181 / 200
最終章 ジオルディーネ王国編
第177話 魔導塔の戦いⅢ
しおりを挟む
魔力が減少してゆく感覚の中、アイレは再度メフィストに向かい突撃する。魔法が無くとも剣のみで戦えるのだ。如何に魔人だろうと、戦士でもないメフィスト相手に後れを取るはずもない。
だがアイレの予想とは裏腹に、メフィストは思いもよらない力を発揮した。黒い腕は鉄の様に固くなっており、重量を感じさせない動きを見せているのだ。
攻撃は腕を振り回すだけの単純な動きだが、強化魔法を使っているのか、空ぶった黒い腕が鉄の地面にぶつかる度に地を鳴らすほどの衝撃を生んでいる。
スパン!
隙を突き、腕以外の部分に攻撃を加える。
「なるほどぉ。これが戦士というものかぁ…魔法が使えなくともここまでやれるもんなんだなぁ」
損傷部分から白いもやを上げながら、メフィストは感嘆した様子で顎に手を当てている。
「………」
無言でやり過ごすアイレは、メフィストの動きから左わき腹にある魔力核の位置をほぼ把握していた。他の部分への攻撃はあっさりと許し、反撃を試みようとしているのにもかかわらず、右から背後に回り込もうとするとメフィストは急いで転じるのだ。
(ちょっと賢い魔人兵程度ね)
タタンとフェイントを入れ、容易に誘われたメフィストの黒い左腕を蹴り上げ、露わになった脇腹に細剣《レイピア》を振りかざす。
だが、それを邪魔したのは助手が繰り出した水弾だった。
ボン!
「っつ!」
「やったー! あたった! すごい威力になってるぞ!」
「やるじゃないか助手くーん」
普段、特に意識する事なく風で打ち消している魔法に反応出来なかったアイレは、自身の油断を恥じる。
あの程度の威力で喜んでいる所を見ると、助手は魔人となって初めて攻撃魔法の威力を実感したのだろう。助手は調子に乗って次々と水弾を撃ち出してくるが、来ると分かっている弱々しい魔法に二度も当たるわけがない。その全てをアイレはことごとくかわした。
だが、邪魔な事には変わりない。助手を先に倒すべく踏み込む。
「きひひっ! そこでぇす!」
自身に背を向けたアイレが狙っていたポイントに差し掛かった時、メフィストはパチリを指を鳴らす。すると、アイレの足元に魔法陣が出現した。
「ちっ!」
アイレは危険を察知し、地面から噴出する火炎を咄嗟に側転してかわす。さらに移動先に次々と反応を示して吹き出す火炎を前後左右、縦横無尽に回避した。
「ふーっ…」
アイレもほぼ無傷とは言え、この戦いの素人二人にここまで抵抗されるとは思いもよらなかった。円柱に地面。大量に描かれた魔法陣は全て予め用意されていたものであり、その数も魔人となって得た魔力量で初めて実現するものだろう。
威力や発動のタイミングは未熟としか言いようがないが、相応の使い手でなければ今のコンビネーションを見切る事は難しい。
「いやはや、見事なものだ。こりゃ期待できるなぁ」
「す、すごいんですね…風人の姫って」
「………」
初めて本格的な戦闘を経験した二人は相変わらず感嘆の声を上げる。その余裕ある振る舞いに、アイレは若干の警戒を覚えた。
(もう油断なんてしない。こいつらはあらかた手の内は出したように振舞ってるけど、絶対にまだ何かある。わざわざこいつらの巣で付き合う必要は無いわ)
アイレは吸収魔法陣の影響から逃れようと、魔導塔から飛び降りる選択をした。効果範囲外に出た瞬間に風を纏えば着地は容易い。もちろんそのまま逃げるつもりはなく、塔の上空から風星を見舞ってやる気だ。
バッと踵《きびす》を返し、塔の端へ走り出したアイレにメフィストはまたも称賛をおくる。
「ひゃーっひゃっひゃ! その油断のない判断に行動力! 頭もキレるなんてますます欲しい! 姫なら魔王種も夢ではありませんぞぉっ!」
今度は指ではなくパンと手を叩く。
ゴゴンゴゴンゴゴン!
「っち!」
すると、屋上を囲むように鉄の壁が現れる。魔法ではなく塔のギミックのようで、鉄壁に行く手を塞がれたアイレは細剣で破壊を試みるが、円柱と同様の頑強さに歯が立たなかった。
ギリリと歯を食いしばり、逃げ道を塞がれたアイレに動揺している暇などない。瞬間踵を返し当初の標的である助手に向かって走り出した。
「わわわわっ!」
放たれる水弾を軽く避けて助手に迫るや、メフィストが今度は指を鳴らした。
「これで仕上げだぁー!」
ブワッ!
(霧魔法ですって!?)
鉄壁に仕込まれていた魔法陣から勢いよく濃霧が噴き出す。これにはさすがのアイレも動きを止め、毒を警戒して目を薄め、息を止めた。
(やられたわね…塔の天板がやたら分厚い時点で壁の存在に気付くべきだった。魔法もなし、視界もわずか。頼みは、音だけ)
ラプラタ川でジンと静寂の狩人の戦いを目の当たりにしていなければ、突然の霧の発生に落ち着いていられなかっただろう。風魔法が使えないので遠耳とまではいかないが、風人の聴力は人間のそれより遥かに良い。
それを武器として致命傷となるダメージを避け、敵が接敵して来た時が好機である。アイレは細剣を下段に構え、受け流しの体勢で敵の一手を誘った。
「えーいっ!」
(馬鹿なの?)
掛け声よろしく気合の声を上げて助手が濃霧の中水弾を発射して来る。攻撃としては弱々しいが、当たれば仰け反るくらいの威力はある。アイレは水弾を細剣の腹で受け、身軽さを生かして木の葉の如く受け流していった。
「助手君! せっかく位置をくらましてるのに声をあげてどうする!」
「あっ! そうか! ごめんなさい!」
(あんたも同類よ、メフィスト)
二人の声の位置を掴んだアイレは先に助手を始末するべく踏み込み、目前まで迫って視認。あまりの速度で迫って来たアイレの姿を見て助手は悲鳴を上げ、手に持つ短剣をブンブンと振り回す。
「はっ!」
ザシュ!
「あぎゃああああ! メフィストさまぁっ、たすけてぇっ! 早くあれ―――」
「助手君! 無事かぁっ!?」
振り回す短剣をその腕ごと斬り、細剣の切先を静かに助手に向ける。助手の最後の言葉をメフィストの大声が不用意にかき消し、アイレは容赦なく、
トスッ
助手の眉間に深々と切先を突き刺した。
「あひ…」
ドサリと仰向けに倒れた助手の身体が薄らいでゆく。胸の中央で激しく明滅する小さな魔力核を見て、アイレは切先を核に突き刺した。
形を保てなくなった魔力核が光を失うと同時に、周囲の霧が消えていく。助手の死を確信したアイレは薄らぐ霧の中、徐々に姿を現したメフィストに向き直る。
「まさか霧が助手の魔法だったなんてね」
「ひゃーっひゃっひゃ! よくやった助手君! 勲一等を授けよう!」
仲間がやられたにもかかわらず、まるで勝ったかのように喜び勇むメフィストに、アイレはこれまでにない侮蔑の目を向ける。
「どこまでクズなの! あんた!」
「いやいや、姫を追い詰めたんですよ? 褒めてあげんと可哀そうでしょ」
「は? だからどこをどう見て……!?」
アイレは背後に不穏な気配を感じ取り振り返ると、消えつつある助手の身体がビクンビクンとうねり、魔力核を中心にまたも魔法陣が現れていた。
「これはっ!?」
「これぞ自爆陣魔法っ!」
―――助手君の断末魔!
ドゴォォォッ!
「あ゛あ゛ぁぁっ!」
至近から火属性の大爆発を受けたアイレの身体が爆風によって吹き飛ばされる。円柱に激しく打ち付けられた身体は重度の火傷と傷を負い、直下で爆発に晒された両脚は、肉の半分を失った。
「うぐっ…」
飛びそうになる意識を保とうと、激痛に耐えながらなんとか円柱にもたれ掛かる。
「ねぇ? 追い詰めただろぅ?」
霞む目で悠然と歩み寄って来たメフィストを睨みつける。
「さぁて、どこからだったかお分かりかな? おひめさま?」
アイレは逡巡する。
最初の攻防で魔法が無くとも勝てると油断させ
パチリと指を鳴らして自ら魔法陣を発動しているよう見せかけ
助手に展開させた霧魔法の魔力を魔法陣で吸い取り
強力な陣魔法を発動させた
「ああ、喋れませんかねぇ。まぁご想像の通りですなぁ! ひゃーっひゃっひゃ!」
地面の火炎も助手の魔法だった
火と水の相性があるなら霧魔法が使えてもおかしくない
濃霧の中 助手に水弾を撃たせて意識を助手に向かせ
メフィストは注意をするフリをして助手の位置を突き止めさせた
案の定 声を上げた助手の最後の言葉を心配するフリをして遮ったのは
今の陣魔法の存在に繋がる情報を与えないため
恐らく助手には形勢逆転可能な手段があると吹き込み
濃霧の中声を出して魔法を放つという愚鈍な行動をさせた
すべては私に助手を殺させて、”死際”という隠れ蓑を使って最大火力の攻撃をまともに当てるためだったのだ。
「言っておきますが私は戦闘は初めてですよぉ? ただ、少し頭を捻れば簡単にこれくらいの絵は描けるんですよねぇ。なんせ天才なもんで!」
メフィストの霧魔法を使った戦略は、静寂の狩人リーダーのソルムの戦術をほぼなぞっていたと言える。違うのは、その全てが他人の力を利用したという点だった。
陣魔法は描いた本人しか発動できない。助手が力尽きた時点で、あの魔法陣は発現しないはずなのだ。
「まぁ、最後は凡人にはたどり着けんでしょうから? 教えて差し上げましょー!」
「魔法陣は確かに描いた本人にしか発動できませーん! しかぁし! その描いた本人が本人でなければ? 助手君の意思はワタシの意思、ワタシの意思はワタシの意思! 要するに、ワタシは助手君を通して魔法を放っていたという事ですよ! ひゃーっひゃっひゃっひゃっ!!」
メフィストが語ったのは、魔人の特性を生かした恐るべきものだった。ひとしきり笑い飛ばした後、メフィストはギョロリと目を剥き、悪魔の形相へと変貌する。
「魔法を使える名もなき人間など世界中に吐いて捨てる程いるんだよ。助手君などいくらでも量産できる。それらすべて俺の駒でありモルモット。今回のは二年使っていた俺のお気に入りだったんだが、こうして素晴らしい対価を生んでくれた。壊れても十分元は取れた」
ベロリとアイレの頬を舐め上げる。
アイレは人間の悪意の権化を目の当たりにし、己の未熟さ、負けられない戦いに敗北した事実に、悔しさの余り涙を流した。
メフィストは懐から大小様々な魔力核を取り出す。
「さて、早速実験開始だ。すぐに進化させてやるよ。ああ、心配するな。多少痛めつけるがすぐに再生する―――」
……――――
ごめんなさい みんな
悔しいけど わたし ここまでみたい
勝てるとおもったんだけどな
ははは
情けないよね
父様 もう寂しくないよ いま いきます
母様 先にいくわがまま お許しください
里のみんな エーデルタクトをお願い
ルイ 早く元に戻ってよね
コハク お友達になったばっかりなのに ごめんね
マーナ もっとモフモフしたかったなぁ
ジン
ジン
―――き
きらめく翠緑の想いは
虚無の魔力を生み出した
だがアイレの予想とは裏腹に、メフィストは思いもよらない力を発揮した。黒い腕は鉄の様に固くなっており、重量を感じさせない動きを見せているのだ。
攻撃は腕を振り回すだけの単純な動きだが、強化魔法を使っているのか、空ぶった黒い腕が鉄の地面にぶつかる度に地を鳴らすほどの衝撃を生んでいる。
スパン!
隙を突き、腕以外の部分に攻撃を加える。
「なるほどぉ。これが戦士というものかぁ…魔法が使えなくともここまでやれるもんなんだなぁ」
損傷部分から白いもやを上げながら、メフィストは感嘆した様子で顎に手を当てている。
「………」
無言でやり過ごすアイレは、メフィストの動きから左わき腹にある魔力核の位置をほぼ把握していた。他の部分への攻撃はあっさりと許し、反撃を試みようとしているのにもかかわらず、右から背後に回り込もうとするとメフィストは急いで転じるのだ。
(ちょっと賢い魔人兵程度ね)
タタンとフェイントを入れ、容易に誘われたメフィストの黒い左腕を蹴り上げ、露わになった脇腹に細剣《レイピア》を振りかざす。
だが、それを邪魔したのは助手が繰り出した水弾だった。
ボン!
「っつ!」
「やったー! あたった! すごい威力になってるぞ!」
「やるじゃないか助手くーん」
普段、特に意識する事なく風で打ち消している魔法に反応出来なかったアイレは、自身の油断を恥じる。
あの程度の威力で喜んでいる所を見ると、助手は魔人となって初めて攻撃魔法の威力を実感したのだろう。助手は調子に乗って次々と水弾を撃ち出してくるが、来ると分かっている弱々しい魔法に二度も当たるわけがない。その全てをアイレはことごとくかわした。
だが、邪魔な事には変わりない。助手を先に倒すべく踏み込む。
「きひひっ! そこでぇす!」
自身に背を向けたアイレが狙っていたポイントに差し掛かった時、メフィストはパチリを指を鳴らす。すると、アイレの足元に魔法陣が出現した。
「ちっ!」
アイレは危険を察知し、地面から噴出する火炎を咄嗟に側転してかわす。さらに移動先に次々と反応を示して吹き出す火炎を前後左右、縦横無尽に回避した。
「ふーっ…」
アイレもほぼ無傷とは言え、この戦いの素人二人にここまで抵抗されるとは思いもよらなかった。円柱に地面。大量に描かれた魔法陣は全て予め用意されていたものであり、その数も魔人となって得た魔力量で初めて実現するものだろう。
威力や発動のタイミングは未熟としか言いようがないが、相応の使い手でなければ今のコンビネーションを見切る事は難しい。
「いやはや、見事なものだ。こりゃ期待できるなぁ」
「す、すごいんですね…風人の姫って」
「………」
初めて本格的な戦闘を経験した二人は相変わらず感嘆の声を上げる。その余裕ある振る舞いに、アイレは若干の警戒を覚えた。
(もう油断なんてしない。こいつらはあらかた手の内は出したように振舞ってるけど、絶対にまだ何かある。わざわざこいつらの巣で付き合う必要は無いわ)
アイレは吸収魔法陣の影響から逃れようと、魔導塔から飛び降りる選択をした。効果範囲外に出た瞬間に風を纏えば着地は容易い。もちろんそのまま逃げるつもりはなく、塔の上空から風星を見舞ってやる気だ。
バッと踵《きびす》を返し、塔の端へ走り出したアイレにメフィストはまたも称賛をおくる。
「ひゃーっひゃっひゃ! その油断のない判断に行動力! 頭もキレるなんてますます欲しい! 姫なら魔王種も夢ではありませんぞぉっ!」
今度は指ではなくパンと手を叩く。
ゴゴンゴゴンゴゴン!
「っち!」
すると、屋上を囲むように鉄の壁が現れる。魔法ではなく塔のギミックのようで、鉄壁に行く手を塞がれたアイレは細剣で破壊を試みるが、円柱と同様の頑強さに歯が立たなかった。
ギリリと歯を食いしばり、逃げ道を塞がれたアイレに動揺している暇などない。瞬間踵を返し当初の標的である助手に向かって走り出した。
「わわわわっ!」
放たれる水弾を軽く避けて助手に迫るや、メフィストが今度は指を鳴らした。
「これで仕上げだぁー!」
ブワッ!
(霧魔法ですって!?)
鉄壁に仕込まれていた魔法陣から勢いよく濃霧が噴き出す。これにはさすがのアイレも動きを止め、毒を警戒して目を薄め、息を止めた。
(やられたわね…塔の天板がやたら分厚い時点で壁の存在に気付くべきだった。魔法もなし、視界もわずか。頼みは、音だけ)
ラプラタ川でジンと静寂の狩人の戦いを目の当たりにしていなければ、突然の霧の発生に落ち着いていられなかっただろう。風魔法が使えないので遠耳とまではいかないが、風人の聴力は人間のそれより遥かに良い。
それを武器として致命傷となるダメージを避け、敵が接敵して来た時が好機である。アイレは細剣を下段に構え、受け流しの体勢で敵の一手を誘った。
「えーいっ!」
(馬鹿なの?)
掛け声よろしく気合の声を上げて助手が濃霧の中水弾を発射して来る。攻撃としては弱々しいが、当たれば仰け反るくらいの威力はある。アイレは水弾を細剣の腹で受け、身軽さを生かして木の葉の如く受け流していった。
「助手君! せっかく位置をくらましてるのに声をあげてどうする!」
「あっ! そうか! ごめんなさい!」
(あんたも同類よ、メフィスト)
二人の声の位置を掴んだアイレは先に助手を始末するべく踏み込み、目前まで迫って視認。あまりの速度で迫って来たアイレの姿を見て助手は悲鳴を上げ、手に持つ短剣をブンブンと振り回す。
「はっ!」
ザシュ!
「あぎゃああああ! メフィストさまぁっ、たすけてぇっ! 早くあれ―――」
「助手君! 無事かぁっ!?」
振り回す短剣をその腕ごと斬り、細剣の切先を静かに助手に向ける。助手の最後の言葉をメフィストの大声が不用意にかき消し、アイレは容赦なく、
トスッ
助手の眉間に深々と切先を突き刺した。
「あひ…」
ドサリと仰向けに倒れた助手の身体が薄らいでゆく。胸の中央で激しく明滅する小さな魔力核を見て、アイレは切先を核に突き刺した。
形を保てなくなった魔力核が光を失うと同時に、周囲の霧が消えていく。助手の死を確信したアイレは薄らぐ霧の中、徐々に姿を現したメフィストに向き直る。
「まさか霧が助手の魔法だったなんてね」
「ひゃーっひゃっひゃ! よくやった助手君! 勲一等を授けよう!」
仲間がやられたにもかかわらず、まるで勝ったかのように喜び勇むメフィストに、アイレはこれまでにない侮蔑の目を向ける。
「どこまでクズなの! あんた!」
「いやいや、姫を追い詰めたんですよ? 褒めてあげんと可哀そうでしょ」
「は? だからどこをどう見て……!?」
アイレは背後に不穏な気配を感じ取り振り返ると、消えつつある助手の身体がビクンビクンとうねり、魔力核を中心にまたも魔法陣が現れていた。
「これはっ!?」
「これぞ自爆陣魔法っ!」
―――助手君の断末魔!
ドゴォォォッ!
「あ゛あ゛ぁぁっ!」
至近から火属性の大爆発を受けたアイレの身体が爆風によって吹き飛ばされる。円柱に激しく打ち付けられた身体は重度の火傷と傷を負い、直下で爆発に晒された両脚は、肉の半分を失った。
「うぐっ…」
飛びそうになる意識を保とうと、激痛に耐えながらなんとか円柱にもたれ掛かる。
「ねぇ? 追い詰めただろぅ?」
霞む目で悠然と歩み寄って来たメフィストを睨みつける。
「さぁて、どこからだったかお分かりかな? おひめさま?」
アイレは逡巡する。
最初の攻防で魔法が無くとも勝てると油断させ
パチリと指を鳴らして自ら魔法陣を発動しているよう見せかけ
助手に展開させた霧魔法の魔力を魔法陣で吸い取り
強力な陣魔法を発動させた
「ああ、喋れませんかねぇ。まぁご想像の通りですなぁ! ひゃーっひゃっひゃ!」
地面の火炎も助手の魔法だった
火と水の相性があるなら霧魔法が使えてもおかしくない
濃霧の中 助手に水弾を撃たせて意識を助手に向かせ
メフィストは注意をするフリをして助手の位置を突き止めさせた
案の定 声を上げた助手の最後の言葉を心配するフリをして遮ったのは
今の陣魔法の存在に繋がる情報を与えないため
恐らく助手には形勢逆転可能な手段があると吹き込み
濃霧の中声を出して魔法を放つという愚鈍な行動をさせた
すべては私に助手を殺させて、”死際”という隠れ蓑を使って最大火力の攻撃をまともに当てるためだったのだ。
「言っておきますが私は戦闘は初めてですよぉ? ただ、少し頭を捻れば簡単にこれくらいの絵は描けるんですよねぇ。なんせ天才なもんで!」
メフィストの霧魔法を使った戦略は、静寂の狩人リーダーのソルムの戦術をほぼなぞっていたと言える。違うのは、その全てが他人の力を利用したという点だった。
陣魔法は描いた本人しか発動できない。助手が力尽きた時点で、あの魔法陣は発現しないはずなのだ。
「まぁ、最後は凡人にはたどり着けんでしょうから? 教えて差し上げましょー!」
「魔法陣は確かに描いた本人にしか発動できませーん! しかぁし! その描いた本人が本人でなければ? 助手君の意思はワタシの意思、ワタシの意思はワタシの意思! 要するに、ワタシは助手君を通して魔法を放っていたという事ですよ! ひゃーっひゃっひゃっひゃっ!!」
メフィストが語ったのは、魔人の特性を生かした恐るべきものだった。ひとしきり笑い飛ばした後、メフィストはギョロリと目を剥き、悪魔の形相へと変貌する。
「魔法を使える名もなき人間など世界中に吐いて捨てる程いるんだよ。助手君などいくらでも量産できる。それらすべて俺の駒でありモルモット。今回のは二年使っていた俺のお気に入りだったんだが、こうして素晴らしい対価を生んでくれた。壊れても十分元は取れた」
ベロリとアイレの頬を舐め上げる。
アイレは人間の悪意の権化を目の当たりにし、己の未熟さ、負けられない戦いに敗北した事実に、悔しさの余り涙を流した。
メフィストは懐から大小様々な魔力核を取り出す。
「さて、早速実験開始だ。すぐに進化させてやるよ。ああ、心配するな。多少痛めつけるがすぐに再生する―――」
……――――
ごめんなさい みんな
悔しいけど わたし ここまでみたい
勝てるとおもったんだけどな
ははは
情けないよね
父様 もう寂しくないよ いま いきます
母様 先にいくわがまま お許しください
里のみんな エーデルタクトをお願い
ルイ 早く元に戻ってよね
コハク お友達になったばっかりなのに ごめんね
マーナ もっとモフモフしたかったなぁ
ジン
ジン
―――き
きらめく翠緑の想いは
虚無の魔力を生み出した
0
あなたにおすすめの小説
タイム連打ってなんだよ(困惑)
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」
王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。
パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。
アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。
「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」
目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?
※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。
『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
転生したら王族だった
みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。
レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~
楠富 つかさ
ファンタジー
ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。
そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。
「やばい……これ、動けない……」
怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。
「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」
異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる