女はそれを我慢できない

奈月沙耶

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第6話 上品な男

6-3.食べ方

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 そんな私の不穏な視線に感付いたのか、圭吾くんがこっちを見た。
 ちょっとやそっとの目線なら気にならないんだろうな、イケメンは。

「お待たせしました」
「いいえ」
 圭吾くんは、先に立ってどんどんワイン食堂に入っていく。
 まだ昼前だから、奥の席に家族連れのお客がいるだけだった。
「ここってランプステーキが売りだよね」
「お肉好きですか?」
「大好き」

 ステーキをシェアすることにして、グリッシーニ付きの牡蠣のアヒージョも注文する。
「これだと野菜が足りないね」
 圭吾くんはシェフおススメサラダと、ドリンクメニューを開いてワインをボトルで頼んだ。
 店員が離れた後で、はっとした様子で私を見る。
「勝手に選んで良かった?」
「いいよ。どうもありがとう」
 女が我を出すのはがっちり仲良くなってから。最初はリードしてもらうのが理想だ。この子は間違いなくモテる。中には残念なイケメンもいるからね。

「飲んじゃって大丈夫?」
「ウチ歩いて行ける距離なんで」
「駅近って家賃高くない?」
 一人暮らしなことは昨夜ちらりと聞いていた。
「職場が半分出してくれるんです。ほら、あそこ」

 ウィンドウ越しに通りの向こうを指差す。ここは通り沿いのビルの二階だから、少し先の交差点の角まで見渡せる。
 圭吾くんが指差してるのは、角のこじゃれたカフェだった。

「カフェの店員さん?」
「そう。オーナーがサークルの先輩っだった人で、結構優遇してもらってる」
 なるほど。イケメン店員がいるといないじゃまったく違うのだろうな。
 それに何より圭吾くんは品が良い。私が引かれたのはそこだった。

 今こうやって一緒に食事しててもそう。圭吾くんは食べ方がとてもキレイ。
 昨日の居酒屋での箸の持ち方は完璧だったし、目の前でナイフとフォークを使っていても、音を立てない。
 上品に美しく肉を口に運ぶ。中性的に整った容貌と相まって、どっかの国のお貴族様みたいだ。

 気にする人は気にするし、気にならない人は気にならないかもしれない。私はどちらかと言えば気になる。付き合って一緒に食事する機会が増えるなら尚更だ。
 食事のマナーって案外、大事。食べ方が汚い人は大分評価がマイナスされる。物を噛むのに音を立てる人は最悪だ。一緒に食事したくない。
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