女性一人読み台本

あったいちゃんbot

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宝箱

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親が引っ越しをすることになって、実家の荷物いくつか送られてきた。
段ボールを開けると、家の匂いがして、昔もらった賞状だかの底に、懐かしい宝箱が入っていた。
当時好きだったキャラクターのシールで飾られた、銀色の空き缶。

でも、これを開けたら、子どもに戻ってしまいそうで、開けられなかった。
プラスチック製のネックレス、安物のヘアピン、使いかけのシール、電池切れの時計、可愛いレターセット、出せなかったいくつかの手紙。

当たり前だった愛とか、温もりだとかが、この箱の中には詰まっていて、開けるとその暖かさが今に溶けてしまいそうで
この部屋では小さな宝石たちよりも、そんなおもいでたちの方が大切で。

この部屋は一人には広くて、自由な反面、時々寂しくなる。
この街は独りには広くて、自由な反面、時々寂しくなる。
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