氷の王妃は跪かない ―褥(しとね)を拒んだ私への、それは復讐ですか?―

柴田はつみ

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エピローグ:常春の北塔

一年後。
 かつて「呪われた塔」と呼ばれた北塔は、いまや王国で最も美しい温室、そして広大な書庫へと生まれ変わっていた。
 エルフレイデは、かつて自分が書類を燃やしたあの中庭で、幼い苗木に水をやっていた。


 背後から、王の執務を終えたギルベルトが、穏やかな足取りで歩み寄る。
「エル、またここで花をいじっているのか。ヴィオラたちが心配していたぞ、『王妃様が泥に触れていらっしゃる』と」

「あら、土の匂いは、冷たい石畳よりもずっと安心しますの。……見て、ギルベルト様。あんなに痩せていた苗木に、蕾がつきましたわ」

 指差す先には、小さな、だが力強い花の蕾があった。
 ギルベルトはその隣に立ち、彼女の肩を抱き寄せる。

「ああ、美しいな。……私たちのようだ」
「ふふ、まあ。貴方はいつから、そんなに詩的なことを仰るようになったの?」
「お前に恋をしてからだ、エルフレイデ」
 二人は顔を見合わせ、幸せな笑みを零した。

 憎しみから始まり、絶望を経て辿り着いた、この穏やかな朝。
 二人の物語は、これからも続いていく。
 それは、どんな毒よりも甘く、どんな剣よりも強い、真実の愛の物語として。

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