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第19章|王命の鎖、弟の決意
王妃の朝食は、静かすぎて残酷だった。
銀のスプーンが皿に触れる音が、部屋の広さに反響してしまう。湯気の立つスープは温かいのに、胸の奥の冷えは動かない。
リーシャは窓の外の白薔薇を一度だけ見て、視線を落とした。
昨日、決めた。
――食事を、国王と一緒にするのを辞める。
――回廊も必要最低限にする。
――国王を探さない。目も合わせない。
――けれど、透明にならない。
矛盾している。
この王宮で生きるには、矛盾を抱えたまま立つしかない。
扉が控えめに叩かれた。
「王妃陛下。王弟殿下がお越しでございます」
リーシャは微笑を作ってから答えた。
「通して」
アドリアンが入ってくる。
プラチナブロンドの髪が室内の光を拾い、濃紺の軍服の金の飾りが小さく瞬いた。距離は保っているのに、存在感だけが近い。
「王妃陛下。……本日、宰相府の監査が離宮の施し倉へ入ります」
“監査”。
その言葉が、昨夜の帳簿の穴と、今日の悪意を繋げる。
リーシャは頷いた。声は平坦にする。
「一緒に行くわ」
アドリアンの目がわずかに揺れた。
止めたいのではない。危険を理解している揺れだ。
「……噂になります」
「分かってる」
リーシャは白い手袋の指先を揃えた。
揃えるほど、心が固くなる。
「でも一人で動けば、罪を着せられる。
“王妃は勝手に動いた”ってね。……なら、証人のいる場所で動く」
アドリアンは一拍置いて、深く礼をした。
「承知しました。私は“守る”のではなく、“同行”します」
言葉を選ぶ。
噂に形を与えないための言葉。
リーシャはその慎重さに、ほんの少し救われた。
救われるのが怖い。
けれど救われなければ、この城で息ができない。
回廊へ出ると、空気が変わった。
視線が増えている。足音が増えている。護衛が増えている。
「王妃陛下、こちらへ」
先導する近衛の声が短い。
短い声ほど、命令に聞こえる。
リーシャは歩いた。王妃の歩幅で。
その半歩後ろに、アドリアンがいる。触れない距離。けれど“共に歩く”という事実が、王宮では炎になる。
曲がり角を曲がった瞬間、冷たい気配が先に来た。
温度が奪われるような気配。
国王レオニス。
黒い礼装。硬い背筋。氷の瞳。
そしてその隣に、淡い金が揺れる。
セレス。
金髪と黄金のドレス。
彼女は国王の袖に自然に指を添えていた。躊躇いのない距離。幼馴染の特権。
リーシャの胸がきしんだ。
――二度と横に立たない。
そう誓ったのに、目の前で“隣”を見せつけられると、誓いが鎧ではなく傷になる。
リーシャは礼をした。深く、完璧に。
視線は上げない。目を合わせない。
「陛下」
国王の返事は短い頷きだけだった。
言葉はない。視線も長く留まらない。
けれど――視線が、リーシャの後ろへ刺さったのが分かった。
アドリアンへ。
「……王弟」
声が低い。低いほど危険だ。
セレスが柔らかく割り込む。
「陛下、王妃様は――」
国王は遮った。セレスではない。空気ごと弟へ向ける遮り方。
「何をしている」
アドリアンは一歩も近づかないまま礼をした。
「王妃陛下の公務に同行しております」
“同行”。
その言葉が余計に刺さる。
守ると言わなくても、絵ができるからだ。
国王の眉間が僅かに寄った。
「……必要ない」
その“必要ない”は、誰に向けた言葉なのか。
弟にか。妃にか。
どちらでも同じ痛みが残る。
リーシャは胸の奥で息を吐いた。
ここで言葉を増やすな。
言葉は編集される。悪意になる。
セレスが微笑んで国王の腕を軽く引いた。
「陛下、次のご挨拶が」
その仕草が、あまりにも自然で、リーシャの喉が痛くなる。
“私が引く”が許される距離。
“私が止める”が許される距離。
国王はセレスにだけ、わずかに声の温度を落とさずに答えた。
「……分かった」
そしてリーシャに向ける言葉は、ない。
リーシャは礼をして通り過ぎた。
視線は上げない。
上げれば、また意味を探してしまう。
背中に、国王の苛立ちの熱が刺さる気がした。
刺さるのに、振り向かない。
振り向けば負ける。
その日の午後、王弟アドリアンは執務棟へ呼ばれた。
重い扉が閉まる音が、国の鎖の音に似ている。
室内には宰相グレゴールがいた。穏やかな笑み、丁寧な礼。丁寧すぎて毒が見える。
国王レオニスは机の前に立っていた。
窓の外の白薔薇は眩しく、国王の目はその白さに似て冷たい。
「アドリアン」
名を呼ぶ声が短い。
「命令だ」
アドリアンは深く礼をした。
「はい。兄上」
国王の言葉は、躊躇いなく落ちた。
「王妃に近づくな」
室内の空気が凍る。
宰相の笑みがほんの僅か深くなる気配を、アドリアンは見ないふりをした。
「……王妃陛下を守るための御命令ですか」
国王は答えを選べなかった。
守るためだと言えば、自分が守れていないと認める。
疑っているからだと言えば、自分が小さいと露呈する。
だから鎧を被る。
「体面のためだ」
体面。
王宮の魔法の言葉。誰かの都合を正しさに変える。
アドリアンは一歩も動かないまま言った。
「体面のために、王妃を一人にするのですか」
国王の眉間が僅かに寄った。
苛立ちの奥に、別の色がある。
――焦り。奪われる恐怖。
「余計な口をきくな」
その言葉の冷たさが、逆に“痛み”を隠しているのが分かってしまう。
分かってしまうから、アドリアンは言葉を止められなかった。
宰相が柔らかく口を挟もうとした。
「王弟殿下――」
国王が手で止めた。
宰相の声を止めるほど、国王の内側が燃えている。
アドリアンは国王をまっすぐ見た。
王の目は冷たい。だがその冷たさの底で、何かが焼けている。
そして、言い切った。
「国王にはすでにセレス様が、います。
国王がセレス様を守っているのなら――
わたしは、王妃を守ります」
静かだった。
叫ばない。声を荒げない。
荒げた瞬間、“反逆”になる。だから静かに、確かに刺す。
国王の目が鋭く細まる。
「王妃は、俺の妃だ」
短い。
短いほど嫉妬が混じる。
アドリアンは一歩も近づかないまま答えた。
「ええ。だからこそです。
“守る”という言葉を、兄上は王妃に渡せていない。
だから王妃は、守られていると信じられない」
国王の喉が動いた。
言いたい言葉があるのに出ない喉の動き。
その沈黙を、宰相は嬉しそうに見ている。
国王は低く言った。
「命令だ。従え」
アドリアンは深く頭を下げた。
従う礼。従うしかない礼。
「……承知しました。兄上」
一拍置いて、最後に付け足す。
「ですが、王妃の命まで差し出すことはできません」
その言葉は、兄への忠誠ではなく、妃への誓約だった。
国王は背を向けた。
背中が冷たい。背中が遠い。
遠くしたのは自分なのに、胸が焼ける。
宰相が穏やかに言った。
「賢明なご判断です、陛下」
賢明。
その言葉が、この城で一番残酷だ。
騎士詰所へ向かう回廊で、アドリアンは一度だけ立ち止まった。
窓の外の白薔薇が揺れている。
あの香りはもう花ではない。妃を罪にするための合図になりつつある。
(近づけないなら、近づかないまま守る)
それが自分の選んだ道だ。
詰所の扉を押し開ける。鉄と革の匂い。
兵たちが礼をする。
アドリアンは余計な言葉を削ぎ落とし、低く命じた。
「ロランを呼べ」
ほどなくして、近衛護衛ロランが現れた。
真っ直ぐな目。嘘のつけない男。
アドリアンは短く言う。
「王妃を守れ。……目立つな」
ロランが頷く。
「命に代えても」
「命は捨てるな」
アドリアンの声が硬くなる。
命を捨てられたら、妃がまた自分を責める。妃はもう十分、自分を責めすぎている。
「噂が敵だ。言葉が敵だ。視線が敵だ。
それでも――王妃を一人にするな」
ロランは強く頷いた。
「承知しました」
アドリアンは最後に、低く付け足した。
「王妃に、余計な罪悪感を抱かせるな」
ロランの目が僅かに揺れ、そして深く礼をした。
「はい」
夕刻、リーシャは離宮へ向かう支度を整えながら、護衛がさらに増えていることに気づいた。
増えた護衛は、安心ではない。
“王命”の形をした圧だ。
アグネスが低く言った。
「……王弟殿下に、何か命が下ったようです」
リーシャは微笑を作った。
微笑がないと、ここで崩れる。
「そう」
短く返しながら、胸の奥だけが痛む。
(また、私のせいで)
その思いが浮かんで、リーシャはすぐ否定した。
否定しても消えない。罪悪感はこの城の空気みたいにまとわりつく。
けれど、リーシャはもう決めている。
“透明”にならない。
たとえ国王に言われても。
自分の足で立つ。
扉の外で、回廊の灯りが揺れた。
監視の影が動く。報告の影が動く。
噂は、また燃えるだろう。
でもリーシャは思った。
(燃えるなら、燃えればいい)
燃え尽きる前に、真実に辿り着かなければならない。
リーシャは白い手袋の指先を揃え、息を吸う。
王妃の微笑を固定する。
そして胸の奥で、ひとつだけ繰り返した。
(私は、自分で守る)
その決意の先に、次の夜が待っている。
名のない温度が届き、噂がそれを喰らい、国王の嫉妬がさらに裏目に出る夜が。
銀のスプーンが皿に触れる音が、部屋の広さに反響してしまう。湯気の立つスープは温かいのに、胸の奥の冷えは動かない。
リーシャは窓の外の白薔薇を一度だけ見て、視線を落とした。
昨日、決めた。
――食事を、国王と一緒にするのを辞める。
――回廊も必要最低限にする。
――国王を探さない。目も合わせない。
――けれど、透明にならない。
矛盾している。
この王宮で生きるには、矛盾を抱えたまま立つしかない。
扉が控えめに叩かれた。
「王妃陛下。王弟殿下がお越しでございます」
リーシャは微笑を作ってから答えた。
「通して」
アドリアンが入ってくる。
プラチナブロンドの髪が室内の光を拾い、濃紺の軍服の金の飾りが小さく瞬いた。距離は保っているのに、存在感だけが近い。
「王妃陛下。……本日、宰相府の監査が離宮の施し倉へ入ります」
“監査”。
その言葉が、昨夜の帳簿の穴と、今日の悪意を繋げる。
リーシャは頷いた。声は平坦にする。
「一緒に行くわ」
アドリアンの目がわずかに揺れた。
止めたいのではない。危険を理解している揺れだ。
「……噂になります」
「分かってる」
リーシャは白い手袋の指先を揃えた。
揃えるほど、心が固くなる。
「でも一人で動けば、罪を着せられる。
“王妃は勝手に動いた”ってね。……なら、証人のいる場所で動く」
アドリアンは一拍置いて、深く礼をした。
「承知しました。私は“守る”のではなく、“同行”します」
言葉を選ぶ。
噂に形を与えないための言葉。
リーシャはその慎重さに、ほんの少し救われた。
救われるのが怖い。
けれど救われなければ、この城で息ができない。
回廊へ出ると、空気が変わった。
視線が増えている。足音が増えている。護衛が増えている。
「王妃陛下、こちらへ」
先導する近衛の声が短い。
短い声ほど、命令に聞こえる。
リーシャは歩いた。王妃の歩幅で。
その半歩後ろに、アドリアンがいる。触れない距離。けれど“共に歩く”という事実が、王宮では炎になる。
曲がり角を曲がった瞬間、冷たい気配が先に来た。
温度が奪われるような気配。
国王レオニス。
黒い礼装。硬い背筋。氷の瞳。
そしてその隣に、淡い金が揺れる。
セレス。
金髪と黄金のドレス。
彼女は国王の袖に自然に指を添えていた。躊躇いのない距離。幼馴染の特権。
リーシャの胸がきしんだ。
――二度と横に立たない。
そう誓ったのに、目の前で“隣”を見せつけられると、誓いが鎧ではなく傷になる。
リーシャは礼をした。深く、完璧に。
視線は上げない。目を合わせない。
「陛下」
国王の返事は短い頷きだけだった。
言葉はない。視線も長く留まらない。
けれど――視線が、リーシャの後ろへ刺さったのが分かった。
アドリアンへ。
「……王弟」
声が低い。低いほど危険だ。
セレスが柔らかく割り込む。
「陛下、王妃様は――」
国王は遮った。セレスではない。空気ごと弟へ向ける遮り方。
「何をしている」
アドリアンは一歩も近づかないまま礼をした。
「王妃陛下の公務に同行しております」
“同行”。
その言葉が余計に刺さる。
守ると言わなくても、絵ができるからだ。
国王の眉間が僅かに寄った。
「……必要ない」
その“必要ない”は、誰に向けた言葉なのか。
弟にか。妃にか。
どちらでも同じ痛みが残る。
リーシャは胸の奥で息を吐いた。
ここで言葉を増やすな。
言葉は編集される。悪意になる。
セレスが微笑んで国王の腕を軽く引いた。
「陛下、次のご挨拶が」
その仕草が、あまりにも自然で、リーシャの喉が痛くなる。
“私が引く”が許される距離。
“私が止める”が許される距離。
国王はセレスにだけ、わずかに声の温度を落とさずに答えた。
「……分かった」
そしてリーシャに向ける言葉は、ない。
リーシャは礼をして通り過ぎた。
視線は上げない。
上げれば、また意味を探してしまう。
背中に、国王の苛立ちの熱が刺さる気がした。
刺さるのに、振り向かない。
振り向けば負ける。
その日の午後、王弟アドリアンは執務棟へ呼ばれた。
重い扉が閉まる音が、国の鎖の音に似ている。
室内には宰相グレゴールがいた。穏やかな笑み、丁寧な礼。丁寧すぎて毒が見える。
国王レオニスは机の前に立っていた。
窓の外の白薔薇は眩しく、国王の目はその白さに似て冷たい。
「アドリアン」
名を呼ぶ声が短い。
「命令だ」
アドリアンは深く礼をした。
「はい。兄上」
国王の言葉は、躊躇いなく落ちた。
「王妃に近づくな」
室内の空気が凍る。
宰相の笑みがほんの僅か深くなる気配を、アドリアンは見ないふりをした。
「……王妃陛下を守るための御命令ですか」
国王は答えを選べなかった。
守るためだと言えば、自分が守れていないと認める。
疑っているからだと言えば、自分が小さいと露呈する。
だから鎧を被る。
「体面のためだ」
体面。
王宮の魔法の言葉。誰かの都合を正しさに変える。
アドリアンは一歩も動かないまま言った。
「体面のために、王妃を一人にするのですか」
国王の眉間が僅かに寄った。
苛立ちの奥に、別の色がある。
――焦り。奪われる恐怖。
「余計な口をきくな」
その言葉の冷たさが、逆に“痛み”を隠しているのが分かってしまう。
分かってしまうから、アドリアンは言葉を止められなかった。
宰相が柔らかく口を挟もうとした。
「王弟殿下――」
国王が手で止めた。
宰相の声を止めるほど、国王の内側が燃えている。
アドリアンは国王をまっすぐ見た。
王の目は冷たい。だがその冷たさの底で、何かが焼けている。
そして、言い切った。
「国王にはすでにセレス様が、います。
国王がセレス様を守っているのなら――
わたしは、王妃を守ります」
静かだった。
叫ばない。声を荒げない。
荒げた瞬間、“反逆”になる。だから静かに、確かに刺す。
国王の目が鋭く細まる。
「王妃は、俺の妃だ」
短い。
短いほど嫉妬が混じる。
アドリアンは一歩も近づかないまま答えた。
「ええ。だからこそです。
“守る”という言葉を、兄上は王妃に渡せていない。
だから王妃は、守られていると信じられない」
国王の喉が動いた。
言いたい言葉があるのに出ない喉の動き。
その沈黙を、宰相は嬉しそうに見ている。
国王は低く言った。
「命令だ。従え」
アドリアンは深く頭を下げた。
従う礼。従うしかない礼。
「……承知しました。兄上」
一拍置いて、最後に付け足す。
「ですが、王妃の命まで差し出すことはできません」
その言葉は、兄への忠誠ではなく、妃への誓約だった。
国王は背を向けた。
背中が冷たい。背中が遠い。
遠くしたのは自分なのに、胸が焼ける。
宰相が穏やかに言った。
「賢明なご判断です、陛下」
賢明。
その言葉が、この城で一番残酷だ。
騎士詰所へ向かう回廊で、アドリアンは一度だけ立ち止まった。
窓の外の白薔薇が揺れている。
あの香りはもう花ではない。妃を罪にするための合図になりつつある。
(近づけないなら、近づかないまま守る)
それが自分の選んだ道だ。
詰所の扉を押し開ける。鉄と革の匂い。
兵たちが礼をする。
アドリアンは余計な言葉を削ぎ落とし、低く命じた。
「ロランを呼べ」
ほどなくして、近衛護衛ロランが現れた。
真っ直ぐな目。嘘のつけない男。
アドリアンは短く言う。
「王妃を守れ。……目立つな」
ロランが頷く。
「命に代えても」
「命は捨てるな」
アドリアンの声が硬くなる。
命を捨てられたら、妃がまた自分を責める。妃はもう十分、自分を責めすぎている。
「噂が敵だ。言葉が敵だ。視線が敵だ。
それでも――王妃を一人にするな」
ロランは強く頷いた。
「承知しました」
アドリアンは最後に、低く付け足した。
「王妃に、余計な罪悪感を抱かせるな」
ロランの目が僅かに揺れ、そして深く礼をした。
「はい」
夕刻、リーシャは離宮へ向かう支度を整えながら、護衛がさらに増えていることに気づいた。
増えた護衛は、安心ではない。
“王命”の形をした圧だ。
アグネスが低く言った。
「……王弟殿下に、何か命が下ったようです」
リーシャは微笑を作った。
微笑がないと、ここで崩れる。
「そう」
短く返しながら、胸の奥だけが痛む。
(また、私のせいで)
その思いが浮かんで、リーシャはすぐ否定した。
否定しても消えない。罪悪感はこの城の空気みたいにまとわりつく。
けれど、リーシャはもう決めている。
“透明”にならない。
たとえ国王に言われても。
自分の足で立つ。
扉の外で、回廊の灯りが揺れた。
監視の影が動く。報告の影が動く。
噂は、また燃えるだろう。
でもリーシャは思った。
(燃えるなら、燃えればいい)
燃え尽きる前に、真実に辿り着かなければならない。
リーシャは白い手袋の指先を揃え、息を吸う。
王妃の微笑を固定する。
そして胸の奥で、ひとつだけ繰り返した。
(私は、自分で守る)
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