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「そのままでいて」
 動こうとしたところを止められて座ったまま待っているとアコが近づいてきた。
 俯き加減になったまま膝小僧を椅子の端にかけて向かい合わせに由基の膝の上に座る。肩に腕をまわしてぎゅうっと抱き着かれると、浴衣越しにもほかほかと温まった体温とお湯のにおいを感じた。

「ねえ、ヨッシー。アコのこと好き?」
「うん」
 耳元でのささやきに即答すると、アコはえへへと笑って由基と顔を見合わせた。
「アコもヨッシーが好き」
 照れくさそうにまた目を伏せて顔を傾ける。くちびるが由基のそれに触れて離れた。少し角度を変えてもう一度。

 触れたときよりも離れるときの方が軽くやわらかな感触をより強く感じて、しばらくは楽しんでいられたが何度もそれをされると、次に触れる期待と離れるわびしさでもどかしくなってきた。
 アコの背中に手を回して姿勢を変えようとしたとき、くちびるが吸い付いて舌先が合図してきた。先を越された。ちょっと悔しい思いながらも応えて口を開ける。
 唇の内側を軽く探った舌はすぐに離れた。少し心配になって尋ねてしまう。
「酒臭い?」
「んーん。コーヒーの味がする」

 アコはすぐにまた上からくちづけてきた。今度は最初からがっつりディープに。同時に襟元から入り込んだ小さな手のひらが熱かった。肩先から鎖骨まで撫でまわす手つきは、いつも無邪気に腕にまとわりついてくるアコの手と同じとは思えない。

 息が弾みそうになって我慢する。アコが吐息をこぼすのと同じタイミングでどうにか息をついた。にじり寄った細い腰が、熱がこもりはじめた部分にあたる。具合を確認されてるのか?
 だったら、とこっちから腕を回そうとすると逃げるように先にアコが体を起こした。椅子から膝を下ろしていったん立ち上がってから、由基の脚の間にひざまずく。
「アコにまかせて」
 いつものようにえへへと笑いながらも、上目遣いの瞳はいたずらっぽさよりも熱っぽさで潤んでいて、既に酔いとは別の心地よさに呑まれ始めていた由基は彼女に為されるがままになったのだった。

「由基はどこが弱いの?」
 取り出したモノの先端をさわさわと指先で撫でまわされ、それだけでむくりとなった。久し振りすぎて、弱点とかまるで覚えがない。
 返事ができないままだったが、アコは気にせず根元を手のひらで包んで軽く上下させ、立ち上がった裏筋をゆっくりと舐めあげた。舌先がカリの裏側までくるとちろちろとしつこくそこを刺激する。誰もが弱いだろうそんなところを責められてぐうの音も出なくなる。
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