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天使は甘いキスが好き
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「行ってらっしゃい、気を付けてね」
「けいにいちゃん…」
恵は伊吹の声を振り切る様に、外へ出た。十和子は伊吹を連れてリビングに戻ると、食事の席に着かせて自分は台所で食器洗いをし始める。
「ちゃんとニンジン食べるのよ? 伊吹」
「…うん…」
フォークで突いていたニンジンを、意を決して口に放り込むと、牛乳と一緒に飲み込んだ。
学校に近付くにつれて、生徒達のあいさつが聞こえる。
「おす、なんだよ朝から沈んだ顔して」
小学校からの腐れ縁で、同じクラスの平片裕太が恵の顔を覗き込む。恵は長い睫毛に茶色い瞳。可愛い顔に反して言葉はガサツ。それでも、裏表の無い恵の優しい性格は、クラスの人気者だ。平片は恵の親友だと自慢しながら、この男にしておくには勿体ないと、嘆く男子達の恵のファンのひとりだった。
「…おはよう」
ーーーご、ご機嫌斜め?。
平片は眉根を上げて、恵の前席の椅子を引いて腰を下ろした。いつも天使の微笑を無駄に放っていた王子様は、今日はご機嫌が悪い。当の恵も、クラスメイトの反応に苛付いていた。恵は平片を一瞥して溜息を吐く。恵は仕方なく女子達に向かって微笑んだ。恵の動作に女子達が、逐一チェックして騒ぎ出す。
ーーーすげぇ反応。
恵は鞄の中から教科書等を出して、机の中にしまい込むとチラと平片を一瞥。平片は野球部のキャプテンで、一汗掻いた後らしく、肩にタオルを掛けていた。朝練を欠かさない熱血スポーツマンだ。鍛え上げられた筋肉は、制服に着替えたその下に隠されているのが判る。恵から云わせれば、女性徒の目線は常に平片を追っていた。男子達からも人気があるこの男は、毎日厭きもせずに恵に構ってくる。 今時の女生徒達は、流行のホモとやらに妄想を膨らませ、『恵君と裕太君を見守る会』なる物が、いつの間にやら結成されていた。
「別に、ちょっとな」
「なんだよ気になるな。あ、そうだもしかしてアレ、溜まってんのか?」
妙な言葉に恵はキョトンとする。傍にいた女生徒がキャーと頬を染めて、騒ぎ出す。【アレ】で何か解ってポッと顔が熱くなった。
「細川、顔真っ赤だぞ」
からかい混じりに参戦して来た他の友人達が二人、恵の背をバンバン叩く。恵はあっちへ行けと手で追い払おうとするが、聞く訳が無い。この連中も小学校の頃からの腐れ縁で、よく一緒に騒ぐ連中だ。
「あのさぁ。週末に俺の家でパーティしようぜ? その日親が旅行で居ないんだ」
「すげぇ! 泊まりか。久しぶりだな。やっぱアレもおまけ付き?」
恵は訳が判らず首を傾げた。
ーーーおまけ???
「何々? 泊まり? うちらも入れてよ」
女生徒が三人割って入る。平片は両手でバッテンの動作をした。
「だ~め。女子禁止」
女子達三人がブーイングする。
「え~なんで? 恵君も行くんでしょ? まぜてよ!」
「男の子限定」
他の男子がニヤリと笑う。そこで女生徒達は気付いたのか、頬を染めて「すけべ」と云うと、そそくさと立ち去った。
ーーーなんだぁ?
恵は眉根を寄せて平片の腕を引っ張る。
「なんだ? 何か隠してるな?」
ーーーおいおい、女子が気付いたのに、なんでお前さんは気付かないのか?
天然なのか純粋なのか。どちらでも当て嵌まる恵を可愛い等と、云ったらその瞬間恵に殴られそうだ。
「それはな」
平片は云おうか云うまいか暫し考える。平片同様、他の二人も顔を見合わせた。恵は平片の家に泊まった事が無いので、取り合えず訊く。毎回誘われるのだが、伊吹がついて来たがるので、友人に迷惑だろうと誘いを断っていたのだ。どこまでも伊吹思いの【お兄ちゃん】なのだ。伊吹の大きなウルルン瞳にノックダウンされて、毎回玄関で諦めて、携帯で平片に侘びの連絡を入れていた。
「今回も伊吹がついて行くと云いそうだな」
恵は申し訳ないと云う。
「なんとか出て来れないか? 来年高校だろ? なんとか十和子さんに頼んでさ」
中学最後の思い出にと、平片は珍しく引かなかった。
「訊くだけ訊いてはみるけど…それより、さっきのおまけってなんだよ」
男が三人眼を合わせて、恵を教室の隅に連れて行く。恵は訳が解らず慌てた。
「なんだ? え?」
平片は恵の両肩に手を置く。
「恵君君は男だ」
平片が云う。その顔は気味が悪いほどにニヤついていた。
「けいにいちゃん…」
恵は伊吹の声を振り切る様に、外へ出た。十和子は伊吹を連れてリビングに戻ると、食事の席に着かせて自分は台所で食器洗いをし始める。
「ちゃんとニンジン食べるのよ? 伊吹」
「…うん…」
フォークで突いていたニンジンを、意を決して口に放り込むと、牛乳と一緒に飲み込んだ。
学校に近付くにつれて、生徒達のあいさつが聞こえる。
「おす、なんだよ朝から沈んだ顔して」
小学校からの腐れ縁で、同じクラスの平片裕太が恵の顔を覗き込む。恵は長い睫毛に茶色い瞳。可愛い顔に反して言葉はガサツ。それでも、裏表の無い恵の優しい性格は、クラスの人気者だ。平片は恵の親友だと自慢しながら、この男にしておくには勿体ないと、嘆く男子達の恵のファンのひとりだった。
「…おはよう」
ーーーご、ご機嫌斜め?。
平片は眉根を上げて、恵の前席の椅子を引いて腰を下ろした。いつも天使の微笑を無駄に放っていた王子様は、今日はご機嫌が悪い。当の恵も、クラスメイトの反応に苛付いていた。恵は平片を一瞥して溜息を吐く。恵は仕方なく女子達に向かって微笑んだ。恵の動作に女子達が、逐一チェックして騒ぎ出す。
ーーーすげぇ反応。
恵は鞄の中から教科書等を出して、机の中にしまい込むとチラと平片を一瞥。平片は野球部のキャプテンで、一汗掻いた後らしく、肩にタオルを掛けていた。朝練を欠かさない熱血スポーツマンだ。鍛え上げられた筋肉は、制服に着替えたその下に隠されているのが判る。恵から云わせれば、女性徒の目線は常に平片を追っていた。男子達からも人気があるこの男は、毎日厭きもせずに恵に構ってくる。 今時の女生徒達は、流行のホモとやらに妄想を膨らませ、『恵君と裕太君を見守る会』なる物が、いつの間にやら結成されていた。
「別に、ちょっとな」
「なんだよ気になるな。あ、そうだもしかしてアレ、溜まってんのか?」
妙な言葉に恵はキョトンとする。傍にいた女生徒がキャーと頬を染めて、騒ぎ出す。【アレ】で何か解ってポッと顔が熱くなった。
「細川、顔真っ赤だぞ」
からかい混じりに参戦して来た他の友人達が二人、恵の背をバンバン叩く。恵はあっちへ行けと手で追い払おうとするが、聞く訳が無い。この連中も小学校の頃からの腐れ縁で、よく一緒に騒ぐ連中だ。
「あのさぁ。週末に俺の家でパーティしようぜ? その日親が旅行で居ないんだ」
「すげぇ! 泊まりか。久しぶりだな。やっぱアレもおまけ付き?」
恵は訳が判らず首を傾げた。
ーーーおまけ???
「何々? 泊まり? うちらも入れてよ」
女生徒が三人割って入る。平片は両手でバッテンの動作をした。
「だ~め。女子禁止」
女子達三人がブーイングする。
「え~なんで? 恵君も行くんでしょ? まぜてよ!」
「男の子限定」
他の男子がニヤリと笑う。そこで女生徒達は気付いたのか、頬を染めて「すけべ」と云うと、そそくさと立ち去った。
ーーーなんだぁ?
恵は眉根を寄せて平片の腕を引っ張る。
「なんだ? 何か隠してるな?」
ーーーおいおい、女子が気付いたのに、なんでお前さんは気付かないのか?
天然なのか純粋なのか。どちらでも当て嵌まる恵を可愛い等と、云ったらその瞬間恵に殴られそうだ。
「それはな」
平片は云おうか云うまいか暫し考える。平片同様、他の二人も顔を見合わせた。恵は平片の家に泊まった事が無いので、取り合えず訊く。毎回誘われるのだが、伊吹がついて来たがるので、友人に迷惑だろうと誘いを断っていたのだ。どこまでも伊吹思いの【お兄ちゃん】なのだ。伊吹の大きなウルルン瞳にノックダウンされて、毎回玄関で諦めて、携帯で平片に侘びの連絡を入れていた。
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平片が云う。その顔は気味が悪いほどにニヤついていた。
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