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温泉村の夜
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温泉村に着くころには疲れもとれたのか、レイの顔色は良くなっていた。
「良く寝たな。みんなに気を遣わせたね」
「体調戻さないと叱られるぞ」
「うん?」
そこへ最愛の子どもたちの声がした。
「お父様おかえりなさい」
「ルー、アナただいま。お迎えに来てくれたの? 嬉しいな」
双子に会いたいとごねていたレイのために、王都から温泉村へ馬車を走らせていた。
「ルカ君だわ。モリー、見て。天使が2人もいる」
「大天使いれて3人でしょう」
「認めます。レイモンド様は小悪魔だけど大天使です」
リリアちゃんたらと、モリーナが苦笑する。
「みんなで足湯に行こうか」
レイが双子を抱き上げ領主専用足湯へ向かった。
食事も終え、双子がもう寝る時間になり、お休みなさいとレイに言いに来た。
「ルカ君を抱っこさせて欲しいの」
「嫌だけど」
「そこをなんとか。大きくなったら絶対できないでしょう。今日しか機会がないかもしれないのよ」
「君も早く子をもうければいい。ん?」
壁際に控えるリリアの侍女が腕を交差して×をつくる。
「どうした?」
「レイ様。リリアちゃんまた破談したんですよ」
「帝王学を学んでいる婚約者殿か?」
「お母様が厳しすぎるのよ。お父様と比べてあれができないとか言って、辞退されました」
「そうか、いいよ。ルー、リリアおばさんに握手させてあげて」
「おばさん! いいですわ。ルカ君こっちきて」
むぎゅー!
「おいリリア、握手だけだぞ」
「これでもう少し頑張れますわ。ルカ君ありがとう」
「リリア様。またね」
小さな手をふりルーとアナはミアとフローレンスに寝室へ連れて行かれた。
「油断も隙もないな」
「ごめんあそばせ」
子ども達を寝かしつけた後は飲み会となった。
葡萄酒に麦酒に果実入りの酒。それぞれが好みのものをグラスにいれ乾杯。
「何これ止まらない」
リリアが細く切って揚げたじゃが芋を最初はフォークを使っていたが指でつまみだした。
「これ楽しい」
モリーナは枝豆を鞘から外し、ぽいぽい口の中へ入れる。
「庶民の食べ物も悪くないだろう」
レイはトウモロコシを丸かじりしている。
「僕ってさ。なんでこんなに標的にされるんだろう」
「お顔じゃないですか?」
「性格悪いのにね」
「それほどでもない」
ヴィンがフォローする。
「そこがいいのに」
ハリーは剣の強いだけの王子なら、レイに興味はなかったという。
「顔っていったらうちの兄様達も、ハリーもいい男でしょ」
「そうなんだけど。レイは違うのよ」
リリアは顔を赤くし、もう出来上がっていた。
「全体的に白いじゃない。なんかこう絶滅危惧種みたいな、畏れ多いていうかさ」
「それわかります。神様には手が届かないけどレイちゃんには届くみたいな。あはは」
モリーナの侍女が、酒の入ったグラスを奪い水を渡す。
「女も敵わないくらい綺麗だしねー」
「戦場に行った騎士が傷ひとつないなんてありえないだろ。見ろよ」
ほろ酔いのレイががばっとシャツ脱ぎ、わき腹や肩、腕、お腹まで見せる。
「ほらここ。ここも。傷だらけだよ」
「……男だったんだ」
「やっぱり綺麗ですぅ」
「姐さん結婚してください!」
ヴィンがレイから服をひったくり着せる。顔だけはどうにかグレースと侍女たちの努力の賜物で、傷跡は残っていない。
「ほらここも」
レイが髪をかき分けつむじのあたりを見せる。
「おい、お前の頭斬りつけるほどの強者がいたのか」
ヴィンが無意識に剣に手を伸ばす。
「これは子どもの頃に木から落ちた」
「……」
「そういえばモリーとハリーはどうなったの?」
「どうもなっていません、俺は王位継がないし、一生姐さんについていく」
「一生はいらない」
「私、実は王子様をみつけました」
「えっ。どこの国によ」
「それが……」
壁やら天井をモリーナが見まわして、どこかにいないかなと顔を赤らめる。
「セオ様がもう可愛すぎて。ここに来たのはお話できないかなって」
「セオ!!」
レイが大声で呼ぶが姿を見せない。
「逃げたな。で、きっけけは?」
「この間の花火鑑賞会で乱闘があった時に、大事な髪飾りを落としてしまって翌日探しに行ったの。そしたら急に現れたセオ様がニコッと笑ってこれですか? って」
「それだけ?」
「それだけです」
「セオーーーー!!」
「やめてくださいませ。あの可愛い笑顔をみたら胸キュンですの」
確かに人懐こいとこが持ち味だ。
「落ちてるの拾うだけでいいのか」
「下心ばれたら逆に嫌われるぞ」
「もう俺ショック。寝るわ。姐さん一緒に…ぶほっ」
ヴィンに思いきり叩かれた。
「ヴィン、僕も寝るから連れてって」
「甘えてんじゃないわよ」
にらみ合っても仕方ない。お肌に悪いと解散した。
翌朝、お酒臭いですと双子に言われ大人たちは反省しました。
「良く寝たな。みんなに気を遣わせたね」
「体調戻さないと叱られるぞ」
「うん?」
そこへ最愛の子どもたちの声がした。
「お父様おかえりなさい」
「ルー、アナただいま。お迎えに来てくれたの? 嬉しいな」
双子に会いたいとごねていたレイのために、王都から温泉村へ馬車を走らせていた。
「ルカ君だわ。モリー、見て。天使が2人もいる」
「大天使いれて3人でしょう」
「認めます。レイモンド様は小悪魔だけど大天使です」
リリアちゃんたらと、モリーナが苦笑する。
「みんなで足湯に行こうか」
レイが双子を抱き上げ領主専用足湯へ向かった。
食事も終え、双子がもう寝る時間になり、お休みなさいとレイに言いに来た。
「ルカ君を抱っこさせて欲しいの」
「嫌だけど」
「そこをなんとか。大きくなったら絶対できないでしょう。今日しか機会がないかもしれないのよ」
「君も早く子をもうければいい。ん?」
壁際に控えるリリアの侍女が腕を交差して×をつくる。
「どうした?」
「レイ様。リリアちゃんまた破談したんですよ」
「帝王学を学んでいる婚約者殿か?」
「お母様が厳しすぎるのよ。お父様と比べてあれができないとか言って、辞退されました」
「そうか、いいよ。ルー、リリアおばさんに握手させてあげて」
「おばさん! いいですわ。ルカ君こっちきて」
むぎゅー!
「おいリリア、握手だけだぞ」
「これでもう少し頑張れますわ。ルカ君ありがとう」
「リリア様。またね」
小さな手をふりルーとアナはミアとフローレンスに寝室へ連れて行かれた。
「油断も隙もないな」
「ごめんあそばせ」
子ども達を寝かしつけた後は飲み会となった。
葡萄酒に麦酒に果実入りの酒。それぞれが好みのものをグラスにいれ乾杯。
「何これ止まらない」
リリアが細く切って揚げたじゃが芋を最初はフォークを使っていたが指でつまみだした。
「これ楽しい」
モリーナは枝豆を鞘から外し、ぽいぽい口の中へ入れる。
「庶民の食べ物も悪くないだろう」
レイはトウモロコシを丸かじりしている。
「僕ってさ。なんでこんなに標的にされるんだろう」
「お顔じゃないですか?」
「性格悪いのにね」
「それほどでもない」
ヴィンがフォローする。
「そこがいいのに」
ハリーは剣の強いだけの王子なら、レイに興味はなかったという。
「顔っていったらうちの兄様達も、ハリーもいい男でしょ」
「そうなんだけど。レイは違うのよ」
リリアは顔を赤くし、もう出来上がっていた。
「全体的に白いじゃない。なんかこう絶滅危惧種みたいな、畏れ多いていうかさ」
「それわかります。神様には手が届かないけどレイちゃんには届くみたいな。あはは」
モリーナの侍女が、酒の入ったグラスを奪い水を渡す。
「女も敵わないくらい綺麗だしねー」
「戦場に行った騎士が傷ひとつないなんてありえないだろ。見ろよ」
ほろ酔いのレイががばっとシャツ脱ぎ、わき腹や肩、腕、お腹まで見せる。
「ほらここ。ここも。傷だらけだよ」
「……男だったんだ」
「やっぱり綺麗ですぅ」
「姐さん結婚してください!」
ヴィンがレイから服をひったくり着せる。顔だけはどうにかグレースと侍女たちの努力の賜物で、傷跡は残っていない。
「ほらここも」
レイが髪をかき分けつむじのあたりを見せる。
「おい、お前の頭斬りつけるほどの強者がいたのか」
ヴィンが無意識に剣に手を伸ばす。
「これは子どもの頃に木から落ちた」
「……」
「そういえばモリーとハリーはどうなったの?」
「どうもなっていません、俺は王位継がないし、一生姐さんについていく」
「一生はいらない」
「私、実は王子様をみつけました」
「えっ。どこの国によ」
「それが……」
壁やら天井をモリーナが見まわして、どこかにいないかなと顔を赤らめる。
「セオ様がもう可愛すぎて。ここに来たのはお話できないかなって」
「セオ!!」
レイが大声で呼ぶが姿を見せない。
「逃げたな。で、きっけけは?」
「この間の花火鑑賞会で乱闘があった時に、大事な髪飾りを落としてしまって翌日探しに行ったの。そしたら急に現れたセオ様がニコッと笑ってこれですか? って」
「それだけ?」
「それだけです」
「セオーーーー!!」
「やめてくださいませ。あの可愛い笑顔をみたら胸キュンですの」
確かに人懐こいとこが持ち味だ。
「落ちてるの拾うだけでいいのか」
「下心ばれたら逆に嫌われるぞ」
「もう俺ショック。寝るわ。姐さん一緒に…ぶほっ」
ヴィンに思いきり叩かれた。
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