7 / 27
君と夕焼け(男1 女1)ラブストーリー?
君と夕焼け
しおりを挟む
紗綾(さあや):
「ここがゆーまが通ってた小学校か」
佑馬(ゆうま):
「うん。懐かしいな。久しぶりに来た」
紗綾:
「そりゃあ小学校はねぇ…」
佑馬:
「こんなに門小さかったっけ…、もっとでかいと思ってた」
佑馬:
紗綾を親に紹介するために、久しぶりに帰郷して、その帰りに紗綾が「ゆーまが育った町を見てみたい」と言った。名物なんてなにもないよと断ったけど、紗綾が譲らなかったから、適当にぶらぶらと町を案内することにした。
「で、こっちに駄菓子屋が…、あ…。」
紗綾:
「ん?あー…」
佑馬が案内してくれた先には、小綺麗なマンションが立ち、手前の花壇には入居者募集の旗がそよ風になびいている。
「…よく行ってたの?」
佑馬:
「え?」
紗綾:
「駄菓子屋」
佑馬:
「ああ…、まぁね」
紗綾:
「聞かせてよ。思い出」
佑馬:
「そんなたいした話じゃないよ」
紗綾:
「ゆーま」
佑馬:
「ん?」
紗綾:
「たいした話が聞きたいんじゃないよ」
佑馬:
「…そっか。…そうだね。ええっと…」
そうだなぁ…。ガードレールにもたれかかり、思い出す。駄菓子屋の間取り、どこに何がおいてあったのか、ほら、店を入って右に曲がるとすぐに石の形をしたチョコが置いてある。小さい頃は好きだった。
いつからだろう、あの鮮やかな色付きのチョコに抵抗を示すようになったのは。あたりくじのついたアイス、ヨーヨー、ガム、ああ、飛行機のおもちゃもあったなぁ。輪ゴムでピュンッて飛ばすやつ。
小学校の授業中にさ、友達と一緒に先生に向かって飛ばして、スッゲー怒られた。親まで呼ばれてさ。家帰ってからも母さんにもスゲー怒られた。で、最後に父さんが言ったんだよ。「ちゃんと先生に飛行機当てれたのか?」って、それ聞いた母さんがまた怒っちゃってさ、二人で家追い出されて、河川敷(かせんじき)をとぼとぼ歩いたんだよ、二人で。
なんであんなこと言ったんだよって恨み言言ったら、「俺も小さい頃似たようなことしてさ、そしたら父さんに、お前のじいちゃんに言われたんだよ。ちゃんと当てたのか?って」。なんか、あの時はよくわかんなかったけど、今なら、あぁ、俺この人の息子なんだなって思うよ。
紗綾:
「ゆーまちっちゃい頃から変わんないじゃん」
佑馬:
「えー?そんなことないだろ」
紗綾:
「この前紙飛行機投げてきたじゃん」
佑馬:
「あー…、したな。うん。した。」
紗綾:
「ふふ。他は?」
佑馬:
「ほか?」
紗綾:
「ほかの思い出。中学校とか、部活とか?ねぇ、中学校行こうよ。近くでしょ?」
佑馬:
「あー…、こっち。……車使う?」
紗綾:
「んーん。歩こう?」
佑馬:
「…ん」
紗綾:
佑馬の左手を握る。握り返してくれる。二人でとことこと歩く。
佑馬:
「ここの花屋潰れてる。携帯ショップだって。あれ?この店残ってるんだ。ちっちゃい頃から潰れそうだなって思ってたのに」
紗綾:
「あれなんのお店?」
佑馬:
「わかんないんだよねー」
紗綾:
「ふーん?地域に根付いてるってやつ?あるよね。なんで潰れないのかわかんないお店」
佑馬:
「本屋とか、おもちゃ屋とか、そう言うのはどんどん失くなっていくのにな…」
紗綾:
「寂しい?」
佑馬:
「うん。寂しいよ。俺さ、小学校のころ、俺が小学校に行ってる間、大人達ってなにしてんだろうって思ってたの」
紗綾:
「ん?」
佑馬:
「見えてる世界なんてちっぽけだったし、想像力なかったから、見えてる世界しかわからなかったんだよ」
紗綾:
「なんかカッコいいこと言ってるー」
佑馬:
「小学校行ってる間、小学校の外の時間は止まってるんだと思ってた。だから、俺が大学生になってさ、一人暮らしはじめた時から、この街が変わってることに違和感って言うか…」
紗綾:
「あー。わかるかも…。あっ…」
佑馬:
「中学校。ここ」
紗綾:
角を曲がると、急に視界が開け校舎が見えた。おっきいなぁ。私の中学校の3倍はありそうだ。
佑馬:
「こんなに近かったっけ…。もっと遠くだと思ってた。毎日20分ぐらいかけて歩いてたんだよ。家から」
紗綾:
「そっか…」
佑馬:
「あっ、ちょっと行きたいところ出来たんだけど」
紗綾:
「うん。行こう」
佑馬:
「車取ってくる」
紗綾:
「一緒に行くよ」
佑馬:
「…ん」
実家に戻り、車に乗り込む。いつもは流すカーステレオも、今日はやめて、周りの景色を眺めていた。
「俺さ、免許取ったとき、羽が生えたと思ったんだよ。冗談抜きで」
紗綾:
「お?今日は詩人だねぇ」
佑馬:
「茶化すなよ。でもほんとに。アクセル入れたらどこまでも行けるって思ってた。この道が続く限りどこまでも。もっと遠くに行けるって思ってた」
紗綾:
「うん」
佑馬:
「でもまだここにいる。なんか、小さい頃思ってたより町も世界も狭くってさ、すぐ行き止まりだよ」
紗綾:
「地に足がついたってことだよ。多分」
佑馬:
「そうなのかな…。そうだといい」
紗綾:
10分ほど車で進み、たどり着いたのは海のみえる公園だった。公園といっても、遊具もなにもない、ただの広場。
きっと、春にお弁当でも持ってきたら気持ちいいだろう。夕暮れが綺麗で、でも、きっと町の人は見慣れてるのね。誰も公園にはいない。誰もこの公園に足を止めたりはしない。
佑馬:
「ここ、俺の別荘」
紗綾:
「なぁにそれ」
佑馬:
「家出した時いつもここに逃げてた」
紗綾:
「あー。なるほど」
佑馬:
「しまいには親にもばれてて、いなくなったらすぐここに来てた」
紗綾:
「でもここにいたんでしょ?」
佑馬:
「うん」
紗綾:
「綺麗だね。夕焼け」
佑馬:
「…うん」
紗綾:
夕焼けを二人で眺める。沈みかけの太陽、夜の紫と、夕焼けの橙が混じって、重なる雲が綺麗に色づいている。
佑馬の方を見る。佑馬は視線に気づいていたけど、そのまま夕焼けをみていた。
「ゆーま。おセンチ?」
佑馬:
「…うん」
紗綾:
「仕方ないなぁ。慰めてあげるよ。おいで」
彼の手を引くと、驚くほど抵抗もなく、私の腕の中に収まる。優しく抱き締めながら、背中をとんとんと叩いてやる。
「多分わたし、今日のこと一生忘れないや」
佑馬:
「…そっか」
紗綾:
「ゆーま」
佑馬:
「…ん?」
紗綾:
「次は私の育った町に行こうね」
佑馬:
「うん」
紗綾:
「…それで、その時は私を慰めてね」
佑馬:
「…。うん」
「ここがゆーまが通ってた小学校か」
佑馬(ゆうま):
「うん。懐かしいな。久しぶりに来た」
紗綾:
「そりゃあ小学校はねぇ…」
佑馬:
「こんなに門小さかったっけ…、もっとでかいと思ってた」
佑馬:
紗綾を親に紹介するために、久しぶりに帰郷して、その帰りに紗綾が「ゆーまが育った町を見てみたい」と言った。名物なんてなにもないよと断ったけど、紗綾が譲らなかったから、適当にぶらぶらと町を案内することにした。
「で、こっちに駄菓子屋が…、あ…。」
紗綾:
「ん?あー…」
佑馬が案内してくれた先には、小綺麗なマンションが立ち、手前の花壇には入居者募集の旗がそよ風になびいている。
「…よく行ってたの?」
佑馬:
「え?」
紗綾:
「駄菓子屋」
佑馬:
「ああ…、まぁね」
紗綾:
「聞かせてよ。思い出」
佑馬:
「そんなたいした話じゃないよ」
紗綾:
「ゆーま」
佑馬:
「ん?」
紗綾:
「たいした話が聞きたいんじゃないよ」
佑馬:
「…そっか。…そうだね。ええっと…」
そうだなぁ…。ガードレールにもたれかかり、思い出す。駄菓子屋の間取り、どこに何がおいてあったのか、ほら、店を入って右に曲がるとすぐに石の形をしたチョコが置いてある。小さい頃は好きだった。
いつからだろう、あの鮮やかな色付きのチョコに抵抗を示すようになったのは。あたりくじのついたアイス、ヨーヨー、ガム、ああ、飛行機のおもちゃもあったなぁ。輪ゴムでピュンッて飛ばすやつ。
小学校の授業中にさ、友達と一緒に先生に向かって飛ばして、スッゲー怒られた。親まで呼ばれてさ。家帰ってからも母さんにもスゲー怒られた。で、最後に父さんが言ったんだよ。「ちゃんと先生に飛行機当てれたのか?」って、それ聞いた母さんがまた怒っちゃってさ、二人で家追い出されて、河川敷(かせんじき)をとぼとぼ歩いたんだよ、二人で。
なんであんなこと言ったんだよって恨み言言ったら、「俺も小さい頃似たようなことしてさ、そしたら父さんに、お前のじいちゃんに言われたんだよ。ちゃんと当てたのか?って」。なんか、あの時はよくわかんなかったけど、今なら、あぁ、俺この人の息子なんだなって思うよ。
紗綾:
「ゆーまちっちゃい頃から変わんないじゃん」
佑馬:
「えー?そんなことないだろ」
紗綾:
「この前紙飛行機投げてきたじゃん」
佑馬:
「あー…、したな。うん。した。」
紗綾:
「ふふ。他は?」
佑馬:
「ほか?」
紗綾:
「ほかの思い出。中学校とか、部活とか?ねぇ、中学校行こうよ。近くでしょ?」
佑馬:
「あー…、こっち。……車使う?」
紗綾:
「んーん。歩こう?」
佑馬:
「…ん」
紗綾:
佑馬の左手を握る。握り返してくれる。二人でとことこと歩く。
佑馬:
「ここの花屋潰れてる。携帯ショップだって。あれ?この店残ってるんだ。ちっちゃい頃から潰れそうだなって思ってたのに」
紗綾:
「あれなんのお店?」
佑馬:
「わかんないんだよねー」
紗綾:
「ふーん?地域に根付いてるってやつ?あるよね。なんで潰れないのかわかんないお店」
佑馬:
「本屋とか、おもちゃ屋とか、そう言うのはどんどん失くなっていくのにな…」
紗綾:
「寂しい?」
佑馬:
「うん。寂しいよ。俺さ、小学校のころ、俺が小学校に行ってる間、大人達ってなにしてんだろうって思ってたの」
紗綾:
「ん?」
佑馬:
「見えてる世界なんてちっぽけだったし、想像力なかったから、見えてる世界しかわからなかったんだよ」
紗綾:
「なんかカッコいいこと言ってるー」
佑馬:
「小学校行ってる間、小学校の外の時間は止まってるんだと思ってた。だから、俺が大学生になってさ、一人暮らしはじめた時から、この街が変わってることに違和感って言うか…」
紗綾:
「あー。わかるかも…。あっ…」
佑馬:
「中学校。ここ」
紗綾:
角を曲がると、急に視界が開け校舎が見えた。おっきいなぁ。私の中学校の3倍はありそうだ。
佑馬:
「こんなに近かったっけ…。もっと遠くだと思ってた。毎日20分ぐらいかけて歩いてたんだよ。家から」
紗綾:
「そっか…」
佑馬:
「あっ、ちょっと行きたいところ出来たんだけど」
紗綾:
「うん。行こう」
佑馬:
「車取ってくる」
紗綾:
「一緒に行くよ」
佑馬:
「…ん」
実家に戻り、車に乗り込む。いつもは流すカーステレオも、今日はやめて、周りの景色を眺めていた。
「俺さ、免許取ったとき、羽が生えたと思ったんだよ。冗談抜きで」
紗綾:
「お?今日は詩人だねぇ」
佑馬:
「茶化すなよ。でもほんとに。アクセル入れたらどこまでも行けるって思ってた。この道が続く限りどこまでも。もっと遠くに行けるって思ってた」
紗綾:
「うん」
佑馬:
「でもまだここにいる。なんか、小さい頃思ってたより町も世界も狭くってさ、すぐ行き止まりだよ」
紗綾:
「地に足がついたってことだよ。多分」
佑馬:
「そうなのかな…。そうだといい」
紗綾:
10分ほど車で進み、たどり着いたのは海のみえる公園だった。公園といっても、遊具もなにもない、ただの広場。
きっと、春にお弁当でも持ってきたら気持ちいいだろう。夕暮れが綺麗で、でも、きっと町の人は見慣れてるのね。誰も公園にはいない。誰もこの公園に足を止めたりはしない。
佑馬:
「ここ、俺の別荘」
紗綾:
「なぁにそれ」
佑馬:
「家出した時いつもここに逃げてた」
紗綾:
「あー。なるほど」
佑馬:
「しまいには親にもばれてて、いなくなったらすぐここに来てた」
紗綾:
「でもここにいたんでしょ?」
佑馬:
「うん」
紗綾:
「綺麗だね。夕焼け」
佑馬:
「…うん」
紗綾:
夕焼けを二人で眺める。沈みかけの太陽、夜の紫と、夕焼けの橙が混じって、重なる雲が綺麗に色づいている。
佑馬の方を見る。佑馬は視線に気づいていたけど、そのまま夕焼けをみていた。
「ゆーま。おセンチ?」
佑馬:
「…うん」
紗綾:
「仕方ないなぁ。慰めてあげるよ。おいで」
彼の手を引くと、驚くほど抵抗もなく、私の腕の中に収まる。優しく抱き締めながら、背中をとんとんと叩いてやる。
「多分わたし、今日のこと一生忘れないや」
佑馬:
「…そっか」
紗綾:
「ゆーま」
佑馬:
「…ん?」
紗綾:
「次は私の育った町に行こうね」
佑馬:
「うん」
紗綾:
「…それで、その時は私を慰めてね」
佑馬:
「…。うん」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる