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最終章 ジオルディーネ王国編
第169話 魔王種
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『ゴアァァァッ!』
『ギギギギギ』
「いくらなんでもおかしいぞ! なんで街道上で魔物どもが戦ってんだ!?」
あと半日で王都へと至る道半ば。またも逃げ惑う避難民とすれ違った先で、二頭の魔獣アルクドゥスと大量のスケルトン種が激しく争っていた。
リビングメイル、ブラックマジシャン級のスケルトン種でもない限り、通常ならこの争いは魔獣アルクドゥスに軍配が上がるだろう。アルクドゥスの爪牙がスケルトン種をバラバラに粉砕している様は見ていたくなる心持ちだが、魔物はどこから湧いてくるのか、打ち寄せる波の如く押し寄せてきている。
遠目では分かりづらいが、魔獣の動きに困惑が入り混じり始めているようにも見えた。
「この街道を含む一帯があの熊の縄張りになっていたんだろう。その縄張りに骸骨共が入ったとしか考えられん」
一般人に魔物と魔獣の違いを見分ける事は少々難しい面がある。ボブさんも例にもれず魔物と魔獣の違いをはっきり認識していなかったが、今それを説明している場合ではない。
「アルクドゥスも、あの数のスケルトンは骨が折れるでしょうね…」
アイレも多少驚いたのか、魔獣と魔物達の戦いに見入っている。もちろん今は魔獣を応援する立場だ。
魔獣の縄張りと化してしまう程この街道は人の往来が無くなり、管理が及んでいなかったという事。王都の内乱の影響はこんな所にも出てきていたのだ。
「ボブさん、とにかくあれは避けていきましょう。胸騒ぎがします」
「お、おう! ボボとボビもスケルトンくらいなんともないが、あの大熊は無理だ!」
そう言って街道から逸れ、草原へ入る。草原は地面が柔らかく、踏み込みが甘くなる上に箱の車輪もめり込んでしまう場所が多い。ボボとボビには力を使わせることになるが、二頭は素直にボブさんの指示通り、嘶きながら草原へと進路を変えた。
◇ ◇ ◇ ◇
「いいいやっほぅぅぅっ! とうとうやったぞ! 成功だぁっ!」
「やりましたね! メフィスト様! おめでとうございます!」
時は少し遡り、ジンがリージュの街に到着した日。
王都イシュドルにある王城の地下。玉座の真下に位置する極秘の地下研究室に、二人の歓喜の声が響き渡った。
反乱民が大挙して貧民街と平民街を占拠してからというもの、王エンスの苛立ちは日に日に増していた。死刑を言い渡され逃亡した作戦参謀フルカスに代わり、軍の指揮を執っている元王国騎士団一番隊長のバーゼルは団長となり、王の軽率な判断を諫めるのに一苦労する日々を送っている。
そんな王とバーゼルは魔導研究省主席研究員メフィストを事あるごとに呼び出し、最後の切り札の完成を待ち望んでいた。
メフィストは女王ルイの魔人化を大いに急かされている訳だが、中途半端に完成を急げばそれこそ失敗に終わり、全てが終わってしまうと折衝し続けているという経緯がある。
ゴゴゴゴゴゴゴ――――
「おお…すばらしい…すばらしいっ!!」
魔力核をその身に宿したルイという空の器に、抜き取っていた魔力が流れてゆく。背後に描かれている獣人ルイの魔力を吸っていた魔法陣が、溜めた魔力を激しい明滅を繰り返しながら持ち主の元へ戻ってゆき、魔法陣の明滅が止むころには、切り取られたルイの四肢、弾けた皮膚は完全に再生していた。
「さて、あとはこいつを施せば…」
メフィストはおもむろに直径一メートルほどの魔法陣を、未だ覚醒を待つルイの頭上付近につらつらと描いてゆく。
「やっぱりこれくらいの大きさが必要なんですね…」
その魔法陣の大きさにメフィストの助手が感嘆の声を上げる。
「一番強かった狛犬の魔人の三倍は見積もらんとなぁ。この日の為にわざわざ魔力出力を大幅に上げる魔道具を作ったのだよ。受け止めきれる魔法陣を用意しないとな」
上機嫌に魔法陣を描くその表情は、研究の集大成が完成間近であるという喜びで歪み切っている。
「これで完成っと…さぁ、女王ルイ! 目覚める時ですよ! そぉい!」
完成した魔法陣に意気揚々に魔力を込めるメフィスト。だが、
パキィン!
「なっ!?」
「壊れた!?」
描かれた魔法陣が弾け、魔素へと還って行く。吸収魔法陣から全ての魔力の返還を終えていたルイの身体は、足りぬ魔力を補うべく未だ大気中の魔素を吸収し続けている。
ルイに埋め込まれたA級の魔力核は激しい明滅を繰り返しており、その光量は明らかに魔力の生成容量に余裕がある事を示唆していた。
「まさかあの大きさで足りないとはなぁ…こりゃとんでもないモノができちまうかもな! ひゃーっひゃっひゃ!」
「メフィスト様! 笑ってる場合ではないでしょう! 早く浸食しないとただの災害になっちゃいますよ!」
「慌てんでよろしい! 核の明滅を見てみなさーい、まだ十分時間はあるっ」
そう言いながらメフィストは再度魔法陣の構築に取り掛かる。
メフィストが描いているのは対象の脳を浸食、自身の思うままに操る事が出来ると言う悪魔の如き魔法陣である。施された者は自我を失わず、一見しただけでは操られている事の見分けは付かない。
だが、この魔法は魔素で構成される魔物にしか効果は無く、人間や亜人を操るということは出来ない。
過去、魔物とは何かを研究していた彼はとある事実にたどり着き、その悪魔的頭脳は究極的にこう考えた。
『魔物は魔法である』
つまり『魔物』とは魔物という災害、言い換えれば災害という現象を生み出す魔法であり、火魔法や水魔法といった属性魔法と同様に、魔素から生み出される魔力によって発現するものだという事である。
ゆえに『魔物』と『属性魔法』は根源的に何ら変わりはない。
その後メフィストはこの推論に基づき、野にいる魔物を捕え、魔物が持つ魔力の研究に没頭した。
そして自身の無属性の魔力を魔物がもつ魔力に変換する魔法陣をようやく完成させた彼は、その魔力を使い魔物を生み出そうと気の遠くなるような試行錯誤を繰り返した。
だが、結局魔物を生み出すことは出来ず最終的に彼の出した結論は、『魔力』で魔物を作り出す事は出来ないという事だった。世界の理である『魔素』でなければ魔物は作り出せない事を悟った訳だが、そんな彼に試行錯誤の過程で最後まで付きまとっていた問題が、魔物を構成している魔素の維持である。
魔物の存在を固定化するには魔力核の存在が不可欠である事を突きつけられた彼は、次なる実験に移った。それが、魔物の魔力核をすでに存在が固定化された生物へ埋め込むという実験である。
始めこそ家畜や魔獣で実験を行っていたが、大抵は全身が真っ黒になって死んでしまうか、死ななかったとしても狂暴化するばかりで操るには程遠い状態となってしまった。そもそも言葉を理解できず、人間から見て自我の存在が希薄な家畜や魔獣では操る事にあまり意味は見いだせない。
そして、ついにメフィストは悪魔のささやきに耳を貸す事になる。
『人間に魔力核を埋め込もう』と。
そこで奴隷を多く抱えているジオルディーネ王国に自らの研究を売り込み、国王の援助を得て、行方をくらませたり死んでしまってたとしても誰も騒ぐ事の無い貧民街の住人や奴隷を用い、数多の人体実験を行ってきた。
そしてとうとう知的生命体、つまり人間や亜人が魔力核の影響で魔物へとその存在が転換される瞬間を発見したのだった。それが魔力核が魔素を吸収し、その生命体の持ちうる魔力量の限界に至るまでの間である。
胴体、四肢、頭の順に魔素での再構築が始まり、最後に自我を司る脳が魔素となる瞬間にその生命体は魔物となる。魔力核の明滅が終わるタイミングが、脳が魔素で構築し終わる瞬間という訳だった。
ルイは身体と四肢が再生したので、既にそれらは魔素に切り替わったという事。
長きにわたる研究により、脳が魔素に切り替わり始めたこのタイミングでメフィストの魔力で脳の構築に介入し、脳を汚染する事で、汚染された者はメフィストを自分と同じ存在であると誤認させる事が出来るのだ。
つまり、メフィストの言葉は自分の意思であると錯覚するようになるという事である。
この魔法による脳への介入を行わなければ、核を埋め込まれた者は取り込む魔素の量に身体が耐え切れずに黒化して死ぬか、ただの魔物となってしまう。そこに自我は無く、知的生命体では無くなるのである。
この介入度合いで『魔人』と『魔人兵』の別が付き、自我を維持できる程の魔力を送り込めば『魔人』へと、たった一度の言葉を聞き分けられる程度の魔力なら『魔人兵』となる。
だからこそメフィストの助手は魔法陣が壊れた事に驚きつつルイがただの魔物となってしまう事を恐れ、メフィストに早く浸食を終えるよう苦言を呈したのだが、未だ魔力核の明滅は続いている。
メフィストの理論に基づけば、脳の再構築への介入はまだ十分に間に合う。それが彼が落ち着いている理由だった。
だが、再度魔法陣の構築に取り掛かっていたメフィストと、緊張の面持ちで見守る助手はその時ある異変に気が付いた。
「…助手君。かなり濃いな」
「はい…この魔素濃度、通常ではありえません」
これまで自身の住み家兼研究室である『魔導塔』で、数多の魔人と魔人兵を生み出してきた。その際に大量の魔力核が魔素を集め、塔周辺の魔素濃度が上がってしまう事が多々あったのだが、今はそれを遥かに凌ぐ魔素がこの王城地下の秘密研究室を満たしていた。
「すごい…すごいぞこれは! これもA級核のスペック、女王の肉体強度と持ちうる魔力量が凄まじい証拠だ! さすが幻と言われる単体種、九尾大狐という訳か!」
「でも、これって魔素だまりになりませんかね…?」
「だからなんだ? 全てを養分とし、究極の魔人が生まれる! 黒王竜、銀王獅子ら王種とも渡り合える…いや、凌ぐこともできるかもしれん! 魔物の王をこのメフィストが生み出すのだぁっ! ひゃーっひゃっひゃっひゃ!」
この瞬間、王都周辺の魔物達は高濃度の魔素という養分に惹かれ求め、魔物大行進を開始した。
『ギギギギギ』
「いくらなんでもおかしいぞ! なんで街道上で魔物どもが戦ってんだ!?」
あと半日で王都へと至る道半ば。またも逃げ惑う避難民とすれ違った先で、二頭の魔獣アルクドゥスと大量のスケルトン種が激しく争っていた。
リビングメイル、ブラックマジシャン級のスケルトン種でもない限り、通常ならこの争いは魔獣アルクドゥスに軍配が上がるだろう。アルクドゥスの爪牙がスケルトン種をバラバラに粉砕している様は見ていたくなる心持ちだが、魔物はどこから湧いてくるのか、打ち寄せる波の如く押し寄せてきている。
遠目では分かりづらいが、魔獣の動きに困惑が入り混じり始めているようにも見えた。
「この街道を含む一帯があの熊の縄張りになっていたんだろう。その縄張りに骸骨共が入ったとしか考えられん」
一般人に魔物と魔獣の違いを見分ける事は少々難しい面がある。ボブさんも例にもれず魔物と魔獣の違いをはっきり認識していなかったが、今それを説明している場合ではない。
「アルクドゥスも、あの数のスケルトンは骨が折れるでしょうね…」
アイレも多少驚いたのか、魔獣と魔物達の戦いに見入っている。もちろん今は魔獣を応援する立場だ。
魔獣の縄張りと化してしまう程この街道は人の往来が無くなり、管理が及んでいなかったという事。王都の内乱の影響はこんな所にも出てきていたのだ。
「ボブさん、とにかくあれは避けていきましょう。胸騒ぎがします」
「お、おう! ボボとボビもスケルトンくらいなんともないが、あの大熊は無理だ!」
そう言って街道から逸れ、草原へ入る。草原は地面が柔らかく、踏み込みが甘くなる上に箱の車輪もめり込んでしまう場所が多い。ボボとボビには力を使わせることになるが、二頭は素直にボブさんの指示通り、嘶きながら草原へと進路を変えた。
◇ ◇ ◇ ◇
「いいいやっほぅぅぅっ! とうとうやったぞ! 成功だぁっ!」
「やりましたね! メフィスト様! おめでとうございます!」
時は少し遡り、ジンがリージュの街に到着した日。
王都イシュドルにある王城の地下。玉座の真下に位置する極秘の地下研究室に、二人の歓喜の声が響き渡った。
反乱民が大挙して貧民街と平民街を占拠してからというもの、王エンスの苛立ちは日に日に増していた。死刑を言い渡され逃亡した作戦参謀フルカスに代わり、軍の指揮を執っている元王国騎士団一番隊長のバーゼルは団長となり、王の軽率な判断を諫めるのに一苦労する日々を送っている。
そんな王とバーゼルは魔導研究省主席研究員メフィストを事あるごとに呼び出し、最後の切り札の完成を待ち望んでいた。
メフィストは女王ルイの魔人化を大いに急かされている訳だが、中途半端に完成を急げばそれこそ失敗に終わり、全てが終わってしまうと折衝し続けているという経緯がある。
ゴゴゴゴゴゴゴ――――
「おお…すばらしい…すばらしいっ!!」
魔力核をその身に宿したルイという空の器に、抜き取っていた魔力が流れてゆく。背後に描かれている獣人ルイの魔力を吸っていた魔法陣が、溜めた魔力を激しい明滅を繰り返しながら持ち主の元へ戻ってゆき、魔法陣の明滅が止むころには、切り取られたルイの四肢、弾けた皮膚は完全に再生していた。
「さて、あとはこいつを施せば…」
メフィストはおもむろに直径一メートルほどの魔法陣を、未だ覚醒を待つルイの頭上付近につらつらと描いてゆく。
「やっぱりこれくらいの大きさが必要なんですね…」
その魔法陣の大きさにメフィストの助手が感嘆の声を上げる。
「一番強かった狛犬の魔人の三倍は見積もらんとなぁ。この日の為にわざわざ魔力出力を大幅に上げる魔道具を作ったのだよ。受け止めきれる魔法陣を用意しないとな」
上機嫌に魔法陣を描くその表情は、研究の集大成が完成間近であるという喜びで歪み切っている。
「これで完成っと…さぁ、女王ルイ! 目覚める時ですよ! そぉい!」
完成した魔法陣に意気揚々に魔力を込めるメフィスト。だが、
パキィン!
「なっ!?」
「壊れた!?」
描かれた魔法陣が弾け、魔素へと還って行く。吸収魔法陣から全ての魔力の返還を終えていたルイの身体は、足りぬ魔力を補うべく未だ大気中の魔素を吸収し続けている。
ルイに埋め込まれたA級の魔力核は激しい明滅を繰り返しており、その光量は明らかに魔力の生成容量に余裕がある事を示唆していた。
「まさかあの大きさで足りないとはなぁ…こりゃとんでもないモノができちまうかもな! ひゃーっひゃっひゃ!」
「メフィスト様! 笑ってる場合ではないでしょう! 早く浸食しないとただの災害になっちゃいますよ!」
「慌てんでよろしい! 核の明滅を見てみなさーい、まだ十分時間はあるっ」
そう言いながらメフィストは再度魔法陣の構築に取り掛かる。
メフィストが描いているのは対象の脳を浸食、自身の思うままに操る事が出来ると言う悪魔の如き魔法陣である。施された者は自我を失わず、一見しただけでは操られている事の見分けは付かない。
だが、この魔法は魔素で構成される魔物にしか効果は無く、人間や亜人を操るということは出来ない。
過去、魔物とは何かを研究していた彼はとある事実にたどり着き、その悪魔的頭脳は究極的にこう考えた。
『魔物は魔法である』
つまり『魔物』とは魔物という災害、言い換えれば災害という現象を生み出す魔法であり、火魔法や水魔法といった属性魔法と同様に、魔素から生み出される魔力によって発現するものだという事である。
ゆえに『魔物』と『属性魔法』は根源的に何ら変わりはない。
その後メフィストはこの推論に基づき、野にいる魔物を捕え、魔物が持つ魔力の研究に没頭した。
そして自身の無属性の魔力を魔物がもつ魔力に変換する魔法陣をようやく完成させた彼は、その魔力を使い魔物を生み出そうと気の遠くなるような試行錯誤を繰り返した。
だが、結局魔物を生み出すことは出来ず最終的に彼の出した結論は、『魔力』で魔物を作り出す事は出来ないという事だった。世界の理である『魔素』でなければ魔物は作り出せない事を悟った訳だが、そんな彼に試行錯誤の過程で最後まで付きまとっていた問題が、魔物を構成している魔素の維持である。
魔物の存在を固定化するには魔力核の存在が不可欠である事を突きつけられた彼は、次なる実験に移った。それが、魔物の魔力核をすでに存在が固定化された生物へ埋め込むという実験である。
始めこそ家畜や魔獣で実験を行っていたが、大抵は全身が真っ黒になって死んでしまうか、死ななかったとしても狂暴化するばかりで操るには程遠い状態となってしまった。そもそも言葉を理解できず、人間から見て自我の存在が希薄な家畜や魔獣では操る事にあまり意味は見いだせない。
そして、ついにメフィストは悪魔のささやきに耳を貸す事になる。
『人間に魔力核を埋め込もう』と。
そこで奴隷を多く抱えているジオルディーネ王国に自らの研究を売り込み、国王の援助を得て、行方をくらませたり死んでしまってたとしても誰も騒ぐ事の無い貧民街の住人や奴隷を用い、数多の人体実験を行ってきた。
そしてとうとう知的生命体、つまり人間や亜人が魔力核の影響で魔物へとその存在が転換される瞬間を発見したのだった。それが魔力核が魔素を吸収し、その生命体の持ちうる魔力量の限界に至るまでの間である。
胴体、四肢、頭の順に魔素での再構築が始まり、最後に自我を司る脳が魔素となる瞬間にその生命体は魔物となる。魔力核の明滅が終わるタイミングが、脳が魔素で構築し終わる瞬間という訳だった。
ルイは身体と四肢が再生したので、既にそれらは魔素に切り替わったという事。
長きにわたる研究により、脳が魔素に切り替わり始めたこのタイミングでメフィストの魔力で脳の構築に介入し、脳を汚染する事で、汚染された者はメフィストを自分と同じ存在であると誤認させる事が出来るのだ。
つまり、メフィストの言葉は自分の意思であると錯覚するようになるという事である。
この魔法による脳への介入を行わなければ、核を埋め込まれた者は取り込む魔素の量に身体が耐え切れずに黒化して死ぬか、ただの魔物となってしまう。そこに自我は無く、知的生命体では無くなるのである。
この介入度合いで『魔人』と『魔人兵』の別が付き、自我を維持できる程の魔力を送り込めば『魔人』へと、たった一度の言葉を聞き分けられる程度の魔力なら『魔人兵』となる。
だからこそメフィストの助手は魔法陣が壊れた事に驚きつつルイがただの魔物となってしまう事を恐れ、メフィストに早く浸食を終えるよう苦言を呈したのだが、未だ魔力核の明滅は続いている。
メフィストの理論に基づけば、脳の再構築への介入はまだ十分に間に合う。それが彼が落ち着いている理由だった。
だが、再度魔法陣の構築に取り掛かっていたメフィストと、緊張の面持ちで見守る助手はその時ある異変に気が付いた。
「…助手君。かなり濃いな」
「はい…この魔素濃度、通常ではありえません」
これまで自身の住み家兼研究室である『魔導塔』で、数多の魔人と魔人兵を生み出してきた。その際に大量の魔力核が魔素を集め、塔周辺の魔素濃度が上がってしまう事が多々あったのだが、今はそれを遥かに凌ぐ魔素がこの王城地下の秘密研究室を満たしていた。
「すごい…すごいぞこれは! これもA級核のスペック、女王の肉体強度と持ちうる魔力量が凄まじい証拠だ! さすが幻と言われる単体種、九尾大狐という訳か!」
「でも、これって魔素だまりになりませんかね…?」
「だからなんだ? 全てを養分とし、究極の魔人が生まれる! 黒王竜、銀王獅子ら王種とも渡り合える…いや、凌ぐこともできるかもしれん! 魔物の王をこのメフィストが生み出すのだぁっ! ひゃーっひゃっひゃっひゃ!」
この瞬間、王都周辺の魔物達は高濃度の魔素という養分に惹かれ求め、魔物大行進を開始した。
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