雑貨屋店主は王子様

ななこ

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毒花

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「それは恐ろしい毒薬であり、医療にも使える魔法の薬」

 ハリーからの情報を兄たちに伝えると、医師のブリジットが呼ばれた。

「それはどういうこと?」

「どんな激痛でも炎症でも抑える効果が高く、最後の手段となるけど、我が国では使われていないわ」

「それはどうして」

「管理が難しくて、呼吸障害ほか解明されていない副作用もあって承認できないから」

「それなら隣国も同じだろう」

「戦闘時に限って使っているのでしょう?  戦争に勝ちたければ手段は選ばないって事かしら」

「ハロルドの症状については?」

「媚薬効果だと思う。使いすぎて廃人になったのね」

「アル兄様はどう思う?  そんな薬物が我が国にまで来ると思う?」

 レイはアルバートの言葉を待った。

「あると思う。危険だが早急に根絶やしにしたいな」

「レオン兄様は?」

「もう少し情報が欲しい。レイ行ってくれるか」

「承知しました。我が国を汚染させませんよ」

 レイはウィステリア領に戻り、再度セイラから聞き取ったうえで取引を持ちかけた。セイラの実家に協力を取り付ける代わりに、ハロルドとセイラには、旧バーデット領の高位貴族を幽閉する館に住まわせてやると。ハロルドと死ぬまで過ごせるならとセイラは承諾した。

 セイラの実家の手引きで隣国に潜り込んだセオが、クロークの先鋭数人と戻ってきた。

「男爵の歳は50で独り身。贈答用の高級な花を育てているからハロルドとのつながりはそこだろう。社交にはほとんど姿を見せず、不定期で居場所を変えている。いくつかあたって、今の居場所はつきとめたが、また変わるだろうな」

「厄介だな。悟られないよう他国で動きまわるのは難しい」

「表玄関には出入りなし。裏口に不審な農夫が訪れていたから後を追うと、元バーデット領に近い国境付近にやたら秘密めいた畑が広がり、中は探れなかった。警備が厳重でウィステリア騎士団の半数は連れて行きたいところだな」

「それは何かあるって、言ってるようなものだろう」

 ヴィンが領の近くになんてものをと憤っていた。

「ヴィン、主の側を決して離れるな」

 セオが珍しく真顔だ。

「そんなに危険か?」

「男爵は男色で、特に好みは主だ」

「縄で縛っておくか」

 ヴィンはレイを拘束して、どこかへ閉じ込める気でいる。

「ヴィン、無駄だよ。主はものすごく関節が柔らかい。特に狙われやすいから、繩くらいすぐほどく練習してる」

「王子教育ってそんなこともすんのか」

「うちはないよ」

 ハリーが首を横にふる。

「ヴィン、連れてってね」

 レイが茶化して笑う。

 その時、事務官アランが血相をかえて手紙を持ってきた。ヴィンが先に検めレイに渡す。

 宛名のない見知らぬ花が添えられた封筒をあけると、隣国の小さな町の名前が記してあった。

「招待状だ。探す手間が省けた。さて誰を連れて行こう」
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