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君と夕焼け(男1:女1)ラブストーリー?

君と夕焼け

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紗綾(さあや):
「ここがゆーまが通ってた小学校か」

佑馬(ゆうま):
「うん。懐かしいな。久しぶりに来た」

紗綾:
「そりゃあ小学校はねぇ…」

佑馬:
「こんなに門小さかったっけ…、もっとでかいと思ってた」

佑馬:
 紗綾を親に紹介するために、久しぶりに帰郷して、その帰りに紗綾が「ゆーまが育った町を見てみたい」と言った。名物なんてなにもないよと断ったけど、紗綾が譲らなかったから、適当にぶらぶらと町を案内することにした。

「で、こっちに駄菓子屋が…、あ…。」

紗綾:
「ん?あー…」

 佑馬が案内してくれた先には、小綺麗なマンションが立ち、手前の花壇には入居者募集の旗がそよ風になびいている。

「…よく行ってたの?」

佑馬:
「え?」

紗綾:
「駄菓子屋」

佑馬:
「ああ…、まぁね」

紗綾:
「聞かせてよ。思い出」

佑馬:
「そんなたいした話じゃないよ」

紗綾:
「ゆーま」

佑馬:
「ん?」

紗綾:
「たいした話が聞きたいんじゃないよ」

佑馬:
「…そっか。…そうだね。ええっと…」

 そうだなぁ…。ガードレールにもたれかかり、思い出す。駄菓子屋の間取り、どこに何がおいてあったのか、ほら、店を入って右に曲がるとすぐに石の形をしたチョコが置いてある。小さい頃は好きだった。
 いつからだろう、あの鮮やかな色付きのチョコに抵抗を示すようになったのは。あたりくじのついたアイス、ヨーヨー、ガム、ああ、飛行機のおもちゃもあったなぁ。輪ゴムでピュンッて飛ばすやつ。
 小学校の授業中にさ、友達と一緒に先生に向かって飛ばして、スッゲー怒られた。親まで呼ばれてさ。家帰ってからも母さんにもスゲー怒られた。で、最後に父さんが言ったんだよ。「ちゃんと先生に飛行機当てれたのか?」って、それ聞いた母さんがまた怒っちゃってさ、二人で家追い出されて、河川敷(かせんじき)をとぼとぼ歩いたんだよ、二人で。
 なんであんなこと言ったんだよって恨み言言ったら、「俺も小さい頃似たようなことしてさ、そしたら父さんに、お前のじいちゃんに言われたんだよ。ちゃんと当てたのか?って」。なんか、あの時はよくわかんなかったけど、今なら、あぁ、俺この人の息子なんだなって思うよ。

紗綾:
「ゆーまちっちゃい頃から変わんないじゃん」

佑馬:
「えー?そんなことないだろ」

紗綾:
「この前紙飛行機投げてきたじゃん」

佑馬:
「あー…、したな。うん。した。」

紗綾:
「ふふ。他は?」

佑馬:
「ほか?」

紗綾:
「ほかの思い出。中学校とか、部活とか?ねぇ、中学校行こうよ。近くでしょ?」

佑馬:
「あー…、こっち。……車使う?」

紗綾:
「んーん。歩こう?」

佑馬:
「…ん」

紗綾:
 佑馬の左手を握る。握り返してくれる。二人でとことこと歩く。

佑馬:
「ここの花屋潰れてる。携帯ショップだって。あれ?この店残ってるんだ。ちっちゃい頃から潰れそうだなって思ってたのに」

紗綾:
「あれなんのお店?」

佑馬:
「わかんないんだよねー」

紗綾:
「ふーん?地域に根付いてるってやつ?あるよね。なんで潰れないのかわかんないお店」

佑馬:
「本屋とか、おもちゃ屋とか、そう言うのはどんどん失くなっていくのにな…」

紗綾:
「寂しい?」

佑馬:
「うん。寂しいよ。俺さ、小学校のころ、俺が小学校に行ってる間、大人達ってなにしてんだろうって思ってたの」

紗綾:
「ん?」

佑馬:
「見えてる世界なんてちっぽけだったし、想像力なかったから、見えてる世界しかわからなかったんだよ」

紗綾:
「なんかカッコいいこと言ってるー」

佑馬:
「小学校行ってる間、小学校の外の時間は止まってるんだと思ってた。だから、俺が大学生になってさ、一人暮らしはじめた時から、この街が変わってることに違和感って言うか…」

紗綾:
「あー。わかるかも…。あっ…」

佑馬:
「中学校。ここ」
 
紗綾:
 角を曲がると、急に視界が開け校舎が見えた。おっきいなぁ。私の中学校の3倍はありそうだ。

佑馬:
「こんなに近かったっけ…。もっと遠くだと思ってた。毎日20分ぐらいかけて歩いてたんだよ。家から」

紗綾:
「そっか…」

佑馬:
「あっ、ちょっと行きたいところ出来たんだけど」

紗綾:
「うん。行こう」

佑馬:
「車取ってくる」

紗綾:
「一緒に行くよ」

佑馬:
「…ん」

 実家に戻り、車に乗り込む。いつもは流すカーステレオも、今日はやめて、周りの景色を眺めていた。

「俺さ、免許取ったとき、羽が生えたと思ったんだよ。冗談抜きで」

紗綾:
「お?今日は詩人だねぇ」

佑馬:
「茶化すなよ。でもほんとに。アクセル入れたらどこまでも行けるって思ってた。この道が続く限りどこまでも。もっと遠くに行けるって思ってた」

紗綾:
「うん」

佑馬:
「でもまだここにいる。なんか、小さい頃思ってたより町も世界も狭くってさ、すぐ行き止まりだよ」

紗綾:
「地に足がついたってことだよ。多分」

佑馬:
「そうなのかな…。そうだといい」

紗綾:
 10分ほど車で進み、たどり着いたのは海のみえる公園だった。公園といっても、遊具もなにもない、ただの広場。
 きっと、春にお弁当でも持ってきたら気持ちいいだろう。夕暮れが綺麗で、でも、きっと町の人は見慣れてるのね。誰も公園にはいない。誰もこの公園に足を止めたりはしない。

佑馬:
「ここ、俺の別荘」

紗綾:
「なぁにそれ」

佑馬:
「家出した時いつもここに逃げてた」

紗綾:
「あー。なるほど」

佑馬:
「しまいには親にもばれてて、いなくなったらすぐここに来てた」

紗綾:
「でもここにいたんでしょ?」

佑馬:
「うん」

紗綾:
「綺麗だね。夕焼け」

佑馬:
「…うん」

紗綾:
 夕焼けを二人で眺める。沈みかけの太陽、夜の紫と、夕焼けの橙が混じって、重なる雲が綺麗に色づいている。
 佑馬の方を見る。佑馬は視線に気づいていたけど、そのまま夕焼けをみていた。

「ゆーま。おセンチ?」

佑馬:
「…うん」

紗綾:
「仕方ないなぁ。慰めてあげるよ。おいで」

 彼の手を引くと、驚くほど抵抗もなく、私の腕の中に収まる。優しく抱き締めながら、背中をとんとんと叩いてやる。

「多分わたし、今日のこと一生忘れないや」

佑馬:
「…そっか」

紗綾:
「ゆーま」

佑馬:
「…ん?」

紗綾:
「次は私の育った町に行こうね」

佑馬:
「うん」

紗綾:
「…それで、その時は私を慰めてね」

佑馬:
「…。うん」
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