結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です

柴田はつみ

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第二十二章 兄として

 書記官の取り調べの結果が届いたのは、夜が明けて間もないころだった。

 アンリは、ほとんど眠れなかった。

 寝台に入っても、目を閉じれば昨夜の足音がよみがえる。旧礼拝堂の前で兵が動いたこと。書記官が捕らえられたこと。フェルマンの顔色が変わったこと。全部が一晩のうちに起きたはずなのに、もっと長い時間が過ぎたみたいに感じられた。

 窓の外は、まだ夜明けの薄明かりだった。
 王宮の尖塔が静かに浮かんでいる。庭の木々は朝露を含み、風もほとんどない。見えるものだけなら穏やかな朝なのに、自分のいる場所だけが妙に静かだった。

 扉が控えめに叩かれる。

「アンリ様。お目覚めでしたら、殿下がお呼びです」

 ミアの声だった。

「……今、行きます」

 返事をしながら、アンリは寝台の端に座ったまま数秒だけ動けなかった。

 また何かが進んだのだろう。
 呼ばれたということは、昨夜、証拠が出たのだ。

 

 アンリは外套を羽織り、髪を整えて部屋を出た。



 通されたのは、いつもの小会議室だった。

 けれど、昨日までと少し違う。
 机の上には紙が増え、湯気の立つ茶はほとんど手つかずのまま置かれている。そこにいる全員が、夜の続きをそのまま朝まで引きずってきたのだと、部屋へ足を踏み入れた瞬間に分かった。

 レオン
 バルド
 エレノア

 そして、昨夜あれほど取り乱していたフェルマンの姿はなかった。

「座れ」

 レオンの声は落ち着いていた。

 アンリは頷き、椅子に腰を下ろした。
 木の肘掛けが少し冷たい。手を置くと、その冷たさが妙に現実をはっきりさせた。

「書記官は?」
 先に問うと、バルドが小さくうなずく。

「完全ではありませんが、十分なことは話しました」
「……何を」
「旧礼拝堂へ向かったのは、自分の判断ではない、と」
「誰かに命じられた」
「ええ」

 アンリは息を止めた。

 やはり。
 そう思う一方で、胸の奥は少しも軽くならない。黒に近い何かが存在すると分かるたび、王宮の空気そのものが一段重くなる。

「誰ですか」
 アンリの問いに、今度はレオンが答えた。

「そこはまだ、明言していない」
「でも、命じられたことは認めたんですね」
「ああ」
 レオンの声は低い。
「正確には、上の意向だと理解したと言っている」
「理解した?」
「直接の命令ではない可能性もある、ということです」
 バルドが言う。
「だが、そう思わせるだけの空気と誘導があった」

 アンリは視線を落とした。


 王宮らしいといえば、王宮らしい。
 昨日のルシエンヌの笑顔も、そういうものだった。手は汚さない。けれど、誰がどこへ動くかだけはきちんと決めている。

「匿名の文も出ています」
 エレノアが机の上の紙を一枚示した。
「昨夜の書記官は、三日前に文を受け取っていました」
「……また匿名」
「ええ。王家の封印文書が移される。確認できれば宮内卿の役に立つと」
「宮内卿の」

 アンリは顔を上げた。
「では、フェルマン様は」
「まだ断定はしない」
 レオンが即座に言う。
「だが、無関係とも言いきれない」
「……」
「昨夜の時点で、職務からは外した」

 アンリは小さく息を吐いた。

 フェルマンが黒だと決まったわけではない。
 でも、少なくとも白ではないところまで来ている。

 その曖昧さが、かえって気持ち悪かった。

「東棟とのつながりは?」
 アンリが問う。

 バルドが答える。

「文を運んだのは、東棟の下働き女官です」
「やっぱり」
「ただし、その女官自身は紙を渡しただけとしか言っておりません。そこから先の名は出ていない」
「出せないのでしょうね」
 アンリが言うと、エレノアが静かにうなずいた。

「昨夜のマルタと同じです」
「言えば、自分が終わると思っている」
「はい」

 部屋がしばらく静かになった。

 王宮の中にいる……。

 笑顔で話し、礼を取り、何食わぬ顔で通り過ぎていく人々の中に、自分を囲い込み、必要なら消そうとする誰かがいる。

 その現実が、朝の白い光の中でかえって生々しかった。

「では」
 アンリはゆっくり言った。
「次はどうしますか」

 その一言に、レオンの目が少し細くなる。

「お前は、まだ動く気か」
「昨夜、旧礼拝堂で動いたんですよね」
「ああ」
「なら、向こうは焦っています」
「……」
「ここでこちらが止まれば、また別の方法で来ます」

 レオンはすぐには答えなかった。

 机の上で指を組み、そのままアンリを見ている。止めたいのだろう。危険から遠ざけたいのだろう。だが、ただ止めれば済む段階ではないと、もうこの人も分かっている顔だった。

「アンリ」
 やがて、低く言う。
「私は、お前をこれ以上前に出したくない」
「分かっています」
「分かっていて言っているのか」
「はい」
 アンリはまっすぐ返した。
「わたしだって怖いです」
「だったら」
「でも、何も知らないまま置かれるのは、もっと嫌なんです」

 その言葉が部屋の空気を変える。

 バルドも、エレノアも何も言わない。
 ただ聞いている。

「昨日、会議室で決められようとした。」
 アンリは続けた。
「どこへ置くか。どう隠すか。誰に預けるか」
「……」
「そういうふうに、また何かを決められる前に、わたしは自分で確認したい」
「何を」
「わたしが、どういう理由で狙われているのかを」

 レオンの表情がわずかに動いた。

 ほんの少しだけ。
 けれど、その小さな揺れだけで、この人の中にも同じ問いがあるのだと分かった。

「誓約の文だけが理由ではない気がするんです」


「もちろん、それは大きいと思います」
「ああ」
「でも、それだけなら、もっと別のやり方があるはずです」
「……」
「毒でわたしを結びつけようとした。東棟へ引っ張り出して、皆の前に出した。旧礼拝堂の囮にも食いついた」

 
「向こうは、文書だけじゃなくて、わたし自身の立場を揺らしたいんですよね」

 バルドが長く息を吐いた。

「鋭い」
「そうでしょうね」
 エレノアも静かに言う。
「文書だけが欲しいなら、もっと前に別の盗み方をしていたはずです」
「つまり」
 
「わたしが、動くのを、嫌がっている」

 言葉にした瞬間、それが自分の中でしっくりきた。

 レオンが、ゆっくりと息を吐いた。

「そこまで見えているなら、なおさら表へは出せん」
「殿下」
「最後まで聞け」

 低い声に、アンリは口を閉じる。

「しばらく、お前は大きな場には出さない」
「……」
「隠すためではない」
「では」
「出す時期を、こちらが選ぶためだ」
「こちらが」
「ああ」

 レオンはアンリを見た。

「向こうに先を取らせるな」
「……」
「今はまだ、その時ではない」

 「……」

 止めるだけではない。
 選ぶ、と言った。

 それは昨日までとは少し違う響きだった。
 勝手に決めるのではなく、守るために時を選ぶ。少なくとも、そう言おうとしている。

 バルドが静かにうなずく。

「その間に、こちらは外側を洗だします。」
「外側?」
「マルタの兄の借金の流れです」
 エレノアが答えた。
「王宮の外の賭博に出入りしていたことが分かっています」
「賭博……」
「金の流れを辿れば、脅した相手の影が見えるかもしれません」
「王宮の外も使っているなら、そこが綻びになります」
 バルドが言う。

 アンリは小さく息を吐いた。

 見えない糸が、王宮の中だけでなく外にも伸びている。
 そう考えると怖い。だが同時に、どこか一か所を切れば、全体がほどけるかもしれないという気もした。

「それから」
 レオンが言う。
「お前の護衛は増やす」
「また?」
「不満か」
「……少しだけ」
「我慢しろ」
 きっぱり言われて、アンリは口を閉じた。

 そのやり取りを見て、バルドがほんの少しだけ口元を和らげる。

「殿下は、昨夜からほとんど眠っておられません」
「余計なことは言うな」
「言いたくもなります」
 エレノアまで、小さく息をついた。

 アンリはそのやり取りを見て、胸の奥が少しだけやわらぐのを感じた。

 怖いことばかりが続いている。
 でも、こうして本気で守ろうとしてくれる人がいる。

 それは、前とは違うことだった。



 バルドとエレノアが下がったあと、部屋にはレオンとアンリだけが残った。

 静かだった
 さっきまでよりずっと。

 レオンは窓際へ歩き、しばらく何も言わなかった。

ただ、その背中を見ていた。

「……本当は」
 やがて、レオンが低く言った。
「選ばせたくなかった」
「知っています」
「安全な方を押しつけることもできた」
「でも、しなかった」
「ああ」

 そこでようやく振り返る。

「もう、それをすればお前を失うと分かったからだ」
「失う?」
「兄として」

「……」

 レオンは少しだけ疲れた顔で笑った。

「皇太子としてなら、命じるのは簡単だ」
「……」
「だが、それではお前はまた、私を信じなくなる」
「……はい」
「前は、それが分からなかった」
「今は分かるんですか」
「痛いほどな」

 アンリは返事ができなかった。


 その立場を、今ようやくこの人自身が口にした。義務でも建前でもなく、自分の言葉として。

「私は」
 レオンが続ける。
「お前を道具にはしない」
「……」
「王家の血でも、誓約の文でもなく、お前自身として扱う」
「……兄として?」
「そうだ」

 胸が少し熱くなった。

「ありがとうございます」
 ようやくそう言うと、レオンは小さく息を吐いた。
「礼を言われることではない。最初からそうすべきだった」
「でも、今言ってくれたから」
「……そうか」

 ほんの少しだけ、部屋の空気がやわらいだ。

 その時だった。

 扉が控えめに叩かれる。

「殿下」
 外から侍女の声がした。
「東棟より、お届け物がございます」

 レオンの顔が、一気に険しくなる。

「誰宛だ」
「……アンリ様宛でございます」

 部屋の空気が冷えた。

 レオンが扉を開け、侍女から封筒を受け取る。
 白い紙に、東棟の私印が押されていた。だが先日の招待状とは違い、今回はずっと簡素だった。

 レオンは黙ってそれをアンリに差し出す。

 アンリは封を切った。

 中には、短い紙が一枚だけ入っていた。

 今宵、東棟の女たちは静かにいたします。
 ですから次は、外をご覧になるとよろしいでしょう。

 アンリは眉を寄せた。

「外?」
「何のつもりだ」
 レオンが低く言う。

 その時だった。

 別の扉が勢いよく叩かれる。

「殿下!」
 今度は護衛の声だった。
「至急、ご報告が!」
「入れ」

 飛び込んできた男の顔色は悪い。

「薬草店が」
 
「薬草店が荒らされました」

 アンリの頭が、一瞬だけ真っ白になった。

「……え」

 聞き返した声は、自分のものとは思えないほどかすれていた。

「今朝、見回りの者が異変に気づきました。裏口の錠が壊され、中が荒らされていると」
「お金は」
 アンリは立ち上がっていた。
「盗まれたの?」
「それが、金目のものにはほとんど手がつけられておりません」
「では」
「帳面や書類を探った跡があります」

 胸の奥が、冷たく沈んだ。

 狙いは金ではない。
 店そのものでもない。


 母の手帳か、誓約の文につながる何かか、それとも自分の過去そのものか。

 レオンもすでに立ち上がっていた。

 その目が、紙片とアンリを一瞬ずつ見て、すぐに冷たい決断の色へ変わる。

「馬車を回せ」
「殿下?」
「私も行く」
「……はい!」

 護衛が走り出す。

 アンリは指先をぎゅっと握った。
 怒りもあった。でもそれ以上に、足元を奪われるような感覚が強かった。

 母の店だ。
 自分が守ってきた場所だ。

 王宮の中だけでは終わらなかった。
 向こうは、もうこちらの外側まで踏み込んできている。

 アンリは顔を上げた。

 追われるだけでは終わりたくない。
 そう思ったばかりだった。

 なら今度は、その言葉を本当に自分の足で証明しなければならない。

「行きます」
 アンリははっきり言った。
「今すぐ」

 怖かった。
 それでも、もう目を逸らしている時間はなかった。

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