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第三章 帝国西部・刀編
第76話 大いなる誤算
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「皆聞きや。5つ目の檻の奴ら出てきたら最大警戒や。一匹一匹がみんなと同じくらいや思とかなあかん」
ルイのこの言葉に、第4の魔人と交戦していた獣人と竜人の部隊は特に頷いた。第3の魔人と交戦していた部隊と違って、第4の魔人は強軍だったからだ。怪我人が多く出たこの部隊は、既に7割がどこかしら負傷していた。
「それに後ろにのさばっとる人間。あれが気になってしゃーないわ。だんだん均衡してくる状況でアレほっといたら後からえらい目遭う。せやからアイレはん」
「?」
「風人のみんなで、あの二万に突っ込んで殺れるだけ殺ってくれへん? 二万対百や」
「いいよ。どう考えても今の相手よりマシでしょ」
「ふふっ、ほな頼みます。頃合い見て離れてもろてええからね。ほんでウギョウ」
「はっ」
「100人連れてアギョウと合流や。お主らで3番目の檻の奴ら全滅させい」
「「はっ!」」
「ガリュウはんはウチと引き続きよろしゅう。100人減ったけど堪忍や」
「誰に言ってやがる! 一人でもやってやらぁ!」
「頼もしいわぁ。ウチも頑張るさかいに」
こうして次なる布陣が決まり、折よく敵陣で暴れまわっていたルイとアイレの魔法が解けてゆく。
「あ、そうそう。獣人の皆な。おのれ可愛がりなや。血ぃ吐いてでも殺って殺って殺りまくらんかい!!」
――――おぅ!!
「はな、二回戦始めるでぇ!」
◇
次なる戦が始まった。
指示通り、ルイとガリュウの部隊500人とアギョウ、ウギョウの部隊600人が敵と交戦を開始。アイレ率いる風人部隊100人は風を纏い、大地を蹴飛びながら敵本軍2万に一直線に向かっていった。
対するジオルディーネ本軍2万は、視界を覆っていた砂塵が晴れたかと思うと、突然こちらに猛スピードで向かってくる風人達に驚きつつも、必死に対応しようとしていた。
「慌てるなぁ! たったあれだけの人数で我らに向かってくるなど所詮亜人の浅知恵だ! 魔法術師部隊攻撃準備! ――放てぇ!」
敵本軍に突撃していたアイレ達に、火球、水弾、氷針といった凄まじい数の攻撃魔法が降り注ぐ。
「みんな! 消し飛ばすわよ! 力の差を見せつけるよ!」
「おぅ!」
風人100人全員が風魔法を放ち、風の壁が両軍を隔てる。放たれたジオルディーネ軍の攻撃魔法は量は多いが、一発の威力はさほどでもなく、風の壁にかき消されていった。
ゴォォォォォォ!
「行くわよっ!」
アイレの号令で再突撃が始まり、ジオルディーネ軍の頭上に百の風が刃を持って舞う。次々に斬り倒されてゆく味方にジオルディーネ軍は混乱を期するが、如何せんその数は二万。大勢が決まるにはまだ早い。
アギョウ、ウギョウ率いる部隊も敵第3の魔人に優勢に戦いを進めるが、既にアギョウとウギョウを含め、無傷の者はいない。数的優位に立ちながらも死んだと思った敵が復活し、死角から攻撃されるのだ。
先程まで第4の魔人を相手に戦っていたウギョウは、第4の魔人と戦っていた時よりも傷が増えている。敵が弱くなったからこそ生まれた油断で受けた傷。
「ウギョウ、先程から油断が過ぎるぞ」
「すまぬ。相手の戦闘力が先程とあまりに違ってな。傷は大したことは無いが、それが逆に恐ろしいのだ」
「何が?」
「最後の檻だ。3番目と4番目でこれ程の戦力差があるのだとしたら…」
「俺は4番目とやって無いから分からんが、仮に俺達二人と同等の力を持ったのが100体出てきたら、そいつらと戦えるのはルイ様とガリュウ殿しかおらんな」
第3の檻の魔人250体
第4の檻の魔人200体
ジオルディーネ本軍2万弱
亜人軍1200人(死者ゼロ 傷者1200人)
◇ ◇ ◇ ◇
「成功です。気分はどうですかな? ベルダイン殿」
ベルダインと呼ばれた男は深呼吸をし、拳を開閉する。これまで感じたことの無い力の波動に、興奮を覚えていた。
「…悪くない。力が漲るようだ」
「1週間は核の安定の為、大きな力は使わない方がよいですよ? 力が暴走しかねませんからね」
「はっはっは! 私はそのような軟弱では無いが、メフィスト殿の言う通りにしておくとしよう」
「それにしても流石でございます。B級魔力核をこうも容易く制御なさるとは。だが眼には出てしまっておいでですので…」
「私に掛かれば容易い事よ。眼の事は案ずる必要はない。既にこの国では強者の証だからな! では失礼するメフィスト殿。貴殿は既にパルテール・クシュナーを超えられたのではないかな? フフフ…ハーッハッハ!」
ジオルディーネ王国魔導研究省。マントを翻し、研究室から出ていったジオルディーネ王国騎士団長をメフィストは慇懃に見送る。頭を下げるその顔には歪な笑みが張り付いていた。
(ククク…あの騎士団長が力欲しさに人間を辞める程の馬鹿だったとは…隷属の魔法陣を刻まれているとも知らずに! 実験動物にしては上物だろう。さーて…ラクリ組はどうなったかな?)
「楽しみだっ!…ひゃっひゃっひゃっ!」
「わっ! なんです急に!」
「あー…想像したら笑いがこみ上げて来てな! うひゃひゃひゃ!」
「勘弁して下さいよ…あ、そういえばメフィスト様。A級核が手に入ったそうですよ。元Aランク冒険者の魔人達がアピオタウロスを倒したようです」
「おお、僥倖! それ僥倖! 誰がいっかなぁ!? やっぱ獣人かな!? ひゃっひゃっひゃっ!」
「A級は滅多に手に入らないのに、流石魔人ですね」
「魔人共じゃない! 俺様が偉大なの! 俺様が!」
暗躍するジオルディーネ王国魔導研究省の魔の手は、自国の騎士団長をも侵食し、王国全体を黒く染めていく。
◇ ◇ ◇ ◇
「ルイ様! アギョウ殿らが第3の魔人を殲滅しつつあります!」
「そらええこっちゃな。こっちもそろそろ片ぁつけんとカッコ悪いで! ガリュウはん!」
バシュン! バババババ! バチッ!
『ギャァァァァ!』
九尾を振るい、無傷で無双するルイは同じく無傷で暴れまわるガリュウにハッパを掛ける。
「うるせぇ! 俺はてめぇみてぇに九本も腕ねぇんだ…よ!」
ドゴン!
『グガァァァ…』
アギョウとウギョウの部隊が第3の魔人兵を殲滅し、ルイ達も第4の魔人兵を掃討しつつある現状を見て、ジオルディーネ軍長のバーゼルは信じられないといった目で戦況を見ていた。
本軍を急襲した風人も同様に猛威を振るっており、既に1000人近くの被害を出している。
(敵ながら見事なものだ。C、D級の魔物と同等の力を持つ魔人兵1500体でも歯が立たんとは。あいつらは制御しにくいが致し方あるまい…)
「おい! 第5の―――」
バーゼルが指示を出そうとした瞬間、
バガン!
「なっ! あいつら! …まぁいい、そのままやらせろ!」
「はっ! 全軍距離を取れ! 第5の檻が開かれたぞ!」
第5の檻が中から破壊され、檻の破片が戦場にまき散らされた。降り注ぐ鉄塊を敵味方問わずに避け、亜人達の視線は破壊された檻に向けられる。
「んんーっ! しょっと! バーゼルのオッサン開けるの遅すぎ!」
中から出て来たのは10人の人間。その内の一人が大きく伸びをし、不満気な言葉を放った。
「ん? 普通の人間? しかもえらい少ないやない…っつ!」
意外にも第5の檻から出て来たのは、真っ黒な魔人兵ではなく普通の人の姿をしていた。しかも数百人どころか10人という僅かな手勢だ。
しかし、ルイが10人の魔人を直視した瞬間悪寒が走り、尾の毛が逆立つ。
「全員この場から離れ!」
「遅い。 ―――広域爆炎魔法」
「くっ! 敵味方お構いなしかい!」
ズドォォォン!
魔人の一人が発した火属性魔法は上位に属するもの。亜人と魔人の戦場全体を巨大な爆炎が包み込んだ。
「うわぁぁぁぁ!」
『ギョエエエエエ!』
「ぐっ、クソがぁぁっ!」
『ボアァァァ!』
この攻撃により第3、第4の魔人は全滅。獣人勢にも甚大な被害を及ぼし、元々のダメージも相まって、半数が戦闘不能となった。
ここで気を吐いたのは竜人達。彼らに炎はほとんど効かない。だが流石にガリュウも危険を感じたのか、即座に魔法を放った人間を急襲する。だが、
ドガッ!
「ぐはっ!」
横から強烈な大盾の一撃を食らい、地面に叩きつけられる。一撃を加えたのは魔法師を守るかのように立ちはだかる、大盾を持った大男だった。
「竜のおにぃさーん。いきなり玉は取れないでしょ♪」
そう言葉を発した女の両手には、二本の短剣が握られている。ヒュンヒュンと空中で短剣を回して遊びながら、ニヤニヤとガリュウを見下していた。
その眼は真黒で赤い瞳。到底人間の目とは思えない。
ガリュウはこの戦い始まってのダメージに驚く暇も無く、言葉を発した”人間らしい魔人”を警戒した。
「なんだてめぇら。まともに喋れんじゃねぇか」
「そりゃあねー。なり損ないと一緒にされても困るかなぁ」
「なり損ないやて?」
チリチリと毛先を焼かれながらも、スッと立ちあがったルイが質問を投げかけた。
「そゆことー。こいつらほぼ自我無いっしょ? 弱いやつはこうなるんだよぉ」
つまり、今まで戦っていたのは魔人のなり損ないで、今目の前にいる表情豊かな女を含めたこの十人が真の魔人だという事である。
「なるほどねぇ。だからあんたらは話も出来るし、眼ぇ以外は黒くもなっとらんっちゅー訳かいな」
「おしゃべりはそこまでだニーナ。何も知らずに死んで行け、亜人」
「えーっ、いいじゃんゴドルフ! 退屈だったんだもん檻の中! ソルムとドルムの兄弟は全然喋んないし、私エンリケ嫌いだし! それにあっち知らない人達だし!」
「ぼ、僕ニーナさんに何かしましたっけ…?」
「ウジウジしてんのがキモイのよ!」
「そ、そんなぁ…」
「始まったらすぐ終わっちゃいそうだし、ちょっとぐらいいいじゃん! それにこの狐さん女王様でしょ? お会い? お目に? どっちでもいいや、お目に掛かれて光栄でゴザイマスー」
ははーっと跪くポーズを取るニーナと呼ばれた女の魔人。爆炎を食らいながらも立ち上がった獣人達は、自分達の王を馬鹿にされて怒りが湧きたつ。
「王を侮辱して生きて帰れると思うなよ! 魔物風情が!」
「や、止めっ!」
怒りに任せて飛び掛かった獣人の1人をルイは制するも、
ズドン!
「がふっ!」
ルイの目の前で上下真っ二つになる。周りにいた者達は返り血を浴びるまで、ルイとガリュウ、それにアギョウとウギョウを除き、何が起こったのか分からなかった。
第3・4の魔人全滅
ジオルディーネ本軍19000人
第5の魔人10人
亜人軍700人
ルイのこの言葉に、第4の魔人と交戦していた獣人と竜人の部隊は特に頷いた。第3の魔人と交戦していた部隊と違って、第4の魔人は強軍だったからだ。怪我人が多く出たこの部隊は、既に7割がどこかしら負傷していた。
「それに後ろにのさばっとる人間。あれが気になってしゃーないわ。だんだん均衡してくる状況でアレほっといたら後からえらい目遭う。せやからアイレはん」
「?」
「風人のみんなで、あの二万に突っ込んで殺れるだけ殺ってくれへん? 二万対百や」
「いいよ。どう考えても今の相手よりマシでしょ」
「ふふっ、ほな頼みます。頃合い見て離れてもろてええからね。ほんでウギョウ」
「はっ」
「100人連れてアギョウと合流や。お主らで3番目の檻の奴ら全滅させい」
「「はっ!」」
「ガリュウはんはウチと引き続きよろしゅう。100人減ったけど堪忍や」
「誰に言ってやがる! 一人でもやってやらぁ!」
「頼もしいわぁ。ウチも頑張るさかいに」
こうして次なる布陣が決まり、折よく敵陣で暴れまわっていたルイとアイレの魔法が解けてゆく。
「あ、そうそう。獣人の皆な。おのれ可愛がりなや。血ぃ吐いてでも殺って殺って殺りまくらんかい!!」
――――おぅ!!
「はな、二回戦始めるでぇ!」
◇
次なる戦が始まった。
指示通り、ルイとガリュウの部隊500人とアギョウ、ウギョウの部隊600人が敵と交戦を開始。アイレ率いる風人部隊100人は風を纏い、大地を蹴飛びながら敵本軍2万に一直線に向かっていった。
対するジオルディーネ本軍2万は、視界を覆っていた砂塵が晴れたかと思うと、突然こちらに猛スピードで向かってくる風人達に驚きつつも、必死に対応しようとしていた。
「慌てるなぁ! たったあれだけの人数で我らに向かってくるなど所詮亜人の浅知恵だ! 魔法術師部隊攻撃準備! ――放てぇ!」
敵本軍に突撃していたアイレ達に、火球、水弾、氷針といった凄まじい数の攻撃魔法が降り注ぐ。
「みんな! 消し飛ばすわよ! 力の差を見せつけるよ!」
「おぅ!」
風人100人全員が風魔法を放ち、風の壁が両軍を隔てる。放たれたジオルディーネ軍の攻撃魔法は量は多いが、一発の威力はさほどでもなく、風の壁にかき消されていった。
ゴォォォォォォ!
「行くわよっ!」
アイレの号令で再突撃が始まり、ジオルディーネ軍の頭上に百の風が刃を持って舞う。次々に斬り倒されてゆく味方にジオルディーネ軍は混乱を期するが、如何せんその数は二万。大勢が決まるにはまだ早い。
アギョウ、ウギョウ率いる部隊も敵第3の魔人に優勢に戦いを進めるが、既にアギョウとウギョウを含め、無傷の者はいない。数的優位に立ちながらも死んだと思った敵が復活し、死角から攻撃されるのだ。
先程まで第4の魔人を相手に戦っていたウギョウは、第4の魔人と戦っていた時よりも傷が増えている。敵が弱くなったからこそ生まれた油断で受けた傷。
「ウギョウ、先程から油断が過ぎるぞ」
「すまぬ。相手の戦闘力が先程とあまりに違ってな。傷は大したことは無いが、それが逆に恐ろしいのだ」
「何が?」
「最後の檻だ。3番目と4番目でこれ程の戦力差があるのだとしたら…」
「俺は4番目とやって無いから分からんが、仮に俺達二人と同等の力を持ったのが100体出てきたら、そいつらと戦えるのはルイ様とガリュウ殿しかおらんな」
第3の檻の魔人250体
第4の檻の魔人200体
ジオルディーネ本軍2万弱
亜人軍1200人(死者ゼロ 傷者1200人)
◇ ◇ ◇ ◇
「成功です。気分はどうですかな? ベルダイン殿」
ベルダインと呼ばれた男は深呼吸をし、拳を開閉する。これまで感じたことの無い力の波動に、興奮を覚えていた。
「…悪くない。力が漲るようだ」
「1週間は核の安定の為、大きな力は使わない方がよいですよ? 力が暴走しかねませんからね」
「はっはっは! 私はそのような軟弱では無いが、メフィスト殿の言う通りにしておくとしよう」
「それにしても流石でございます。B級魔力核をこうも容易く制御なさるとは。だが眼には出てしまっておいでですので…」
「私に掛かれば容易い事よ。眼の事は案ずる必要はない。既にこの国では強者の証だからな! では失礼するメフィスト殿。貴殿は既にパルテール・クシュナーを超えられたのではないかな? フフフ…ハーッハッハ!」
ジオルディーネ王国魔導研究省。マントを翻し、研究室から出ていったジオルディーネ王国騎士団長をメフィストは慇懃に見送る。頭を下げるその顔には歪な笑みが張り付いていた。
(ククク…あの騎士団長が力欲しさに人間を辞める程の馬鹿だったとは…隷属の魔法陣を刻まれているとも知らずに! 実験動物にしては上物だろう。さーて…ラクリ組はどうなったかな?)
「楽しみだっ!…ひゃっひゃっひゃっ!」
「わっ! なんです急に!」
「あー…想像したら笑いがこみ上げて来てな! うひゃひゃひゃ!」
「勘弁して下さいよ…あ、そういえばメフィスト様。A級核が手に入ったそうですよ。元Aランク冒険者の魔人達がアピオタウロスを倒したようです」
「おお、僥倖! それ僥倖! 誰がいっかなぁ!? やっぱ獣人かな!? ひゃっひゃっひゃっ!」
「A級は滅多に手に入らないのに、流石魔人ですね」
「魔人共じゃない! 俺様が偉大なの! 俺様が!」
暗躍するジオルディーネ王国魔導研究省の魔の手は、自国の騎士団長をも侵食し、王国全体を黒く染めていく。
◇ ◇ ◇ ◇
「ルイ様! アギョウ殿らが第3の魔人を殲滅しつつあります!」
「そらええこっちゃな。こっちもそろそろ片ぁつけんとカッコ悪いで! ガリュウはん!」
バシュン! バババババ! バチッ!
『ギャァァァァ!』
九尾を振るい、無傷で無双するルイは同じく無傷で暴れまわるガリュウにハッパを掛ける。
「うるせぇ! 俺はてめぇみてぇに九本も腕ねぇんだ…よ!」
ドゴン!
『グガァァァ…』
アギョウとウギョウの部隊が第3の魔人兵を殲滅し、ルイ達も第4の魔人兵を掃討しつつある現状を見て、ジオルディーネ軍長のバーゼルは信じられないといった目で戦況を見ていた。
本軍を急襲した風人も同様に猛威を振るっており、既に1000人近くの被害を出している。
(敵ながら見事なものだ。C、D級の魔物と同等の力を持つ魔人兵1500体でも歯が立たんとは。あいつらは制御しにくいが致し方あるまい…)
「おい! 第5の―――」
バーゼルが指示を出そうとした瞬間、
バガン!
「なっ! あいつら! …まぁいい、そのままやらせろ!」
「はっ! 全軍距離を取れ! 第5の檻が開かれたぞ!」
第5の檻が中から破壊され、檻の破片が戦場にまき散らされた。降り注ぐ鉄塊を敵味方問わずに避け、亜人達の視線は破壊された檻に向けられる。
「んんーっ! しょっと! バーゼルのオッサン開けるの遅すぎ!」
中から出て来たのは10人の人間。その内の一人が大きく伸びをし、不満気な言葉を放った。
「ん? 普通の人間? しかもえらい少ないやない…っつ!」
意外にも第5の檻から出て来たのは、真っ黒な魔人兵ではなく普通の人の姿をしていた。しかも数百人どころか10人という僅かな手勢だ。
しかし、ルイが10人の魔人を直視した瞬間悪寒が走り、尾の毛が逆立つ。
「全員この場から離れ!」
「遅い。 ―――広域爆炎魔法」
「くっ! 敵味方お構いなしかい!」
ズドォォォン!
魔人の一人が発した火属性魔法は上位に属するもの。亜人と魔人の戦場全体を巨大な爆炎が包み込んだ。
「うわぁぁぁぁ!」
『ギョエエエエエ!』
「ぐっ、クソがぁぁっ!」
『ボアァァァ!』
この攻撃により第3、第4の魔人は全滅。獣人勢にも甚大な被害を及ぼし、元々のダメージも相まって、半数が戦闘不能となった。
ここで気を吐いたのは竜人達。彼らに炎はほとんど効かない。だが流石にガリュウも危険を感じたのか、即座に魔法を放った人間を急襲する。だが、
ドガッ!
「ぐはっ!」
横から強烈な大盾の一撃を食らい、地面に叩きつけられる。一撃を加えたのは魔法師を守るかのように立ちはだかる、大盾を持った大男だった。
「竜のおにぃさーん。いきなり玉は取れないでしょ♪」
そう言葉を発した女の両手には、二本の短剣が握られている。ヒュンヒュンと空中で短剣を回して遊びながら、ニヤニヤとガリュウを見下していた。
その眼は真黒で赤い瞳。到底人間の目とは思えない。
ガリュウはこの戦い始まってのダメージに驚く暇も無く、言葉を発した”人間らしい魔人”を警戒した。
「なんだてめぇら。まともに喋れんじゃねぇか」
「そりゃあねー。なり損ないと一緒にされても困るかなぁ」
「なり損ないやて?」
チリチリと毛先を焼かれながらも、スッと立ちあがったルイが質問を投げかけた。
「そゆことー。こいつらほぼ自我無いっしょ? 弱いやつはこうなるんだよぉ」
つまり、今まで戦っていたのは魔人のなり損ないで、今目の前にいる表情豊かな女を含めたこの十人が真の魔人だという事である。
「なるほどねぇ。だからあんたらは話も出来るし、眼ぇ以外は黒くもなっとらんっちゅー訳かいな」
「おしゃべりはそこまでだニーナ。何も知らずに死んで行け、亜人」
「えーっ、いいじゃんゴドルフ! 退屈だったんだもん檻の中! ソルムとドルムの兄弟は全然喋んないし、私エンリケ嫌いだし! それにあっち知らない人達だし!」
「ぼ、僕ニーナさんに何かしましたっけ…?」
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「そ、そんなぁ…」
「始まったらすぐ終わっちゃいそうだし、ちょっとぐらいいいじゃん! それにこの狐さん女王様でしょ? お会い? お目に? どっちでもいいや、お目に掛かれて光栄でゴザイマスー」
ははーっと跪くポーズを取るニーナと呼ばれた女の魔人。爆炎を食らいながらも立ち上がった獣人達は、自分達の王を馬鹿にされて怒りが湧きたつ。
「王を侮辱して生きて帰れると思うなよ! 魔物風情が!」
「や、止めっ!」
怒りに任せて飛び掛かった獣人の1人をルイは制するも、
ズドン!
「がふっ!」
ルイの目の前で上下真っ二つになる。周りにいた者達は返り血を浴びるまで、ルイとガリュウ、それにアギョウとウギョウを除き、何が起こったのか分からなかった。
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