女はそれを我慢できない

奈月沙耶

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第16話 探る男

16-2.ゲームかっ

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「なにやってるの?」
「友だちに誘われてさ」
 ちらっと圭吾くんは横を見る。今静香と話しているのが圭吾くんのオトモダチらしい。

「紗紀さんこそ、こんなとこ漁りに来なくてもオレはいつでも空いてるのに」
「お呼びじゃないよ」
「冷たいなあ。なんならここで友だちから始めようよ」
 うまいこと言うなあ。ホント男ってのは口が減らない。
「元カレと友だちになるとかって、私はない」
「そうだよね。オレも狙うなら恋人だし」
 ははは。イケメンはやっぱり自信たっぷりだ。

 時間がきて男性が席を移動する。圭吾くんは今度は品よく静香を相手に世間話をしている。ソツのない子だ。断ち切るのは寂しいけれど、やっぱり私は引っ張れない。

 その後のフリータイムでは小振りのケーキとドリンクを飲みながら、近寄ってきた人たちを相手に話をした。
 私はもう疲れてしまって口数が少なくなったけど、静香はほどよく相手をしていた。

 人の固まりをすいすい縫って近寄ってきたスタッフさんにさりげなくカードを渡される。何も言わずにすっと離れてしまったから何かと思う。
 見ると、名前と番号、今度ゆっくりお話したいです連絡ください、みたいな一言が記されたカードが三枚。
 なんじゃこりゃ。同じものを手渡された静香がやっぱり苦笑いしていた。



「疲れたねえ」
「あんな本気でひとりひとりと話さなきゃならないとは思わなかった」
 腹ペコでやって来たファミレスでハンバーグに食いつきながら静香とふたりだけの反省会をする。

「ちょっと驚きだけどさ、出会いの場としては悪くないよね」
 それには私も同意する。なにしろ、いろいろな人がいた。
 そして何よりお酒が入らないのがいい。合コンだとお酒が入ることでノリが軽くもなるし本当の人格も見えにくい。
 本気で出会いを求める人には、ああいう催しはありなんだろうな。

「ちょっと私はもうないなあ。疲れるよ」
「初めてなんだからしょうがないよ。今日はあくまで様子見。こういうのは二度目からが勝負でしょ? まずは的確に一人一人の特徴を捉えて把握することが肝心だよね。連絡先貰ったところで誰かわからないんじゃしょうがないもん。最後のカップル成立ってヤツもさ、こうやって直接アプローチできる手段があるなら、そこに拘らずに自分の好みで的を絞ればいいんだよね。それでフリータイムをいかに活用するかが……」

 何事も理屈で合理的に攻める静香は、攻略することが目的になってしまってるようだ。ゲームかっ。……まあ。似たようなものだ。
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