18 / 20
間話そのに 狭山ゆり
しおりを挟む【黒魔道士スタームの単独討伐を確認。レベルが225に上がりました。新称号、黒魔道士獲得。新スキル、黒衣魔装獲得。新称号、魔道波動獲得。派生により、ユニークスキル、サモンズコード獲得。新称号、ゅせタビビト、、獲得。称号を設定しますか? 】
「スターム討伐完了!!よーし、ようやくゴールドクラスソロ討伐出来ましたわ!皆お疲れ様!!」
時間は深夜1時。
会社から帰って、ご飯を食べた後マントラにログインしてから早くも5時間が経った。
魔法城スタームを攻略しに来て2日、ようやくボスである黒魔道士スタームを倒すことが出来た。周りの友達からはやり過ぎだと言われるが、“あの人”に追い付くにはまだまだだ。
「取り敢えず明日も会議あるし、ログアウト……ん?なんでしょうこのドロップアイテム。」
ドロップアイテムをアイテムボックスに入れていると、くすんだ銀色の鍵が目に止まる。
「もしかして追加報酬ありでしょうか。ということはこの部屋のどこかに宝箱が!」
それからしばらくして、この部屋にある鍵穴は入口の扉のみだということが分かった。
早くログアウトして眠らなければいけないのであるが、追加報酬を目の前にしてはそれを確認せずにはいられなかった。
「ほかの目は誤魔化せてもこのメギドの目は誤魔化せないのですよ!!」
ノリノリで扉に鍵を差し込み、出てきた宝箱を開ける。すると、周りの景色が、草木生い茂る草原に変わる。
「え!?あー!しまった、トラップ系のですか!【サモン】」
叫び声でバッドステータスを与えるバンシーと、真空刃を操るカマイタチを呼び出す。
向こうから何匹か魔物が走ってくるが、あのクラスであれば大丈夫そうだ。
「シーちゃん!マイちゃん!殺ってしまいなさい!」
メギド手持ちの二匹はシルバークラスの魔物達だ。2匹とも攻撃方法が見えないため、有利に戦えるのではと必死の思いで戦い、仲間にした。
取り敢えず群がり始めていた魔物を倒し、ログアウトできそうな場所を探す。
「こういう転移系のトラップってどうやって出れば良かったでしょうか。明日深山さんに聞きましょう。あ!あの岩場とかログアウト出来そうですわ!」
見渡した時に見つけた岩場の割れ目に入り、ログアウトする。
すると、自分のみなれた部屋が見えてくる。
「はあ。トラップにかかって終わりか~。スッキリしないな~。まぁいいや!取り敢えず寝る準備しないと!」
狭山 ゆり(23)は箱入り娘であった。
小学校を卒業後、中高一貫の名門女子校へ進学。大学も都内にある有名な女子大であり、合コンなど2回ほどしか参加したことが無い、男のおの字も無い人生を送ってきた。
そんな彼女はマントラに出会ってしまった。
現実世界では表現出来ない自分が表せる場所。そして、現実社会とは全く違う人間になれる場所。そしてその全く違う人間同士で共感できる人がいる場所。
「セバス様今日は確かダーツビーにいるんだったかな。会いたかったな…。いや!まぁ深山部長には明日も現実でどうせ会うんですけどね!」
自分で自分に突っ込みを入れる狭山。
セバスこと、深山波瑠との出会いは会社に入社する前であった。
……………………
新卒採用試験の日。狭山は会社の目前で渡されていた社内パスが見つからず、涙目でパニックになっていた。
「そんな!どこ!?え!?朝確かに入れたはずなのに!!え!?どこにあるの!?」
すると、男なのか女なのか、顔では判断がつかない人が声をかけてくれた。
その声はすっと耳に入り狭山を落ち着かせた。
「あの、何があったか分かりませんが大丈夫ではなさそう、ですね。僕になにかお手伝い出来ますか?」
「え!?あ、いえ、社内パスが!朝入れたはずなのに!今日面接なのにぃ……」
涙がもう少しで零れそうになる所で、目の前にハンカチが出された。
「大丈夫。取り敢えず落ち着いて。書類をカバンから出して1枚1枚捲って見ましょう。」
「は、はい。」
その人の声を聞いていると、物凄く落ち着いた。
言われた通りにカバンに入っている書類を一度全部だして、捲っていく。
「……あ!!あったー!!!ありました!!良かった~!!!」
「ホホホ、じゃない。それはよかった。今日は面接?」
「あ、はい!こちらの会社に面接を受けに来ました!」
「そうか。……もしかして狭山さん、かな?」
「え?あ、はいそうです!どこかでお会いしたことありましたか?」
「うーん。それは後でのお楽しみということで。面接頑張ってね。」
「はい!!ありがとうございます!!」
なぜこの人が自分の名前を知っているのだろうと少し不思議になりながらも、会社に入っていく。
「あ~……緊張して心臓が口から出そう。それにハンカチ。返し忘れちゃった。どうしよう~。さっきの人この会社で働いてるのかな…。」
「次の方、えっと狭山ゆりさんですね。こちらへどうぞ。」
「は、はい!!取り敢えずポケットに入れとこう。」
面接の部屋前に案内され、荷物を置いて扉の前に立つ。
「(大丈夫よゆり。あれだけ練習してきたじゃない。)失礼します!」
「はいどうぞ。」
何故か妙に落ち着く、聞き覚えのある声が聞こえたが、今は緊張でそれどころではない狭山であった。
「本日面接を受けに来ました。狭山ゆりです。よろしくお願いします!」
「はい。よろしくお願いしますね。どうぞお座り下さい。」
椅子に座り、3人の面接官の顔を落ち着いてよく見ると、目の前にいたのはさっき助けてくれた男性であった。
「あっ、先程はありがとうございました!!」
「フフっ。大丈夫だよ。」
「あら、深山くん知り合いかい?」
「さっき少しだけ会って話したんです。」
「ほほー?あの深山くんが女性と?ふーん?それは実に面白そうだね。」
「深山部長、賀川課長。面接、始めますよ?」
「はいはい、ごめんね。気になっちゃって。」
「すみません中島さん。では面接を始めましょう。狭山さん、大丈夫だから落ち着いてね。」
「は、はいっ!!!」
…………………………
「いや、あの時はまさか狭山さんが僕の部署に配属されるとは思ってなかったよ。」
「私もです!入社出来たのも深山部長のおかげですし!」
「いやいや、僕は何もしてないよ。狭山さんの努力だよ。」
「うーん、じゃあそういうことにしときます!」
「ははっ、元気なのは良い事です。」
「あ、そう言えば深山部長、休憩時間いつも何してるんですか?今日の昼休憩ご一緒しません?」
「あー、ごめん。僕マントラってゲームに入り込んでてね。これがなかなか面白いんだ。」
「え!マントラですか!私もやってます!」
「本当に!?あ、ごめんいきなり大きな声で。」
「私もおっきい声でちゃいました。キャラクター名とか聞けたりします?」
「セバス・チャン爺ちゃんって名前でプレイしてるよ。」
「…………ウソ。え、え!!え!!??あの、あの!」
あまりの出来事に半ばパニック。
一応オフィスではあるが、ゆりにとってセバスという名前は特別だった。
「一応最近大規模戦闘で頑張ったから有名にはなったのかな。」
「よく知ってます、よく知ってますとも!!」
「すごい食いつきだね。そんなに有名かな。」
「だって、あの!私!!メギドです!!」
マントラの大規模戦闘、レイドにおいて、メギドとセバスは既に面識があった。
いや、面識があったというよりお互いに見つけてしまったという感じだろう。
最近は一緒にクエストをこなす仲になっていた。
「………え、本当に?」
「本当ですわセバス様。まさかこんなに近くにいたなんて。運命ですわね!!」
「おお、その喋りはまさにメギド。」
「ウフフ!!」
「ほえー。いや、こんな事ってあるもんなんだね。」
「本当にビックリです!」
それから狭山ゆりは優秀さに磨きがかかった。
もともと出来る方ではあったが、深山に、セバスに見られていると思うといろいろな事に力が入った。
あまり興味のなかった化粧や服にも気を使うようになり、スタイルも気にし始めた。
毎日家に帰ると、マントラにログインするようになった。
セバスと行動を共にすることも増え、その繋がりで仲間もできて、闘技大会が開かれる頃には上位プレイヤーと呼ばれるまでになった。
その日もいつも通り朝起きて会社に向かった。
深山が出社してきてからは昨日攻略したダンジョンの事を話し、いつもと同じように仕事をこなしていた。
昼休憩後の会議中。それは降ってきた。
「え?何あれ?」
太陽のように昼でも分かる光を放ちながら、黒い尾を引き降る隕石。
現実味が無さすぎて隕石だと理解するのに時間がかかった。
「ふせろお!!!」
いつもは滅多に声を張り上げない深山が声を上げる。
その声にセバスが目の前にいるように感じ、壁際に伏せる。
セバスが居るならなんとでもなる。何故か心を満たす安心感。
ふと、深山と目が合うと、狭山の中で何かが動いた。
「深山さんのこと、実は好きだったんです。」
ぽつりと口を割って出た言葉は、周りの悲鳴に消されたかと思っていたが、深山は手を握り、ハッキリとした声で応えた。
「ああ、僕もきっと好きだったよ。」
次の瞬間。爆音と轟音で埋め尽くされる意識の中。絶対に離すまいと握りしめた深山の手の感触を感じていた。
そこで狭山 ゆりの意識は途切れた。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
王様の恥かきっ娘
青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。
本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。
孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます
物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります
これもショートショートで書く予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる