台本

あったいちゃんbot

文字の大きさ
5 / 38
今度は公園で会おうね(男1:女1)ラブストーリー

今度は公園で会おうね

しおりを挟む
女:
 町でアイツを見かけた。いつもよりちょっとおしゃれして、いつもよりいい笑顔して、可愛い女の子を連れて。
 買い物を取り止めて、家に帰って。休日の予定はパァ。
 どれぐらい経ったんだろう。気づけば夜もふけて、窓のそとには月が見えている。
 鏡に写った顔を覗き込む。なるほど、あの子を選ぶわけだ。こんな不細工で、目も腫れてて、いかにもかわいそうな。
 アイツの携帯を鳴らす。ワンコール、ツーコール、3.4....7.8...もう諦めようかと電話を切ろうとした時に繋がる。繋がってしまう。

男:
「ごめん。遅くなった」

女:
「なんででるの?」

男:
「え?何だそれ、かけてきたじゃん」

女:
「ねぇ、海いこう」

男:
「話聞けよ…」

女:
「車だして、待ってるね」

男:
「はぁ?今から?」

女:
「うん」

男:
「今日は無理。人といるから」

女:
「お願い…」

男:
「……何かあったの?」

女:
「…。失恋した」

男:
「あぁ…。はぁ、わかったよ。いまどこ?」

女:
「家」

男:
「ついたらまた連絡する」


女:
 少しでも近くで声が聞きたくて、痛いくらい携帯を耳に押し当ててた。お陰で目だけでなく、耳まで赤くなってしまった。
 彼女といたんでしょ?私を優先しちゃダメだよ。彼女を優先しないとフラれちゃう。なんて、私が作り出した状況を、他人事のように俯瞰(ふかん)している。
 少ししてから携帯がなる。要件だけの簡素なメッセージ。表に着いたよ。
 当たり前のように助手席に乗り込んで、シートを限界まで後ろにずらして、わからなくする。

男:
 一言で言うと、悲惨。髪もボサボサ、目は真っ赤で、いかにもさっきまで泣いてましたって感じ。
 シートベルトを閉める音を聞いてからブレーキを抜いて、少しずつ車が動き始める。

女:
 周りの景色が後退していく。相変わらず丁寧な運転だな、と思う。

「運転って、恋人の扱い方がわかるって言うよね」

男:
「なにそれ?適当だろ。そんなん」

女:
「運転って本性出るって言うじゃん。女の子の扱いも一緒なんだよ。きっと」

男:
「あー…、それはわからないでもないかも」

女:
「きっとアンタの彼女は幸せだね」

男:
「…だといいね」

女:
「…。そこのコンビニよってよ。お酒買うから」

男:
「えぇ…。飲むの?」

女:
「だめ?」

男:
「いいけど……、車で吐くなよ?」

女:
「そんなに飲まないよ。飲ませなければね」

男:
「はいはい」

男:
 車の中で携帯をいじる。ごめん。埋め合わせはちゃんとするから。って。
 待っていると再び彼女が助手席に乗り込み、ビニール袋をガサガサと漁っている。

「冷たっ!」

女:
「はい、駄賃」

男:
「さんきゅー。ってこれ酒じゃねぇーか。飲めねーよ」

女:
「じょーだん。こっちだよ。ブラックでよかったよね」

男:
「おー」

 再び走り出した車はぐんぐん海に近づいていく。

女:
 開けたチューハイの缶がどんどん軽くなっていく。

男:
 他愛の無い会話。

女:
 当たり障りの無い会話。

男:
 もうすぐ海に着く。

女:
 もうすぐ海に着く。
 口寂しくて次を開けた。


男:
「好きだったんだ?その人のこと」

女:
「…うん。今も…、好きだよ」

男:
「どんな人?」

女:
「あー、聞かない方がいいよ」

男:
「なにそれ…。不倫とか?」

女:
「そういうんじゃないよ。でもね…」

男:
「ふーん…?ま、いいけどさ」

女:
「そうそう。いいんですよ、どうでも」

男:
「話したくないなら無理には聞かない。でも、話して楽になるなら、聞くからさ」

女:
「…やめてよ…。そういうの」

男:
「いや…、心配なんだよ」

女:
「ッ…。あっー、わかった。私のこと狙ってるんでしょ。失恋した女の子に優しくしたらコロッと行くもんね」

男:
「あぁ…、もう。損した」

女:
「…。花火も買ってくればよかったぁ…。お酒しか見てなかったや」

男:
「ばーか」

女:
「はいはい馬鹿だよー。お酒飲む?」

男:
「車だっての」

女:
「あーあ。なんで海なんだろ」

男:
「はぁ?もう帰るぞ」

女:
「ごめんごめん。そうじゃなくって…」
 車使う場所じゃ無かったらさ。お酒が二人で飲めたらさ。勢いで抱き締めたりしてくれたかも、知れないじゃん。
 でもいいの。今だけは私の独り占め。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

処理中です...