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第零章 転生編
第12話 ~共闘~
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皇帝ウィンザルフとアルバニア隊が、明日にでもスルトに到着するという報が入り、村は大忙しの様相を呈していた。
「全員気合入れろ! 陛下のご到着は予想よりも早い! 今日中に道の整備を完了させなければならない! かかれっ!」
――おおっ!
マイルズからスルトまで伸びる街道は、村の手前で神獣につぶされており、道といった道が無い。そこで村までの迂回路として、エドガーに案内されて使った、あの獣道を臨時の交通路として拡張整備する事が村と騎士団との間で決定した。
「騎士団の力を借りてすまんの、ボルツ殿、コーデリア殿」
村長のティムルは昨日の夜、ボルツから騎士団で道の整備をやってもいいかという提案を受けていた。村周辺の道の整備は村の役目である事を伝え、最初は固辞していた。
しかし、ボルツは『道理ですが、こちらの都合でもある』と言って引き下がらず。全団員を早朝から狩り出し、今に至る。
「気にしないで欲しい。そもそもパルテール殿が、村の中では魔法は使うなと言ってきたのだ。魔法無しの街道整備となると、村の皆だけで明日までなど到底不可能でしょう」
「そもそも神獣に関することは、国家の問題。それに我々は今、街から馬を走らせて、村で御馳走になっただけの状態です。これでは騎士団としてあまりに恥ずかしい。仕事を頂き感謝こそすれど、迷惑だなんてありえません。それに木を切り、土を平らに盛り固めるという作業は、よい訓練になると思います」
「コーデリア、それはそうだが…もうちょっとこう」
「はい?」
「なんでもない」
「ふぉっふぉっふぉ。コーデリア殿が次の団長になるのが楽しみじゃ」
パルテールの指令は、現場の者達にとって強烈なものだった。
”神獣の残滓”の効果は、その周辺の魔素も関係しているかも知れないという事で、大勢の人間がその場で魔法を使うと魔素濃度が減り、効果の行方がどうなるか分からない。
従って、アルバニア隊の到着までは魔法使用は極力控えてくれ、と言うものである。確かにこの効果は目の前の足跡と共に、神獣がここにやってきたという確かな証拠になる。
村として、騎士団としても、そう言われると賛同せざるを得ない。
「それにしても、村の警備はお三方だけで大丈夫でしょうか」
村の男手と騎士団総出で街道整備をしなければ、明日の皇帝の到着に間に合わない状況である。仕方のない事ではあるが、コーデリアは魔法が使えない状態で村周辺の警備に当たっているロン、エドガー、オプトの守り手3人を気にかけていた。
整備現場の指揮官も必要なので、ボルツとコーデリアも長く村の警備には当たれない状態だった。
「ふむ。まぁ魔法は使えずとも、あの3人なら何とかなるじゃろ。この周辺は大した魔物はおらんのでな。強くてもローグバイソン―――――」
こういう時に、こういう事が起こるのが世の常である。
村から少し離れたところで、エドガーの叫ぶ声がする。
「っ!団長」
「いくぞ」
◇ ◇ ◇ ◇
「ロン! ローグバイソンだ! 群れから離れていた2頭が北に突然走り出した! 人間の匂いを嗅ぎつけたんだろう! あと100m!」
「なんで強化が使えない時に限ってソイツなんだっ。もっと早く見つけやがれ! 生身のまま1人では止められん! オプト! 横から牽制して引き寄せろ!」
「仕方ねぇだろ、探知魔法使えねぇんだから! 早い方だっての!」
「俺が囮かよ!」
オプトが素早く2頭の頭に矢を放つ。堅い頭蓋に弾かれるも、攻撃された2頭は北への進路を変え、矢が飛んできた方向へ突進する。
とりあえず村からは引き離せそうだ。だがここからどうする。このまま遠くまでオプトを行かせるか……いや、ぐずぐずしていると群れの連中も人間の匂いに気づく可能性がある。早々にカタをつけるべきだろう!
「ちっ…ついてねぇな!」
ロンの舌打ちに呼応するかのように、後ろから声が上がった。
「ロン! 俺らを使え!」
ボルツとコーデリアが颯爽と駆けてくる。
団長と隊長の、さすがの危機察知力に舌を巻くロン。
「助かる!2人とも武器は!?」
「剣盾!」
「細剣です!」
「最高の組み合わせだっ!」
ロンの頭の中で、強化無しでローグバイソン2頭を早々に葬る手段が組まれる。
ボルツとコーデリアが駆けつけたことで、新たな人間の匂いを察知し、1頭がロンたちの方へ方向を変え突進して来た。
「ボルツ! 奴の突進を止める! お代は腕1本だ!」
「望むところっ!」
2人は盾を構え、ローグパイソンに突撃する。
―――ズガン!
「ぐっ!」
「ぐおっ!2人がかりでこれ程か!」
『ブルゴァァァ!』
10m程押し戻された位置で、突進の勢いが止まる。
「今だコーディ! 肩甲骨の中央! 深く!」
ロンとボルツの後ろで細剣を構え、目を閉じて集中していたコーデリアが、ロンの声で背後の木を蹴り舞い上がった。
「はっ!」
―――ドシュッ!
コーデリアは深く突いた細剣を手放し、それを足場に空中を一回転、ローグバイソンを飛び越える。低いうめき声を上げ、ローグバイソンは横たわる。
細剣士らしい、軽やかに急所を穿つ見事な一撃。
残り1頭。
「くそっ、マジに腕一本持っていきやがって…」
しかし、次は5人でやれる。
「やれるよな、ロン」
ロンはボルツに向けニヤリと答える。
「釣りは返してもらうさ」
エドガーとオプトに挑発され暴れまわっているもう1匹は、エドガーのナイフで体中が傷だらけだが、その動きに全く影響していない。
「素の短剣じゃ、俺にゃ無理だっての!」
と愚痴をいいながも、無傷で相手にダメージを与え続けているエドガーもさすがだ。オプトは相手が自分を見失わないよう、木を飛び移り続けながら弓を射続けている。
「つ、疲れる…」
なんだかんだ言いながら、2人は決定打が無いだけで、余裕で敵を引き付け続けている。
「2人共! ぶつかる瞬間に勢いを殺してくれ!」
身構えるロンの一声で、2人は敵の視界から消える。2人が下がったのと同時に背負っていた剣を投げつけ、こちらに向かって来るよう挑発した。
『ブルァァァ!』
ロンとボルツが盾を構え向かって来るローグバイソンに突進。
2人の突進に合わせ、エドガーが後ろ脚にダメージを、オプトが横腹に3本の矢を同時に突き刺す。すると突進の勢いは弱まり、1頭目の半分ほどの距離で受け止める事に成功する。
そこで待っていたのはコーデリア。
――シュンッ!
1頭目とは違い、細剣は刺突と同時に引き抜かれる。
コーデリアはここまで貫けば即死、というポイントを掴んでいた。素早く1頭目と同じポイントを正確に穿ち、断末魔を上げさせることなく、2頭目の討伐に成功する。
戦いは電光石火で終わった。
「全員気合入れろ! 陛下のご到着は予想よりも早い! 今日中に道の整備を完了させなければならない! かかれっ!」
――おおっ!
マイルズからスルトまで伸びる街道は、村の手前で神獣につぶされており、道といった道が無い。そこで村までの迂回路として、エドガーに案内されて使った、あの獣道を臨時の交通路として拡張整備する事が村と騎士団との間で決定した。
「騎士団の力を借りてすまんの、ボルツ殿、コーデリア殿」
村長のティムルは昨日の夜、ボルツから騎士団で道の整備をやってもいいかという提案を受けていた。村周辺の道の整備は村の役目である事を伝え、最初は固辞していた。
しかし、ボルツは『道理ですが、こちらの都合でもある』と言って引き下がらず。全団員を早朝から狩り出し、今に至る。
「気にしないで欲しい。そもそもパルテール殿が、村の中では魔法は使うなと言ってきたのだ。魔法無しの街道整備となると、村の皆だけで明日までなど到底不可能でしょう」
「そもそも神獣に関することは、国家の問題。それに我々は今、街から馬を走らせて、村で御馳走になっただけの状態です。これでは騎士団としてあまりに恥ずかしい。仕事を頂き感謝こそすれど、迷惑だなんてありえません。それに木を切り、土を平らに盛り固めるという作業は、よい訓練になると思います」
「コーデリア、それはそうだが…もうちょっとこう」
「はい?」
「なんでもない」
「ふぉっふぉっふぉ。コーデリア殿が次の団長になるのが楽しみじゃ」
パルテールの指令は、現場の者達にとって強烈なものだった。
”神獣の残滓”の効果は、その周辺の魔素も関係しているかも知れないという事で、大勢の人間がその場で魔法を使うと魔素濃度が減り、効果の行方がどうなるか分からない。
従って、アルバニア隊の到着までは魔法使用は極力控えてくれ、と言うものである。確かにこの効果は目の前の足跡と共に、神獣がここにやってきたという確かな証拠になる。
村として、騎士団としても、そう言われると賛同せざるを得ない。
「それにしても、村の警備はお三方だけで大丈夫でしょうか」
村の男手と騎士団総出で街道整備をしなければ、明日の皇帝の到着に間に合わない状況である。仕方のない事ではあるが、コーデリアは魔法が使えない状態で村周辺の警備に当たっているロン、エドガー、オプトの守り手3人を気にかけていた。
整備現場の指揮官も必要なので、ボルツとコーデリアも長く村の警備には当たれない状態だった。
「ふむ。まぁ魔法は使えずとも、あの3人なら何とかなるじゃろ。この周辺は大した魔物はおらんのでな。強くてもローグバイソン―――――」
こういう時に、こういう事が起こるのが世の常である。
村から少し離れたところで、エドガーの叫ぶ声がする。
「っ!団長」
「いくぞ」
◇ ◇ ◇ ◇
「ロン! ローグバイソンだ! 群れから離れていた2頭が北に突然走り出した! 人間の匂いを嗅ぎつけたんだろう! あと100m!」
「なんで強化が使えない時に限ってソイツなんだっ。もっと早く見つけやがれ! 生身のまま1人では止められん! オプト! 横から牽制して引き寄せろ!」
「仕方ねぇだろ、探知魔法使えねぇんだから! 早い方だっての!」
「俺が囮かよ!」
オプトが素早く2頭の頭に矢を放つ。堅い頭蓋に弾かれるも、攻撃された2頭は北への進路を変え、矢が飛んできた方向へ突進する。
とりあえず村からは引き離せそうだ。だがここからどうする。このまま遠くまでオプトを行かせるか……いや、ぐずぐずしていると群れの連中も人間の匂いに気づく可能性がある。早々にカタをつけるべきだろう!
「ちっ…ついてねぇな!」
ロンの舌打ちに呼応するかのように、後ろから声が上がった。
「ロン! 俺らを使え!」
ボルツとコーデリアが颯爽と駆けてくる。
団長と隊長の、さすがの危機察知力に舌を巻くロン。
「助かる!2人とも武器は!?」
「剣盾!」
「細剣です!」
「最高の組み合わせだっ!」
ロンの頭の中で、強化無しでローグバイソン2頭を早々に葬る手段が組まれる。
ボルツとコーデリアが駆けつけたことで、新たな人間の匂いを察知し、1頭がロンたちの方へ方向を変え突進して来た。
「ボルツ! 奴の突進を止める! お代は腕1本だ!」
「望むところっ!」
2人は盾を構え、ローグパイソンに突撃する。
―――ズガン!
「ぐっ!」
「ぐおっ!2人がかりでこれ程か!」
『ブルゴァァァ!』
10m程押し戻された位置で、突進の勢いが止まる。
「今だコーディ! 肩甲骨の中央! 深く!」
ロンとボルツの後ろで細剣を構え、目を閉じて集中していたコーデリアが、ロンの声で背後の木を蹴り舞い上がった。
「はっ!」
―――ドシュッ!
コーデリアは深く突いた細剣を手放し、それを足場に空中を一回転、ローグバイソンを飛び越える。低いうめき声を上げ、ローグバイソンは横たわる。
細剣士らしい、軽やかに急所を穿つ見事な一撃。
残り1頭。
「くそっ、マジに腕一本持っていきやがって…」
しかし、次は5人でやれる。
「やれるよな、ロン」
ロンはボルツに向けニヤリと答える。
「釣りは返してもらうさ」
エドガーとオプトに挑発され暴れまわっているもう1匹は、エドガーのナイフで体中が傷だらけだが、その動きに全く影響していない。
「素の短剣じゃ、俺にゃ無理だっての!」
と愚痴をいいながも、無傷で相手にダメージを与え続けているエドガーもさすがだ。オプトは相手が自分を見失わないよう、木を飛び移り続けながら弓を射続けている。
「つ、疲れる…」
なんだかんだ言いながら、2人は決定打が無いだけで、余裕で敵を引き付け続けている。
「2人共! ぶつかる瞬間に勢いを殺してくれ!」
身構えるロンの一声で、2人は敵の視界から消える。2人が下がったのと同時に背負っていた剣を投げつけ、こちらに向かって来るよう挑発した。
『ブルァァァ!』
ロンとボルツが盾を構え向かって来るローグバイソンに突進。
2人の突進に合わせ、エドガーが後ろ脚にダメージを、オプトが横腹に3本の矢を同時に突き刺す。すると突進の勢いは弱まり、1頭目の半分ほどの距離で受け止める事に成功する。
そこで待っていたのはコーデリア。
――シュンッ!
1頭目とは違い、細剣は刺突と同時に引き抜かれる。
コーデリアはここまで貫けば即死、というポイントを掴んでいた。素早く1頭目と同じポイントを正確に穿ち、断末魔を上げさせることなく、2頭目の討伐に成功する。
戦いは電光石火で終わった。
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