戦国武将異世界転生冒険記

詩雪

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第五章 ホワイトリム編

第121話 応報

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 「―――!――――!!」

 日付が変わり、皆が寝静まった頃。

 ふと人の気配を感じ、まどろみから目を覚ました。

 (遠視魔法ディヴィジョン

 母屋おもやを囲むように8人の魔力がある。雪人ニクスの魔力とは違った、人間の魔力だ。寝ているアイレとマーナを起こさぬよう起き上がり、さっと外套を羽織って明かり窓の木蓋を引き上げ、外の様子を探る。

 ぽつぽつと明かりを手にした人間がいる。ボロの上に、寒さ対策であろう動物の毛皮を上から羽織っている。あの格好はおおかた野盗だろう。さぞ寒いだろうに…

「表と裏口を固めろっ 物音は立てるな」
「扉鍵してありやすぜ。どうしやすか?」
「木の扉だ 蹴破っちまえ」
「あっちに蔵がありますっ」
「食料は後だっ 先に全員で女をとっ捕まえるぞっ」

 こそこそと何やら話しているようだが丸聞こえだ。
 物音を立てるなと言っておきながら扉を蹴破るのか…どうやらお粗末な奴ららしい。

 ついでに言うと、探知魔法サーチ使いがいたところで、外套のお陰で俺の動きは気付かれない。

 それにしても女、つまりツクヨさんが居る事を知っているという事は、下調べが済んでいるようだ。離れを放置したという事は下調べをしたのは昼間で、俺とアイレの存在を知らないという事。会話の内容からしても確実に人攫ひとさらいだろう。

 この国にいては犯罪者を騎士団に引き渡すなんてことは難しいし、多少痛めつけて二度とするなと言いい、放逐ほうちくしたところで野盗に改心なんぞ望めない。縛り上げて雪人ニクス達に預けても処分に困るだろう。もし抜けられたら、戦いの苦手な雪人ニクス達では逆襲されるのは目に見えている。となれば選択肢は一つ。


 全員殺す


 しかも、世話になった人の家をわざわざ襲うとは。絶対に許さん。

 一人一人排除しようとも思ったが、ここで騒いでギンジさん家族を怖がらせたくは無かった。そう考え直し、夜桜を携え、から怒気を発しながら母屋へ向かう。


竜の威圧おい

 ―――ズンッ

「ひいぃぃぃ!」
「な、なんだ!」
「身体が、勝手に震え…」

 野盗は悲鳴を上げてその場にうずくまり、殺意を発した相手を見上げた。

「に、人間!?」
「なんでこんなところにっ」
「何もんだめてぇ!」

 バガン!

「ぶっ!」

 すたすたと歩を進め、指示を飛ばしていた野盗を殴り飛ばした。そして夜桜を抜き、もう一人の首に刃を当てて言う。

「抵抗すれば殺す。声を上げても殺す」

 冷たい刃を当てられ、ツーっと首筋から血がしたたる。
 野盗は俺の声で膝を突いたままガタガタと震え、ゆっくりと頷いた。

「束になって掛かっても敵わぬことくらいはわかるな? 貴様らは野盗だ。ならば殺されても文句は言えないわけだ。だが…今回だけは見逃してやる。そこでのびている雑魚を連れて、今すぐ静かにここを立ち去り、この国を出ろ。そして二度と近づくな。さもなくば…皆殺しだ」

 ビクッと体を震わせる野盗。

 コクコクと頷くのを見て刃を離してやると、悲鳴を上げて8人全員が蜘蛛の子を散らすように逃げていった。行き先はバラバラだったが、殴り飛ばした野盗を担いで逃げる者に2人が付き添い、同じ方向に逃げていく。

「予想通り馬鹿だな…さて、巣まで案内してもらおうか」

 遠視魔法ディヴィジョンを展開し、距離を保って後をつけた。

 ◇

「お、お頭ぁ! ヒィヒィヒィ…」
「おお、もう済んだか」
「なかなかの手際じゃないか。見せて見ろぉ、ひっひっひ」

 洞窟に逃げ込んだ一人の野盗が、リーダーとタキシードの男の前で膝を突いて肩で息をする。

「そ、それが…とんでもねぇ奴が待ち伏せしてやがって…兄貴が一発でのされちまったんでさぁ!」
「あんだとぉ!?」
「何者だそいつは! 帝国兵か!?」

「い、いや、多分冒険者でさぁ…あんな恐ろしい奴見た事ねぇっす! 殺される前に逃げやしょう!」
「ちくしょう! なんでこんなとこに冒険者が居るんだ!」
「おめぇつけられてねぇだろうな!?」
「へ、へい! 何度も後ろを確認しやしたし、この国を出れば見逃すって言ってやした!」
「とにかく逃げるぞ! あの馬鹿国王が冒険者に手を出したおかげで、ギルドが亜人保護だ何だと動いていやがる。しかもミトレスに派遣されてるのはAランクBランクの上位のやつばかりだ! 束になっても敵いやしねぇ!」
「ど、奴隷は置いていかんぞっ!」
「わかったからさっさと準備しろ! 冒険者ってのはテキトーなんだ! 逃がすっつっても、いつ気が変わるか分かったもんじゃねぇ!」

 ◇

 逃げる野盗共を追う事30分。村長宅を出てから山を登ったところに洞窟があった。掘ったというよりは自然洞窟に近い気がするが、どこまで続いてるかは定かではない。

 表には馬車が2台、内1台は荷台に鉄格子がはめられている。そちらが奴隷馬車なんだろう。馬車と言っても車輪ではなく、長い板のようなものが車輪部分に取り付けられていて、滑るように前に進む仕組みだ。

 なるほど、所変われば馬車も変わるか。馬車ならぬ馬ぞりと言ったところか…

 どうでもいい事を考えつつ、洞窟内の動きを探る。

 遠視魔法ディヴィジョンには、洞窟内に人間が3人、雪人ニクスが19人、入り口前に人間5人の反応がある。入り口前の内1人は動く気配がないので、さっき殴り飛ばした奴だろう。

「それにしても20人近くも捕まっているとは…それにギンジさんもそれらしき事は一言も…いや、待てよ…―――」


 ――――『それで皆外に出たがらないんですか?』
 ――――『あ…ま、まぁ、そんなところだ』


 アイレとギンジさんの一時の会話を思い出す。

 ギンジさんの歯切れの悪さは、ジオルディーネ軍の襲来に恐怖してではなく、人攫いこれだったのではないか? すでに他の集落からの風聞ふうぶんで、人が次々に居なくなっている事を村人全員が知っていたとしたら、村に入った時に人気ひとけが無かったのは頷ける。失踪事件を恐れ、なるべく家から出ないようにしていたのかもしれない。

 俺達に言わなかったのは、人のいいギンジさん夫妻の事だ、迷惑は掛けられ無いと、あえて黙っていたのだろう。

「気持ちは分からなくは無いが…」

 あまりに無策ではないか、とも思ってしまう。下手をすればツクヨさんは攫われ、アカツキやユウヒもどうなっていたか分からない。抵抗するであろうギンジさんは、殺されるかもしれないのだ。

 まったく…そんな中で宴とはな。仮にそうだとしたら、呑気なものだ。俺も、村人も。

「とにかく、潰す」

 そう言って木から降りようとすると、洞窟の中から慌ただしい声が聞こえ、攫われたであろう雪人ニクス達が続々と出てくる。最初に出て来たのは、いかにも野盗のリーダーと言った風貌の男で、あれこれと大声で手下に指示を出している。

 続いて出てきたのが、痩せこけたタキシード姿の男。場違いな服装を若干いぶかしんだが、恐らく依頼主か、その手下だろう。野盗ではない事は雰囲気で分かる。

 それにしても、真っ先に逃げを打つとは親玉は馬鹿ではない様だ。知恵の回る者は必ず雪人ニクスを人質にして逃げようとするはず。それをさせないためにも、まずは雪人ニクス達全員が檻に入れられるのを待ち、それから動く。

 動けない1人を除いて敵は7人。静かに、速やかに。
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