ツルギの剣

Narrative Works

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第四十一話 誓い




 三人は、互いの手を繋ぎあい、輪を作って立っていた。

 そして、真剣な様子で瞑想をしていた。


「私達は、三人で一つ」


 不意に、剣が言った。

 それは誓いの言葉であった。

 野球を通して、超野球少女として団結し、戦って生きる決意を誓約する言葉。


「誰にも邪魔はさせない。

 誰が何を言っても、私達は野球を続ける。

 白球を投げ続ける限り、私達の絆は、誰にも壊せない」


 剣の言葉に、盾と弓は瞑想したまま頷く。


「私達は――戦って、そして勝つんだ。

 私達を邪魔する、全てに」


「誓いますわ」

 盾が、剣の宣誓に同意する。


「誓うよ」

 弓もまた、続けて同意。


この時から、三人の戦いは始まった。





 三人の中でも、剣の才能は飛び抜けていた。

 同世代のどの超野球少女さえ敵わない、圧倒的な才能に恵まれていた。


 盾は剣と共に投手として活躍し、弓は剣の強烈な魔球を受け止めることが出来る、たった一人の捕手として重宝された。


 中学に入学した頃には、三人は有名選手となって、多様な方面で活躍を褒め称えられた。

 このころには、三人を迫害する者など居なかった。

 野球で結果を残すことにより、三人で一つ、誰にも言われのない朋友、あるいは姉妹であると証明したのだ。


 だが――この頃には、既に剣と盾、そして弓の思いは少しずつズレ始めていた。


 盾は、三人でいることこそ大切なものだと考えた。

 今の名誉も平和も、全て結果を三人で出し続けたからのもの。

 結果が出なくなると元に戻ってしまう。

 かつて家名に支配され、被虐、否定されていた幼い頃のように。


 剣との深い友情を引き裂く者が現れる。

 それだけは、断じて許さない。
 阻止しなければならない。

 だから必ず、確実に。
 勝ち続けなければならない。

 そう思っていた。


 一方で剣は、既に野球狂であった。

 勝つことそのものが生きがいであった。

 他人を踏み倒し、薙ぎ払い、無残に青春を散らした少女を数多見てきても、全力の投球で勝利することの快感だけは変わらなかった。


 また、無数に蹴散らしてきた少女が居るからこそ、野球だけは勝ち続けたいと思った。

 自分の勝利は一人のものでないと。

 これまで踏み倒してきた者全ての為の勝利だと考えた。


 そして――弓は、野球を通して共に生きる姉妹に、強い愛情を抱いてしまった。

 無論、盾のことも姉妹として、双子の妹として溺愛していた。

 だが、それ以上の愛情。

 弓は己の孤独を埋めてくれる唯一の存在として、剣を愛してしまった。


 ひたむきに勝利を目指す剣の姿が、姉として、三人姉妹の先頭で迫害と戦って育った心に触れた。

 形こそ違えども、根っこの部分で理解されない戦いがある者同士。

 剣の姿勢は、真っ白な白刃のように鋭く輝き、弓の心の壁を裂いて内側に触れた。

 癒えることの無い悲しみを抱いてくれた。

 弓は、剣と共に生きることで幸福を感じることが出来た。


 気付けば、弓は剣へ恋人に向けるような愛情を抱いていた。

 剣の全てを好きになった。

 野球をする時も、そうでない時も。
 剣の存在全てを愛しいと感じていた。

 こうして――三人はそれぞれ、全く異なる思いを抱き、野球を続けた。
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