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4.非童貞の遊び人!
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「いやいや、うちの学食リニューアルしてからまだ行ってないんだよね。ちょうどいいから行ってくる。二人とも授業には遅れないようにね」
教授は顎を触りながらニコニコ笑いながら、
部屋を出る前にこう呟いた、
「生徒に慕われるのは良い事だよ!めいいっぱい面倒見てやりなさいね」
「…はい」
まさか藤野に迫られているんです!など言えず、俺はそう返事をするしかなかった。
二人きりになると、藤野は途端に砕けた口調になり、弁当を突きながら話す。
「あー、びっくりした。まさか教授がいるとは」
「そんなに恐れなくても。湯浅教授は優しいから怖く無いだろ?」
「怖くなんかないよ。ただ塩谷先生とイチャイチャ出来ないなあって思って焦った」
「イチャイチャしなくていいから!」
俺は食べ終わった弁当箱をしまいながらそう言うと、藤野はへえとニヤニヤしていた。
「でも気持ちいいんでしょ?」
「生理現象!ほら、よくあるだろ、触れられたら勝手に勃って誤解を生むようなストーリーが!」
「大抵その二人は結ばれますよねえ」
「俺らは結ばれません!」
もうこうなるとどっちが年上なんだか…。
そもそも藤野はどうして俺にちょっかい出すようになってきたのかさっぱり分からない。いつか聞いてやろうと思っているのだか、そうしたら『気になってきたの?』とつけあがるのは目に見えている。
こいつは非童貞の遊び人だ!
「もお釣れないなあ」
そう言いながら、キスをしてくる。どんなに拒否しても藤野が迫ってきて、こうしてキスをしてきては体に触れてくるのだ。
「やめ…んんっ」
童貞にこの刺激は強すぎる。
****
そんな関係が三ヶ月ほど続き、春を迎えた。二年生になった藤野は相変わらず俺につきまとってきている。『准教授と仲のいい真面目な生徒』のふりをし続けながら体に触れてくるのだ。幸い、まだ挿入まではいかないものの初めに藤野が言っていた『処女喪失心理学』を教えろという言葉からするとなし崩しになったらきっと俺はアイツに抱かれてしまうのだろう。いや、それだけは阻止しなければ!
心理学を学ぶため、だなんてもっともらしいことを言っているけれど、アイツはきっとやりたいだけなんだ。
「塩谷先生、このコミカライズ読んだ?凄いですよ、新人作家さんなのに今度ドラマ化までするんだって」
「ああ、これ心理描写がピカイチだよな。切ない気持ちがよく分かる。お前が目指しているのも切ない系だっけ」
「うん。でもマルチに書いていきたいな。いつか作家になったらお祝いして」
そう目を輝かして笑う藤野。作家になることを目指し夢を語る藤野と体に触れてくる藤野。どちらも彼なのに、まるで別人のようで、いまだに慣れない。
「しおっぺ」
第3時限の教室へ移動している時に、前方から声をかけてきたのは土井と佐々木。
「しおっぺはやめろって言ってるだろ」
廊下で立ち止まり、俺がそう言うとごめーん、と反省するような気がない返事が返ってくる。
「それよりしおっぺ。ライバル出現よ!」
「は?」
突然の土井の言葉に俺が眉を顰めていると、佐々木が説明してくれた。
「藤野くんの幼馴染が入学してきてね。一つ年下らしいんだけど、この子がまあ、藤野くんにべったりなの。私たちに仲良しアピールしてきてさあ」
「そうそう!ここ最近、授業はいっつも二人隣同士だもんねえ」
そう言えば最近、俺の授業の時、相変わらず最前列にいる藤野の横に男子生徒が座っていたっけ。そいつもよく見かけるようになっていたなあ。それに言われてみれば最近、藤野が移動中に顔を見かけることも少なくなっていたような?あまり気にしていなかったけれど。
「だからね、『藤野×塩谷推しの会』から新しい派閥が生まれつつあって」
「ちょい待て。なんだその推しの会」
しまった、と慌てて口を手で塞ぐ土井。そういう噂があるのは知っているがまだ続いていたとは。
「だからしおっぺ、負けないで頑張ってね!」
佐々木と土井は頷きながらファイティングポーズをして、そのまま先に行ってしまった。俺はあんぐりと口を開けたまま、立ち尽くしていた。
教授は顎を触りながらニコニコ笑いながら、
部屋を出る前にこう呟いた、
「生徒に慕われるのは良い事だよ!めいいっぱい面倒見てやりなさいね」
「…はい」
まさか藤野に迫られているんです!など言えず、俺はそう返事をするしかなかった。
二人きりになると、藤野は途端に砕けた口調になり、弁当を突きながら話す。
「あー、びっくりした。まさか教授がいるとは」
「そんなに恐れなくても。湯浅教授は優しいから怖く無いだろ?」
「怖くなんかないよ。ただ塩谷先生とイチャイチャ出来ないなあって思って焦った」
「イチャイチャしなくていいから!」
俺は食べ終わった弁当箱をしまいながらそう言うと、藤野はへえとニヤニヤしていた。
「でも気持ちいいんでしょ?」
「生理現象!ほら、よくあるだろ、触れられたら勝手に勃って誤解を生むようなストーリーが!」
「大抵その二人は結ばれますよねえ」
「俺らは結ばれません!」
もうこうなるとどっちが年上なんだか…。
そもそも藤野はどうして俺にちょっかい出すようになってきたのかさっぱり分からない。いつか聞いてやろうと思っているのだか、そうしたら『気になってきたの?』とつけあがるのは目に見えている。
こいつは非童貞の遊び人だ!
「もお釣れないなあ」
そう言いながら、キスをしてくる。どんなに拒否しても藤野が迫ってきて、こうしてキスをしてきては体に触れてくるのだ。
「やめ…んんっ」
童貞にこの刺激は強すぎる。
****
そんな関係が三ヶ月ほど続き、春を迎えた。二年生になった藤野は相変わらず俺につきまとってきている。『准教授と仲のいい真面目な生徒』のふりをし続けながら体に触れてくるのだ。幸い、まだ挿入まではいかないものの初めに藤野が言っていた『処女喪失心理学』を教えろという言葉からするとなし崩しになったらきっと俺はアイツに抱かれてしまうのだろう。いや、それだけは阻止しなければ!
心理学を学ぶため、だなんてもっともらしいことを言っているけれど、アイツはきっとやりたいだけなんだ。
「塩谷先生、このコミカライズ読んだ?凄いですよ、新人作家さんなのに今度ドラマ化までするんだって」
「ああ、これ心理描写がピカイチだよな。切ない気持ちがよく分かる。お前が目指しているのも切ない系だっけ」
「うん。でもマルチに書いていきたいな。いつか作家になったらお祝いして」
そう目を輝かして笑う藤野。作家になることを目指し夢を語る藤野と体に触れてくる藤野。どちらも彼なのに、まるで別人のようで、いまだに慣れない。
「しおっぺ」
第3時限の教室へ移動している時に、前方から声をかけてきたのは土井と佐々木。
「しおっぺはやめろって言ってるだろ」
廊下で立ち止まり、俺がそう言うとごめーん、と反省するような気がない返事が返ってくる。
「それよりしおっぺ。ライバル出現よ!」
「は?」
突然の土井の言葉に俺が眉を顰めていると、佐々木が説明してくれた。
「藤野くんの幼馴染が入学してきてね。一つ年下らしいんだけど、この子がまあ、藤野くんにべったりなの。私たちに仲良しアピールしてきてさあ」
「そうそう!ここ最近、授業はいっつも二人隣同士だもんねえ」
そう言えば最近、俺の授業の時、相変わらず最前列にいる藤野の横に男子生徒が座っていたっけ。そいつもよく見かけるようになっていたなあ。それに言われてみれば最近、藤野が移動中に顔を見かけることも少なくなっていたような?あまり気にしていなかったけれど。
「だからね、『藤野×塩谷推しの会』から新しい派閥が生まれつつあって」
「ちょい待て。なんだその推しの会」
しまった、と慌てて口を手で塞ぐ土井。そういう噂があるのは知っているがまだ続いていたとは。
「だからしおっぺ、負けないで頑張ってね!」
佐々木と土井は頷きながらファイティングポーズをして、そのまま先に行ってしまった。俺はあんぐりと口を開けたまま、立ち尽くしていた。
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