マントラアクターズ

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間話そのに 狭山ゆり

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【黒魔道士スタームの単独討伐を確認。レベルが225に上がりました。新称号、黒魔道士獲得。新スキル、黒衣魔装獲得。新称号、魔道波動獲得。派生により、ユニークスキル、サモンズコード獲得。新称号、ゅせタビビト、、獲得。称号を設定しますか? 】

「スターム討伐完了!!よーし、ようやくゴールドクラスソロ討伐出来ましたわ!皆お疲れ様!!」

時間は深夜1時。
会社から帰って、ご飯を食べた後マントラにログインしてから早くも5時間が経った。
魔法城スタームを攻略しに来て2日、ようやくボスである黒魔道士スタームを倒すことが出来た。周りの友達からはやり過ぎだと言われるが、“あの人”に追い付くにはまだまだだ。

「取り敢えず明日も会議あるし、ログアウト……ん?なんでしょうこのドロップアイテム。」

ドロップアイテムをアイテムボックスに入れていると、くすんだ銀色の鍵が目に止まる。

「もしかして追加報酬ありでしょうか。ということはこの部屋のどこかに宝箱が!」

それからしばらくして、この部屋にある鍵穴は入口の扉のみだということが分かった。
早くログアウトして眠らなければいけないのであるが、追加報酬を目の前にしてはそれを確認せずにはいられなかった。

「ほかの目は誤魔化せてもこのメギドの目は誤魔化せないのですよ!!」

ノリノリで扉に鍵を差し込み、出てきた宝箱を開ける。すると、周りの景色が、草木生い茂る草原に変わる。

「え!?あー!しまった、トラップ系のですか!【サモン】」

叫び声でバッドステータスを与えるバンシーと、真空刃を操るカマイタチを呼び出す。
向こうから何匹か魔物が走ってくるが、あのクラスであれば大丈夫そうだ。

「シーちゃん!マイちゃん!殺ってしまいなさい!」

メギド手持ちの二匹はシルバークラスの魔物達だ。2匹とも攻撃方法が見えないため、有利に戦えるのではと必死の思いで戦い、仲間にした。
取り敢えず群がり始めていた魔物を倒し、ログアウトできそうな場所を探す。

「こういう転移系のトラップってどうやって出れば良かったでしょうか。明日深山さんに聞きましょう。あ!あの岩場とかログアウト出来そうですわ!」

見渡した時に見つけた岩場の割れ目に入り、ログアウトする。
すると、自分のみなれた部屋が見えてくる。

「はあ。トラップにかかって終わりか~。スッキリしないな~。まぁいいや!取り敢えず寝る準備しないと!」

狭山  ゆり(23)は箱入り娘であった。
小学校を卒業後、中高一貫の名門女子校へ進学。大学も都内にある有名な女子大であり、合コンなど2回ほどしか参加したことが無い、男のおの字も無い人生を送ってきた。
そんな彼女はマントラに出会ってしまった。
現実世界では表現出来ない自分が表せる場所。そして、現実社会とは全く違う人間になれる場所。そしてその全く違う人間同士で共感できる人がいる場所。

「セバス様今日は確かダーツビーにいるんだったかな。会いたかったな…。いや!まぁ深山部長には明日も現実でどうせ会うんですけどね!」

自分で自分に突っ込みを入れる狭山。

セバスこと、深山波瑠との出会いは会社に入社する前であった。


……………………

新卒採用試験の日。狭山は会社の目前で渡されていた社内パスが見つからず、涙目でパニックになっていた。

「そんな!どこ!?え!?朝確かに入れたはずなのに!!え!?どこにあるの!?」

すると、男なのか女なのか、顔では判断がつかない人が声をかけてくれた。
その声はすっと耳に入り狭山を落ち着かせた。

「あの、何があったか分かりませんが大丈夫ではなさそう、ですね。僕になにかお手伝い出来ますか?」
「え!?あ、いえ、社内パスが!朝入れたはずなのに!今日面接なのにぃ……」

涙がもう少しで零れそうになる所で、目の前にハンカチが出された。

「大丈夫。取り敢えず落ち着いて。書類をカバンから出して1枚1枚捲って見ましょう。」
「は、はい。」

その人の声を聞いていると、物凄く落ち着いた。
言われた通りにカバンに入っている書類を一度全部だして、捲っていく。

「……あ!!あったー!!!ありました!!良かった~!!!」
「ホホホ、じゃない。それはよかった。今日は面接?」
「あ、はい!こちらの会社に面接を受けに来ました!」
「そうか。……もしかして狭山さん、かな?」
「え?あ、はいそうです!どこかでお会いしたことありましたか?」
「うーん。それは後でのお楽しみということで。面接頑張ってね。」
「はい!!ありがとうございます!!」

なぜこの人が自分の名前を知っているのだろうと少し不思議になりながらも、会社に入っていく。

「あ~……緊張して心臓が口から出そう。それにハンカチ。返し忘れちゃった。どうしよう~。さっきの人この会社で働いてるのかな…。」
「次の方、えっと狭山ゆりさんですね。こちらへどうぞ。」
「は、はい!!取り敢えずポケットに入れとこう。」

面接の部屋前に案内され、荷物を置いて扉の前に立つ。

「(大丈夫よゆり。あれだけ練習してきたじゃない。)失礼します!」
「はいどうぞ。」

何故か妙に落ち着く、聞き覚えのある声が聞こえたが、今は緊張でそれどころではない狭山であった。

「本日面接を受けに来ました。狭山ゆりです。よろしくお願いします!」
「はい。よろしくお願いしますね。どうぞお座り下さい。」

椅子に座り、3人の面接官の顔を落ち着いてよく見ると、目の前にいたのはさっき助けてくれた男性であった。

「あっ、先程はありがとうございました!!」
「フフっ。大丈夫だよ。」
「あら、深山くん知り合いかい?」
「さっき少しだけ会って話したんです。」
「ほほー?あの深山くんが女性と?ふーん?それは実に面白そうだね。」
「深山部長、賀川課長。面接、始めますよ?」
「はいはい、ごめんね。気になっちゃって。」
「すみません中島さん。では面接を始めましょう。狭山さん、大丈夫だから落ち着いてね。」
「は、はいっ!!!」

…………………………

「いや、あの時はまさか狭山さんが僕の部署に配属されるとは思ってなかったよ。」
「私もです!入社出来たのも深山部長のおかげですし!」
「いやいや、僕は何もしてないよ。狭山さんの努力だよ。」
「うーん、じゃあそういうことにしときます!」
「ははっ、元気なのは良い事です。」
「あ、そう言えば深山部長、休憩時間いつも何してるんですか?今日の昼休憩ご一緒しません?」
「あー、ごめん。僕マントラってゲームに入り込んでてね。これがなかなか面白いんだ。」
「え!マントラですか!私もやってます!」
「本当に!?あ、ごめんいきなり大きな声で。」
「私もおっきい声でちゃいました。キャラクター名とか聞けたりします?」
「セバス・チャン爺ちゃんって名前でプレイしてるよ。」
「…………ウソ。え、え!!え!!??あの、あの!」

あまりの出来事に半ばパニック。
一応オフィスではあるが、ゆりにとってセバスという名前は特別だった。

「一応最近大規模戦闘で頑張ったから有名にはなったのかな。」
「よく知ってます、よく知ってますとも!!」
「すごい食いつきだね。そんなに有名かな。」
「だって、あの!私!!メギドです!!」

マントラの大規模戦闘、レイドにおいて、メギドとセバスは既に面識があった。
いや、面識があったというよりお互いに見つけてしまったという感じだろう。
最近は一緒にクエストをこなす仲になっていた。

「………え、本当に?」
「本当ですわセバス様。まさかこんなに近くにいたなんて。運命ですわね!!」
「おお、その喋りはまさにメギド。」
「ウフフ!!」
「ほえー。いや、こんな事ってあるもんなんだね。」
「本当にビックリです!」

それから狭山ゆりは優秀さに磨きがかかった。
もともと出来る方ではあったが、深山に、セバスに見られていると思うといろいろな事に力が入った。
あまり興味のなかった化粧や服にも気を使うようになり、スタイルも気にし始めた。
毎日家に帰ると、マントラにログインするようになった。
セバスと行動を共にすることも増え、その繋がりで仲間もできて、闘技大会が開かれる頃には上位プレイヤーと呼ばれるまでになった。


その日もいつも通り朝起きて会社に向かった。
深山が出社してきてからは昨日攻略したダンジョンの事を話し、いつもと同じように仕事をこなしていた。

昼休憩後の会議中。それは降ってきた。

「え?何あれ?」

太陽のように昼でも分かる光を放ちながら、黒い尾を引き降る隕石。
現実味が無さすぎて隕石だと理解するのに時間がかかった。

「ふせろお!!!」

いつもは滅多に声を張り上げない深山が声を上げる。
その声にセバスが目の前にいるように感じ、壁際に伏せる。
セバスが居るならなんとでもなる。何故か心を満たす安心感。
ふと、深山と目が合うと、狭山の中で何かが動いた。

「深山さんのこと、実は好きだったんです。」

ぽつりと口を割って出た言葉は、周りの悲鳴に消されたかと思っていたが、深山は手を握り、ハッキリとした声で応えた。

「ああ、僕もきっと好きだったよ。」


次の瞬間。爆音と轟音で埋め尽くされる意識の中。絶対に離すまいと握りしめた深山の手の感触を感じていた。

そこで狭山 ゆりの意識は途切れた。
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