのないマリアンヌ。その様子を呆れ顔で見つつ、ラルフは街を案内した。
メイン通りに商業地区、飲食店が立ち並ぶ通りに居住区。どこもかしこも活気に溢れており、国の豊かさが表れていた。
「あー!ラルフ様!おはようございます!」
「王子、元気そうだねえ」
「殿下、今朝採りたての鶏肉はどうだい?」
そして、ラルフは行く先々で王国民に声をかけられている。この国の民とラルフは随分と気安い仲のようだ。王子が護衛もつけずに街を散策できるのも平和な証だろう。マリアンヌの思った通り、ザバン獣王国は平穏で素晴らしい国のようだ。
「うふふふ」
「なんだ、気持ちが悪いな」
「いえ、殿下はとても国民に愛され、慕われているのですね」
「はあ?何だよそれ」
「民に愛され、民を愛する。そんな王が治める国は益々豊かになるでしょう。殿下はきっと優秀な王になられますわ」
「…ふん、当然だ」
こう見えて王族であるマリアンヌの言葉に満更でもないラルフである。
日が真上に登り小腹も空いてきたところで、二人は近くのカフェに入った。
ラルフはローストビーフのハンバーガーを、マリアンヌはふわふわのたまごサンドを注文した。
「それで、お前がこの国に来た目的は何だ」
料理を待つ間、ラルフが単刀直入に尋ねた。ピリッと空気が張り詰める中、マリアンヌはパチパチと目を瞬くと真面目な顔で答えた。
「私、幼い頃から獣人さんと結婚するのが夢だったのです。シーウッド海王国は、成人となる十六歳になれば国を出ることが許されます。先日晴れて成人した私は念願の地上へとやって来たのです」
「ふぅん、それで?」
「丸一日寝ずに泳ぎ続け、私はようやく憧れのザバン獣王国にやって来たのです!!」
「なるほど、それでぶっ倒れたってわけか」
「ええ、まさか王子殿下に助けていただけるとは…これも何かの縁です。結婚しませんか?」
「お前の話はぶっ飛びすぎだ!」
「そんなことはありませんよ?私は獣人さんと結婚して夢のもふもふライフを手に入れるために国を出たのですから!」
マリアンヌが獣王国にやって来た経緯はおおよそ把握したが、それにしてもまさかただの私利私欲で動いているとは驚きだ。てっきり偵察や友好を結ぶために訪れたのではと考えていたラルフは拍子抜けだ。
料理が運ばれて来たので、一旦会話は中断してそれぞれ目の前のハンバーガーとサンドイッチにかぶり付く。黙々と昼食を味わったあと、食後の紅茶で口を潤していたマリアンヌがカッと目を見開いた。
ーーーーー
長らくお待たせしました!
1/28より更新再開します。よろしければお付き合いください。
新作も公開中なので合わせて読んでいただけると嬉しいです(*´꒳`*)
昨日ラルフに王宮への滞在を許されたため、マリアンヌはありがたく与えられた部屋でゆっくりと休養させてもらった。
夕食時にはテディが部屋まで食事を運んでくれた。ザバン獣王国の特産物である果物や野菜を盛り沢山に使用したサラダは絶品で、果実がたっぷり入った甘酸っぱい果実水も癖になる美味しさだった。
美味しいご飯を食べ、湯浴みをし、ふかふかのベッドでぐっすり眠ったマリアンヌはすっかり元気になっていた。
ベッドから降りて大きな窓を開けると、暖かな朝の日差しが降り注ぎ何とも心地よい。海底では感じることのできない太陽の眩さに目を細める。
「マリアンヌ様、お目覚めですか?」
「テディ!ええ、どうぞ入ってちょうだい」
窓の外を眺めていると、コンコンと扉をノックする音と共に、メイドのテディの声がした。
マリアンヌはその声にパァッと表情を明るくする。
まだ知り合って一日しか経っていないが、愛らしくて優しくて気配りが効いて、おまけに可愛いもふもふしたお耳がついたテディのことがすっかり大好きになっていた。
「おはようございます。朝の支度をお手伝いしますね」
「おはよう!今日も素敵な笑顔ね。最高に癒されるわ」
「あ、ありがとうございます…」
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「ひぇっ!あの、その…恥ずかしいのでご遠慮願いたく…」
「少し…少しでいいの!はぁ、はぁ…ねぇ、お願いよぉ…」
「おい、うちのメイドを困らせるな」
「あら、殿下。おはようございます。今日もご機嫌麗しく、とっても素敵ですわね」
マリアンヌの鼻息が荒くなってきた辺りで、いつの間にか呆れ顔で扉にもたれかかっていたラルフに制止された。テディは耳をぺたんと倒して顔を真っ赤にしており、ラルフの登場にホッと息を吐いていた。可愛い。
「随分と顔色が良くなってるな。よく眠れたか」
「ええ、お陰様ですっかり本調子ですわ。ありがとうございます。このご恩は一生かけて、伴侶として添い遂げることでお返しいたしますわ」
「いらん」
「あら、照れなくてもいいのですよ?」
「照れてない!いらんものはいらん!」
そっけない態度であるが、こうして部屋を訪ねてきたということは、わざわざマリアンヌの様子を見に来てくれたのだろう。ラルフは言葉はキツイが優しい人なのだとマリアンヌは感じている。
「それで、今日はどうするつもりだ?」
「ええ!今日こそはこの国の魅力を余すところなく味わい尽くす所存ですわ!!」
そう、昨日は着いて早々に倒れてしまったため、マリアンヌ憧れのザバン獣王国をほとんど見て回れていない。身体がウズウズして今すぐにでも王宮を飛び出して国中走り回りたいぐらいなのだ。
目を爛々と輝かせるマリアンヌを横目に、ラルフは小さくため息をついた。
「そうか、ならば俺がこの国を案内しよう」
「えっ!?良いのですか!?」
「お前みたいな危ない女を野放しにするわけにはいかんしな」
とは言いつつ、魚人の姫の身に危険があってはならないので、ラルフは獣人の王子としてマリアンヌの護衛に来たのであった。ラルフの王子としての気配りに、マリアンヌは両手を合わせて目を輝かせる。
「これは紛うことなきデートのお誘いですわね!謹んでお受けいたします!」
「だから違う!人の話を聞け!」
こうしてマリアンヌはラルフの案内を受け、獣王国を見て回ることとなった。
国を案内する話をしに来ただけなのだが、すっかりマリアンヌのペースに呑まれ、ラルフは既にこの先気力が保つのか心配でならなかった。
◇◇◇
「ああ…あっちにも…はぁっ!こっちにも…!どこを見ても素敵な獣人さんで溢れているわ…!」
「獣王国だからな」
支度と朝食を済ませたマリアンヌは、ラルフと共に王宮の外に出た。当たり前だが至る所に獣人の姿があり、マリアンヌの興奮は絶頂だ。
キョロキョロと首がちぎれるのではないかと心配になるほど落ち着きのないマリアンヌ。その様子を呆れ顔で見つつ、ラルフは街を案内した。
メイン通りに商業地区、飲食店が立ち並ぶ通りに居住区。どこもかしこも活気に溢れており、国の豊かさが表れていた。
「あー!ラルフ様!おはようございます!」
「王子、元気そうだねえ」
「殿下、今朝採りたての鶏肉はどうだい?」
そして、ラルフは行く先々で王国民に声をかけられている。この国の民とラルフは随分と気安い仲のようだ。王子が護衛もつけずに街を散策できるのも平和な証だろう。マリアンヌの思った通り、ザバン獣王国は平穏で素晴らしい国のようだ。
「うふふふ」
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日が真上に登り小腹も空いてきたところで、二人は近くのカフェに入った。
ラルフはローストビーフのハンバーガーを、マリアンヌはふわふわのたまごサンドを注文した。
「それで、お前がこの国に来た目的は何だ」
料理を待つ間、ラルフが単刀直入に尋ねた。ピリッと空気が張り詰める中、マリアンヌはパチパチと目を瞬くと真面目な顔で答えた。
「私、幼い頃から獣人さんと結婚するのが夢だったのです。シーウッド海王国は、成人となる十六歳になれば国を出ることが許されます。先日晴れて成人した私は念願の地上へとやって来たのです」
「ふぅん、それで?」
「丸一日寝ずに泳ぎ続け、私はようやく憧れのザバン獣王国にやって来たのです!!」
「なるほど、それでぶっ倒れたってわけか」
「ええ、まさか王子殿下に助けていただけるとは…これも何かの縁です。結婚しませんか?」
「お前の話はぶっ飛びすぎだ!」
「そんなことはありませんよ?私は獣人さんと結婚して夢のもふもふライフを手に入れるために国を出たのですから!」
マリアンヌが獣王国にやって来た経緯はおおよそ把握したが、それにしてもまさかただの私利私欲で動いているとは驚きだ。てっきり偵察や友好を結ぶために訪れたのではと考えていたラルフは拍子抜けだ。
料理が運ばれて来たので、一旦会話は中断してそれぞれ目の前のハンバーガーとサンドイッチにかぶり付く。黙々と昼食を味わったあと、食後の紅茶で口を潤していたマリアンヌがカッと目を見開いた。
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