「親友の兄と結婚したら、親友に夫を取られました。離婚します」

柴田はつみ

文字の大きさ
7 / 11

第一章「笑顔の妻」 7

翌朝、エルミラは球根を三つ持って温室に向かった。
昨夜、シオンが部屋を訪ねてきたとき、小さな木箱を置いていった。蓋に細かい彫刻が入った薄い箱で、中には球根が三つ、丁寧に布に包まれていた。横に小さな紙が添えてあった。

几帳面な字だった。
「温室の棚の左から四番目に、この品種のものがない。よければ育ててみてください。咲くと白に薄紫の模様が入ります。シオン」
名前だけで終わっていた。敬語もなく、前置きもなく、ただ名前だけ。この男が手紙を書き慣れていないことが、その締め方に出ていた。

リナに土と鉢を頼んで、今朝届いたものを持ってきた。素焼きの鉢に、腐葉土と砂を混ぜた水はけの良い土。エルミラが昨夜図鑑で調べた配合を、そのまま伝えた結果だ。
温室の棚の左から四番目。確認すると、そこだけ一つ空きがあった。他の棚は鉢が隙間なく並んでいるのに、その場所だけが最初から取ってあるように空いている。

土を鉢に入れて、球根の向きを確認した。芽が出る側を上にして、球根の直径の三倍ほどの深さに植え付ける。三つの球根を並べると、鉢の中に小さな秩序ができた。土をかぶせて、軽く押さえた。水を少量やって、空いていた場所に置いた。

他の鉢と並ぶと、そこが最初からこの鉢のための場所だったように見えた。
白に薄紫の模様。咲くのは来年の春だ。今は土の中に何もないように見えるが、球根の中には色が畳まれている。時間をかけて、ゆっくりと。

「奥様、今朝は早いですね」
背後からハンスの声がした。盆を持って立っている。今朝の飲み物はジンジャーの入ったもので、温室の土の匂いとは少し違う香りが漂ってきた。

「植えていたので」
「球根でございますか」
「シオン様からいただいたものを」
ハンスが棚の鉢を見た。その顔に、いつもの無表情とは少し違う何かがよぎった。
「旦那様がどなたかに球根をお渡しになったのは、初めてでございます」
エルミラはカップを受け取った。

「この温室の植物を、誰かに分けたことはなかったのですか」
「ございません」
ハンスが一度だけ棚全体を見渡した。
「旦那様にとってここは、言葉にならないものを置いておく場所だったと思います。それをどなたかと分けるということは」
そこで言葉を止めた。続きを言わない。言わないことが、続きを語っていた。

エルミラはジンジャーティーを一口飲んだ。温かさが喉を通って、胸の中まで届いた。
「ハンス」
「はい」
「シオン様が水仙の品種を増やし始めたのはいつですか」
ハンスが間を置いた。
「三年前の秋からでございます」
三年前の秋。エルミラがアンドル公爵家に嫁いだ季節と、一致した。

午後、イザベルが訪ねてきた。
今日は使用人を通じて事前に連絡があり、エルミラは客間で待っていた。カリナがこの時間に来ていないことを、エルミラは事前に確認していた。
イザベルは今日も整った身なりで、栗色の髪を丁寧に結い上げている。客間に入ってくると、エルミラに向かって丁寧に礼をした。

「お時間をいただいてありがとうございます」
「こちらこそ。夜会の日からお話を聞こうと思っていましたので」
二人は向かい合って座った。給仕が茶を運んで出ていった。

「カリナのことを話す前に、一つ確認させてください」
イザベルが茶に手をつけずに言った。
「奥様は、離婚をお考えですか」
「‥‥」

「考えています。ただ、一ヶ月の猶予を設けました」
「シオンに」
「ええ」
イザベルが小さく息を吐いた。安堵ともとれる息の抜き方だった。

「そうですか。では話す意味があります」
イザベルが茶を一口飲んだ。カップを置いて、エルミラを見た。

「カリナは十二歳のとき、心を病みました」
エルミラはその言葉を静かに受け取った。
「知っています。シオン様から聞きました」
イザベルが少し驚いた顔をした。

「シオンが話したのですか」
「三日前に」
「そうですか」
イザベルが少し考えた。何かを組み替えているような間だった。
「では私が話すのは、その続きです。シオンが話せなかった部分」
エルミラは背筋を正した。

「カリナが心を病んだとき、この公爵家で最初に気づいたのはシオンでした。それは本当のことです。シオンが支えたことで、カリナは少しずつ回復した。それも本当のことです」
イザベルが少し間を置いた。

「ただカリナは公爵夫人の連れ子ですから、この家に来たときは特に孤独だったと思います。血の繋がった家族が誰もいない場所に、十二歳で放り込まれたのですから」

エルミラはその言葉を、ごく自然に聞き流した。知っていることだったから。カリナが連れ子であることは、結婚前にカリナ本人から聞いていた。

だから気にも留めなかった。

読み飛ばすように次の言葉を待ちながら、エルミラはイザベルの続きを聞いた。
「シオンとは血が繋がっていない。でもシオンは、本当の兄のように接した。それがカリナにとって、唯一の拠り所だった」
エルミラはうなずいた。

その先の言葉を聞きながら、エルミラの中では何かが静かに形を変えつつあった。ただしその変化に、エルミラ自身はまだ気づいていない。

「奥様、カリナと初めて会ったのはいつですか」
「十四歳の夜会です。カリナが十二歳のとき」
「そのとき、カリナはどんな様子でしたか」

エルミラは記憶をたどった。十年前の夜会。壁際に一人で立っていたカリナ。話しかけたら、最初は驚いた顔をして、それから少しずつ笑うようになった。帰り際には、また会いたいと言っていた。

「人見知りそうにしていたので、話しかけました」
「その前のカリナを、奥様はご存知ですか」
「知りません」

「誰にも話しかけられなかった。笑い方がわからなくなっていた。夜会に連れ出されても、一言も話せずに帰る日が続いていた」
イザベルの声は淡々としていた。事実を並べる声だった。感情を排しているのではなく、感情があるからこそ制御している声だと、エルミラには聞こえた。

「奥様が話しかけた夜会から、カリナは変わり始めました。翌週から表情が戻って、翌月には笑えるようになった。シオンは自分が支えたから回復したと思っている。でも転機は」

「私と話したことだった」
エルミラは自分の声が、予想より平坦だと思った。
「カリナはその夜会の帰り、シオンに言ったそうです。エルミラという人に会った。何でもないように話しかけてくれた、壁際に一人でいた自分に、と」

エルミラは十年前の記憶を引き出した。壁際に立っていた少女。ドレスの色は薄い青だった。目が合ったとき、今にも逃げそうな顔をしていた。それで声をかけたのだ。逃げる前に。他に理由はなかった。

「シオンは、そのときからあなたのことを知っていた」
「カリナが話してくれたから」
「それだけではありません」
イザベルがエルミラを見た。

「シオンはその夜会に同席していました。遠くから見ていた。カリナに話しかけた人間が誰かを、シオンは自分の目で確認しています」

エルミラの手の中のカップが、少し重くなった気がした。
十年前。エルミラが十四歳で、シオンが十七歳。その夜会に、二人ともいた。エルミラはカリナしか見ていなかった。シオンがどこにいたか、まったく記憶にない。

「なぜ、そんな昔の話を」
「シオンがカリナを断れない理由を、理解していただくためです」
イザベルが茶を一口飲んだ。

「シオンがカリナを支え続けているのは、妹への責任感だけではない。カリナを回復させたのが自分ではなく、あなただという事実を、シオンは知っている。だからカリナがシオンを頼るたびに、シオンは断れない。断ったら、あのときの壁際の状態に戻るかもしれないという恐怖が、今も消えていないから」

「でもカリナは今、十分回復しています」
「シオンの中では、まだそう思えていない部分がある」
エルミラは客間の窓を見た。庭が見える。スノードロップが風に揺れている。

「カリナ自身は、そのことを知っているのですか。自分の回復の経緯を」
イザベルが少し間を置いた。何かを選んでいる間だとエルミラにはわかった。

「それは今日はここまでにします」
「今日は、とは」
「残りは、カリナ自身の口から聞いてあげてほしいから」
イザベルの目に、複雑な色が混ざった。知っていて言わない目だ。言えない理由があるのではなく、言うべき人間が他にいると判断している目だった。

「時間がかかるかもしれません」
「構いません。ただ」
イザベルが立ち上がった。
「奥様、一つだけ」
「はい」
「カリナはエルミラさんのことを、本当に大切に思っています。それだけは、何があっても変わらない事実です。これから何かを知ることになっても、その前提だけは持っていてください」

その言葉の輪郭が、エルミラには少し大きく聞こえた。これから何かを知ることになっても、という言い方は、まだ知らないことがあると言っているのと同じだ。

「わかりました」
イザベルが会釈して、客間を出ていった。
エルミラはしばらく、空になったカップを持ったまま動かなかった。

イザベルの言葉を、順番に並べ直していた。カリナの孤独。血の繋がらない家族の中で、シオンだけが拠り所だった。シオンとは血が繋がっていない。十二歳で来た。本当の兄のように接した。

血が繋がっていない。

その一文が、今頃になって少しだけ違う形で戻ってきた。
カリナがシオンを頼るとき、あの顔をする。笑顔の中に、何か別のものが混ざっているときがある。エルミラは三年間それを、妹が兄に甘える顔だと思っていた。
でも。

考えすぎかもしれない。
エルミラは立ち上がった。思考を途中で畳んだ。今日のところはここまでだと、自分に言い聞かせるように。
窓の外のスノードロップが、風に揺れて、また戻った。

夕食の席は、今夜も全員が揃った。
献立はエルミラが組んだものだが、今夜は珍しくシオンの好みを一品入れた。北方料理の系統で、シオンが外交で縁のある地域の味付けのものだ。
料理長のベルナールに伝えると、
「珍しい趣向ですね、奥様」と言った。

食事が始まって、シオンがその一品に気づいたのは三口目だった。
箸が止まった。皿を見た。それからエルミラを見た。エルミラは前を向いたまま、自分のスープを飲んだ。

テーブルの向かいでカリナが、シオンとエルミラを交互に見た。その顔に何かが走ったのを、今夜のエルミラは見逃さなかった。一瞬だけ、笑顔の下に別の何かが透けて見えた。

気のせいかもしれない。
エルミラはスープに視線を戻した。
「エルミラさん、今日は研究所の方と話したのですか」
レオナルドが声をかけてきた。

「昨日、図書室でアレクシス様とお話しする機会があって」
「ヴァール侯爵家の次男か。外交省でも優秀だって評判だな、シオン」
「そうですね」
シオンの返事が短かった。レオナルドが「なんだ素っ気ない」と笑った。

公爵が新聞から顔を上げた。
「エルミラ、植物研究所との話はどうなった」
「書類をいただきました。外部協力者の登録制度があるそうで」
「手続きは」
「当主の許可が必要とのことで、まだ」
公爵が少し考えた。テーブルが静かになった。公爵夫人がシオンを見た。シオンは皿の上を見ていた。

「持ってきなさい。署名する」
公爵夫人が「あなた」と声を上げた。公爵は構わず続けた。
「当主の許可が必要なら、俺が出す。それだけのことだ」

エルミラはテーブルの向かいを見た。シオンがエルミラを見ていた。驚いている顔ではなかった。何かを確かめているような顔で、その目の奥に昨夜と同じ色がある。
「ありがとうございます」
エルミラは公爵に向けて言った。

一ヶ月後に離婚が成立したとしても、この許可は残る。アンドル公爵の署名として。エルミラがこの家で初めて、自分だけのものとして得たものだった。

夕食が終わって各自が席を立つ中、エルミラが廊下に出たところでシオンが隣に来た。
「父上が許可を出すとは思っていませんでした」
小声だった。エルミラだけに届く声だった。
「私もです」
「でも、良かった」
エルミラは夫を見た。シオンが正面を向いたまま言った。

「あなたにここでやりたいことができた方が、いい」
その言葉がどういう意味で言われたのか、エルミラには測りかねた。一ヶ月後のことを念頭に置いているのか、それとも置いていないのか。

「庭を、少し歩いてもいいですか」
シオンが言った。
夜の庭に二人で出ることは今まで一度もなかった。エルミラが上着を取りに戻ろうとすると、シオンが先に自分のジャケットを脱いで差し出した。

「寒いので」
エルミラは一瞬止まってから、受け取った。シオンの上着は体温が残っていて、裏地が思ったより柔らかかった。

庭に出ると、夜気が頬に当たった。月が出ていて、庭の輪郭がうっすら見える。スノードロップが群れて咲いている一角が、月光の中で白く光っていた。
二人で並んで歩いた。石畳の小道を、特に目的地もなく。歩いていたら、自然とスノードロップの前に来た。

「今日、イザベルが来ていましたか」
シオンが花を見ながら言った。
「ええ」
「カリナのことを話しましたか」
「話してくれました。十年前の夜会のことまで」

シオンの足が止まった。エルミラも並んで止まった。月明かりの中で、シオンの横顔が見えた。
「知っていたのですか。私がカリナに話しかけたのを、見ていたことも」
「はい」
「なぜ言わなかったのですか」
シオンが月を見上げた。答えるまでに時間がかかった。

「言えば、あなたに借りがあることになる。カリナを救ってくれたことへの感謝を言葉にした瞬間に、俺はあなたに対して頭を下げなければならない立場になる」
「それが嫌だったのですか」
「嫌ではなかった。でも」

シオンが月から視線を下げた。スノードロップを見ている。
「感謝を伝えることと、好意を持っていることが、俺の中で区別できなかった。どちらかを言えば、もう一方も出てしまう気がして」

好意を持っていること。その言葉が夜気の中に溶けた。エルミラは前を向いたまま、その言葉を胸の中に置いた。形を確かめるように、しばらく持っていた。

「シオン様」
「はい」
「十年前の夜会で、私はカリナに話しかけました。理由は、逃げてしまいそうだったからです。他に理由はありませんでした」
「わかっています」

「それでもカリナは変わった。あなたが三年間支えたからです。私は一度話しかけただけで、それ以後のカリナを支えたのはあなただ。だから、借りはありません」
夜の庭が静かだった。遠くで風が木の梢を揺らす音がするだけで、それ以外は月明かりと白い花だけがある。

「エルミラさん」
「はい」
「俺は三年間、あなたに対して間違ったやり方をしていた」
「そうですね」

言葉に詰まらずに答えた。責める声ではなく、事実として答えた。シオンが少し目を細めた。予想より穏やかな返答だったのかもしれない。
「残りの二十七日間で、できることをします」
一ヶ月のうち、すでに三日が経った。シオンは日数を数えていた。残り二十七日と、正確に言った。

エルミラはスノードロップを見た。白い花が月光の中でわずかに揺れている。
「わかりました」
それだけ答えた。二人でまた歩き始めた。庭の小道を、月が動くほどではない時間、並んで歩いた。

石畳の終わりまで来て、屋敷の入り口が見えたところで、エルミラは上着を返そうとした。シオンが「このままで」と言った。
「中は暖かいので」
「少しだけ、このままで」
エルミラは返すのをやめた。

屋敷の中に入って、廊下が二手に分かれる場所でシオンに上着を返した。シオンが受け取って、一度だけエルミラを見た。
「おやすみなさい」
「おやすみなさい」
それぞれの方向に歩いていった。エルミラは自室に向かいながら、肩のあたりがまだ少し温かいことに気づいた。

自室の扉を閉めて、エルミラは鏡の前に立った。今夜は作り笑いの名残がない。それが自分の顔だと確認してから、リナを呼ぼうとして、少し止まった。
夕食のテーブルで、カリナの顔に何かが走った瞬間。

シオンとエルミラを交互に見て、一瞬だけ笑顔の下に透けて見えたもの。
血が繋がっていない。
十二歳で来た。
シオンだけが拠り所だった。

エルミラは鏡の中の自分を見た。答えはまだない。でも問いの形だけが、少しずつ輪郭を持ち始めていた。
一ヶ月のうちの、四日目が終わった。

あなたにおすすめの小説

真面目で裏切らない夫を信じていた私

クロユキ
恋愛
親族で決めた結婚をしたクレアは、騎士の夫アルフォートと擦れ違う日が続いていた。 真面目で女性の話しが無い夫を信じていた。 誤字脱字があります。 更新が不定期ですがよろしくお願いします。

完璧な夫に「好きになるな」と言われたので、愛されない妻になります

柴田はつみ
恋愛
結婚初夜、夫に「好きになるな」と言われました。 夫の隣には、馴れ馴れしい幼馴染令嬢。 ならば愛されない妻として身を引きます。 そう決めた途端、完璧な夫が私を手放してくれなくなりました。 侯爵令嬢エリシアは、王国一完璧な男と呼ばれる公爵レオンハルトに嫁いだ。 美貌、家柄、才能、礼儀。 何もかも完璧な夫。 けれど結婚初夜、彼は冷たい声で告げた。 「君は、私を好きになっては困る」 その言葉を聞いたエリシアは悟る。 この結婚は政略結婚。 夫の心には、自分ではない誰かがいるのだと。

実兄の婚約者に恋した貴方を、私はもう愛さない。その椅子、行方不明のお兄様のものですよね?

恋せよ恋
恋愛
「ヘンリエッタ侯爵令嬢が可哀想だと思わないのか!」 海難事故で行方不明の兄の婚約者にうつつを抜かし、 私を放置した上に、怒鳴りつける婚約者シモン。 14歳から積み上げた3年間の信頼は、 ヘンリエッタ様の「嘘泣き」でゴミ箱に捨てられた。 いいですよ、どうぞお二人でお幸せに。 でも忘れないで。あなたが今守っているその席は、 「生きて帰ってきた」お兄様のものなんですよ。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

私は不要とされた~一番近くにいたのは、誰だったのか~

ゆめ@マンドラゴラ
恋愛
彼の幼馴染は、いつも当然のように隣にいた。 「私が一番、彼のことを分かっている」 そう言い切る彼女の隣で、婚約者は何も言わない。 その沈黙が、すべての答えのように思えた。 だから私は、身を引いた。 ――はずだった。 一番近くにいたのは、本当に彼女だったのか。 「不要とされた」シリーズ第三弾。

【完結】愛されないあたしは全てを諦めようと思います

くろいゆき
恋愛
ネドヴェト侯爵家に生まれた四姉妹の末っ子アマーリエ(エミー)は元気でおしゃまな女の子。 美人で聡明な長女。 利発で活発な次女。 病弱で温和な三女。 兄妹同然に育った第二王子。 時に元気が良すぎて、怒られるアマーリエは誰からも愛されている。 誰もがそう思っていました。 サブタイトルが台詞ぽい時はアマーリエの一人称視点。 客観的なサブタイトル名の時は三人称視点やその他の視点になります。

もう二度と、あなたの傷を引き受けません ~死に戻った治癒師伯爵夫人は、冷血公爵の最愛になる~

ゆぷしろん
恋愛
傷を癒やすたび、自分が同じ傷を負う――そんな代償つきの治癒魔法を持つ伯爵夫人セレフィナは、夫を救い続けた末に裏切られ、罪を着せられて処刑される。 しかし死の直前、「もう二度と、あなたの傷は引き受けない」と誓った瞬間、彼女は夫の凱旋祝賀会の日へ死に戻っていた。 今度こそ搾取されるだけの人生を捨てると決めたセレフィナは、夫との治癒契約を破棄し、離縁を宣言。そんな彼女に手を差し伸べたのは、“冷血公爵”と恐れられるディートハルトだった。 彼が求めたのは命を削る奇跡ではなく、治癒師としての知識と才能。北辺境で広がる奇病を調査する中で、セレフィナは研究者として認められ、本当の居場所と誠実な愛を見つけていく。 搾取の愛を捨てた治癒師伯爵夫人が、自分の人生を取り戻し、冷血公爵の最愛になる死に戻り逆転ロマンス。

『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた

歩人
ファンタジー
侯爵家に嫁いで五年。ルチアは夫エミルの領地会計・社交・使用人管理を全て一人で担ってきた。だがエミルはいつも幼馴染のアリーチェを優先する。「アリーチェは体が弱いんだ、お前とは違う」——その言葉を百回聞いた日、ルチアは微笑んで離縁届に署名した。「ええ、私は丈夫ですから。どうぞ幼馴染様をお大事に」。翌朝、エミルが目にしたのは——税務報告の締切、領民からの陳情の山、そして紅茶の淹れ方すら知らない自分。三ヶ月後、かつて「地味な妻」と呼ばれたルチアは、辺境伯の財務顧問として辣腕を振るっていた。