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〜第1.5章 別の異世界へ〜

第14話 〜アリスと出会い、進展した新主人公……?〜

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 無事……??  辛い日々を乗り越え……??
俺は今、数少ない休みの時間を満喫していた。
ほんの少し前だったら、バイト三昧だったのに……。

 その数少ない休みとは……中学の卒業式が終わって……高校に入学するための短い休みに突入したのだ。

 本当ならこの短い休みの間にもバイトがあるはずだったが、それも全て無くなってしまった。
その理由は、この間の集団リンチのせいだ。
あの日にあったバイトは、結局行けなかったから無断欠勤となって沢山……罵倒されたし、挙句の果てには、クビの宣言されたし……他のバイト先では、体中の傷が原因で、お客に出せないと言われ、クビの宣告をされてしまった。

 全ての人間も俺も憎いし、何もかも……理不尽だと思った。みんなが羨ましいし……妬ましい。
何より……1番は悔しかった……。
……だけど、この姿の俺にはどうすることもできない。

 この休み、筋トレでもしてみよう……。
それで、何か変わるとは思えないけど。
 いろいろ思うことはあるが……。
新しいバイトを見つけたりしなきゃいけない。
あ……時間が少しでも空いているから、久しぶりにこの家を掃除しよう。

 そう考えた俺は、すぐに雑巾や掃除機を持ち出して、家の大掃除を始めた。

『おい、聞こえるか??』

 ━━━ん?  何が聞こえる……。
……まぁ、いいか!!

『……おい、無視すんな!?』

 うーん。やっぱり……普段から簡単に掃除をしているとはいえ、しっかり掃除をしてみると、汚れが多い。

『おーい!!  無視すんなぁァァァー!!』

それに、おばあちゃんの家は結構広いので、こういう機会がないと全部の部屋を掃除するのは難しいのだ。

『聞こえてるだろ!?  
なぁ、聞こえてないのか!?』

 いや、うん。分かっていた。
これが、現実から逃げてることなのは……。

『おーい!!  私の声からは逃げるな!!』

 この暗い気持ちのままに……。
バケツの水を変えるために洗面台に向かうと……。
そこの鏡に映し出された自分の顔が嫌でも目に入った。

 細く小さい目。小さく鼻の穴が大きい豚鼻。エラが張っていて、頬骨が浮き出ているのに、顔全体はブクブクに太っていて、ニキビやそばかすだらけ……。

 分厚い唇に歯並びの悪い口。
 髪が薄く、若ハゲ気味。
 更に、何もかも無表情な顔。
 決めては……あの両親にも、あの双子にも似ていない……この醜い俺……。
 見ていくうちに、、段々と、俺の中に溜まっていたものが溢れ出してきた。

「あ……あぁぁ……あぁぁぁぁぁぁあ!!」

 何度も……何度も……涙を流しながら鏡を殴り続けていた。
 必死に……必死に……目の前の存在を消そうと、、
俺の手から血が出ていようが構わずに殴り続けた。
 そして、鏡は数十発を殴っていたからか……呆気なく割れていた。

「はぁ……はぁ……」

 鏡が割れたことで、多少は落ち着く事が出来たが、俺の中のモヤモヤは晴れなかった……。
 地面には、鏡の破片と……俺の血が落ちている。
どんなに喚き騒いでも……俺の状況は変わらない。
 できることなら……整形がしたい。
でも……お金がない俺にはどうすることもできない。
 高校の学費と生活費を稼ぐので精いっぱいなのだ。

 高校をやめて働こうとしても……。
この俺じゃまず就職はできないのは確定だ。
 暗い現実を突きつけてくる上に……どれだけ明るい現実を考えていても遠くなっていく……俺の心は更に、沈んでいく一方だ。
 だから、俺は嫌なことを忘れようと……
鏡の破片や血を片付けた後、再び……感情が無いまま、無我夢中で掃除に集中していると……ある部屋に辿り着いた。

「ここは……」

『お、現れたか。』

 なんだ??  なんか、聞こえる。
……気のせいか??

 そこは、おばあちゃんが世界中を飛び回って、収集した品々が置かれている部屋だった。
全て、ここに収納されていたのか……。

 確かに……よく良く考えれば、おばあちゃんが生きている頃から興味を惹かれたりはしなかったのに……
何故だろう??  今の俺は、どうも……そこが気になって仕方なかった。

「……ここも掃除するか。
亡くなったおばあちゃんの為にも……
まぁ、それくらいなら罰は当たらないよな。」

 俺は雑巾とバケツを持って、部屋の中に入ると、よく分からない品々で溢れかえっていた……。

 すると、俺は辺りの物が気になりすぎて毎回……立ち止まっていた。

「……何だ?
あのお面。鬼神みたいで怖いな……
ん?  あれは……何の人形だ?」

 鬼神の面や……。
俺より大きいマネキンみたいなもの。

他にも、バスケットボールサイズの赤色の正方形や、どういう原理なのかは分からないが、変な台座の上でくるくると回りながら浮いている変な石。
中には、エジプトのファラオが入っているような棺まで置いてあった。

 これさ、全部おばあちゃんが集めたんだよな……?

 なんか、おばあちゃんがすごいと思いながらも……用途が分からない物だらけなので……。
今となってはほぼガラクタ同然だった。

「これ、どうしよう……。
ん?  これ……は?」

 この品々を触ろうにも、
何か起こったら怖いしなぁと考えていると……
ふと奥の方に置いてあるものに視線が移った。

 それは、まるで壁から抜きだしたような形で存在する、扉だった。

 木製の扉で、大きなフクロウが彫刻されており、ふちには木々が彫刻されていた。

「これも持って帰って来たのかな……?」

 この扉を……?
もし持って帰って来たのだとすると……どこの扉なんだよ。

 まあ、扉だけなので……。
開いたところで後ろの壁が見えるだけだろう。
 そう思いながら、扉に手を伸ばすと━━━━。

「…………え?」

 そこは、見慣れない部屋だった。

そこから……俺の意識が無くなる。
目が覚めるとそこは……真っ白で椅子が1つしかない部屋。そこに人が居た。

『やぁ、私の声は全然聞いてくれなかったね。』

 そこに現れたのは……イケメンで、可愛さと言う美貌もある女の子が俺に声をかけてきた。

「あ、あの!!
な、名前は??」

 すると……その女の子は聞きなれた名前を言ってきた。

『エリザベス・アリスだ。』

 ……え?  まさか、異世界人!?

『そうかもな?  一応、前世では魔王をしていた。今は、魔王学院に通っている。』

 俺の心を見透かしてる……!?

『だって、もう……漏らしてくださ~い!!
って言ってるもんだもん。』

 終わったぁ~。俺、終わったわ。

『終わるな終わるな。
ちなみに言うと、須藤をぶっ潰したのも私だ。』

 え?  化け物ですか?

『違うわい。弱かっただけだい。
ちなみに言うが、私の力は使ってないぞ?
ちゃんと、お前の力を使っただけだ。』

 え?  俺って力あるんですか?

『まぁ、安心しろ……。
私も今後はお前をサポートする。
まぁ、私も学院もあるから……同時進行だが……。』

 すげぇ~。かっこいい……。

『そして、お前に試練だ。
この先は異世界となる。
まぁ、私の異世界とは違うが……なんとかなるだろ。』

 な、なるんですかね~?  あはは……。

『あぁ、お前が死んで欲しくないため
何かあったら私が主導権を握るし、その後の情報共有はする。それと……私の力も付与しておく。
緊急時になったら使え。』

 あ、ありがとうございます……。
えぇっと……

 俺はアリスさんのステータスを見た。
化け物すぎるぐらいに強かった……。

『じゃ、私はここで監視してるから……異世界、楽しんで来いよ?  何かあったら知らせる。』

 わ、分かりました!!

 そして、目覚めると……。ログハウスのような内装で、木の大きなテーブルと椅子がひとつに、木製のクローゼット。そして剣や斧といった、武器が山のように置いてあった。

「え? は……?」

 意味の分からない状況に、俺の頭はパンク寸前だった。

 すると、不意に目の前に半透明の板みたいなものが出現した。

「うわあっ!?」

 あまりにも唐突に出現したため、情けない声を出して尻もちをついてしまった。

 だが、半透明の板も、俺が尻もちをつくとその状態の目線の高さまで移動している。

「な……なんだよ、これ……」

 狼狽えながら、目の前に出現した半透明の板に視線を向けると、そこにはこう書かれていた。

『スキル【鑑定】を獲得しました。スキル【忍耐】を獲得しました。称号【扉の主】を獲得しました。称号【家の主】を獲得しました。称号【異世界人】を獲得しました。称号【初めて異世界を訪れた者】を獲得しました』

「え?」

 そこには、まるでゲームのメッセージのような物が表示されていた。
 か、鑑定? 忍耐? 
それに、異世界って……。
取りあえず、起き上がった俺は……。
一度家に戻って、扉の周りを確認した。

「や、やっぱりどこにも繋がってないよな?」

 扉を持ち、裏側を確認したりするが、俺の家の壁があるだけ。
……なのに、扉の先には見慣れないログハウス風な部屋が広がっているのだ。

「マジで、何なんだよ……」

 この扉って一体……。
そう考えた瞬間……自然と消えていたはずの半透明な板が、再び出現した。

『異世界への扉』……突如として地球に出現したどこかの異世界へと続く扉。なぜ出現したのか、どうやって出現したのかは、神々さえ知らない。繋がる先は不明であり、一度異世界と繋がると、固定される。主となった者は、現実世界でも様々な機能を操る事が出来る。破壊不可能。

 なんということでしょ~う!!
扉の正体がいきなり分かったのだぁ~!!

 って、なんでやねん!!
いやね??  分かったのはいいけどメチャクチャな内容なんだよな!?
 ここまで来て、俺はようやく冷静になり……
一つの答えに辿り着く。

「もしかして……スキルと言う中にある【鑑定】ってやつか?」

 でも……ここはログハウス風の部屋のなかじゃなく、地球なのだ。

 ……待てよ? なら、なんで目の前にこのよく分からない板が出現するんだ?

「……考えてもよく分からないけど……これ、ステータスとか確認できないのかな?」

 思わずそう呟くと、またも板が出現し、そこにはこう表示されていた。

「……本当に出てきたよ。どれどれ~?」

ワクワクしながらそう思うと、目の前に新たなメッセージが表示された。

【大空奏音】
職業:後継者
HP  5000

レベル:00
魔力:00
攻撃力:00
防御力:00
俊敏力:00
知力:00
運:00
スキル:≪オール00≫ ≪鑑定≫ ≪忍耐≫ ≪魔法≫
≪アイテムボックス≫ ≪テイム スライム≫etc.
称号:≪扉の主≫≪家の主≫≪異世界人≫≪初めて異世界を訪れた者≫ ≪スライムの主≫

 絶望した。
 まさか、ステータスがオール0だなんて……
学校の成績でさえ、ここまで酷いものはとったことがないのに……。
まぁ、、何となく分かっていたけどね……?

 しかし、後継者って……なんの後継者だろう?
アイテムボックスもなぜかスキルの欄に追加されてるし……。

『アイテムボックス』……特殊な空間を出現させ、好きなだけ物を出し入れすることが出来る。ただし、生物は収納することは出来ない。容量の限界はなく、大きさも問わない。

 これで分かったが、さっきの扉を調べられたのは、この【鑑定】というスキルのおかげだろう。
 それにしても……ますます現実離れしすぎてるな。

「これなら、称号とかも調べられるか?」

 ほぼ確信を抱きながらそう呟くと、案の定メッセージが出現した。

【扉の主】……異世界への扉の主。メニュー機能を使用する事が出来る。
【家の主】……かつて、賢者が住んでいたといわれる家の新たな主。家の所有権を得る。
【異世界人】……異世界の人。普通より経験値が多く手に入り、特殊な成長をする。また、スキルを習得しやすくなる。レベルの上限を撤廃。
【初めて異世界を訪れた者】……初めて異世界へ訪れた者。別の称号である、【開拓者】の効果以上にスキルや魔法を発明しやすくなる。また、成長する過程で、いい方向に成長していく。また、『アイテムボックス』を使えるようになる。
【スライムの主】……スライムをテイムした称号。

「おぉ……!!」

 よく分からないが、何となくすごそうだった。
 【初めて異世界を訪れた者】に至っては、別の称号である【開拓者】とやらより優秀らしいし、『アイテムボックス』とやらも使えるようだ。……『アイテムボックス』ってなんだ?
 それに、【家の主】という称号の部分もよく分からない。どの家のことだ?
 そんな感想を抱いていると、【扉の主】の説明に書かれた、メニュー機能という部分に気付いた。

「メニュー機能? これは一体……ってうわぁ!?」

 また、別のメッセージが目の前に表示される。
 そこには……。

【異世界への扉】
名前:大空奏音
機能:≪換金≫≪転送≫≪入場制限≫ 

 と書かれていた。

「換金? 
何かをお金に換えられるのか? 
それに、転送と入場制限か……」

 全ての項目に意識を向けると……
詳しい説明にメッセージが変更される。

≪換金≫……あらゆる物をお金に変換できる。
≪転送≫……所有者の位置に、扉を出現させる事が出来る。
≪入場制限≫……所有者の指定した人物のみ、扉を通る事が出来る。

「思った以上に高性能だな!?」

 つまり、
仮に誰かがこの場所を見つけても……その先には行けないということだ。

 さらに言えば、この扉を盗んだとしても、俺のもとに帰ってくるという……。

「換金は正直何に、使うのか分からないけど、まああっても損はないし、今はいいか」

 アイテムボックスやスキルやステータスなどは、ゲームみたいな機能だと思えば……理解はできる。
 さて、ここまで確認できたわけだが、あと確認しなきゃいけないことと言えば……。

「あの部屋……だよなぁ……」

 さっきは誰もいなかったが、よく考えれば不法侵入だ。

 それで相手が怒って襲われたら、
たまったもんじゃないし、きっと殺されるだろう。

 しかも、オール0の俺にとっては……確実に死ぬ。

 だけど……【家の主】という、よく分からない称号も手に入ったが、確認してみないことにはなんとも……分からないよな。

 幸い、俺以外は扉を通る事が出来ないようなので、俺の家に逃げ込めば何とかなるが……。

「……はぁ……
考えるよりも……もう一度、見てみるか」

 そう決めて、俺は再び……異世界の部屋へと行くのだった。

一方……アリスの方は……。

「朝になったか……。
魔王学院に行かなくてはな。」

 ━━━私は、引き続き……
"彼"の監視をしながら、これから起こる日常を送る事となったのだった。
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