雑貨屋店主は王子様

ななこ

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6か国は招集された

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「今回はレオ兄様が一緒なんだね。嬉しいな」

「レイモンド。公爵らしく言葉遣いに気をつけなさい」

「申し訳ございません。以後気をつけます」

 あれ、姐さんがすごくいい子にしている。

 ハリーは今回もクローク王の代理。レイの供としては来ていないがレイの後にくっついている。

 ヴィンは見慣れた光景だと驚きもしない。

 レオンは普段表には出ないが、マナーなどに厳しく、レイを一言で従わせることのできる唯一といっていい。長兄アルバートもエリオットさえもレイに甘すぎると小言を言われる。

「ではアレス城にご滞在中は私がご案内します。晩餐まではこちらでお休みください」

 レイはレオンを客室へ送り丁寧にお辞儀した。

「レイモンドも中へお入り」

「では失礼します」

 護衛なのでヴィンも入る。ハリーもレオンの護衛達に紛れて入る。

「レイちゃん!  怒ってないか?」

 むぎゅとレオンがレイを抱きしめる。

 何が起きた? ハリーがヴィンを見ると苦笑している。

「私的な時間は仲の良いご兄弟だよ。弟溺愛はアルバート様と一緒」

「にいざま、苦じい」

「ごめんよ。久しぶりでついね」

「ブリジットの体調はどう? アル兄様はメイベルから離れなかったんだね」

「はがせなかった。私だってブリジットの側にいたいのに」

「仕方ないよ。今度はレオ兄様が話を進めれば早く帰国できるから」

「レイは頭いいな。そうしよう」

 晩餐は一同がそろい、親睦会となった。

 髪をきっちりと結わえ、どこから見ても貴公子のレイがお皿をじっと見つめていた。緑のあいつが無数にいたのだ。

 ヴィンはさりげなく皿を寄せたがレオンに見つかった。

「レイモンド」

 ちらっと兄を見て、美味しそうにレイが食べ始める。

「あら、好き嫌いがあるなんて。騎士様ともあろうお方が、お可愛らしいことね」

 リリアにも見つかった。

「ノアールの姫、弟が何か? 人には好き嫌いくらいあるでしょう」

 人に言われると擁護する面倒くさいお方なのだ。

「ヴィンセント。側近なら先に厨房に伝えなさい」

「はい。申し訳ございませんでした」

 ハリーが横を向いて笑っている。レオンに見つかった。

「クロークの王子。後で少しお話でもしませんか」

「お誘いありがとうございます。しかしこの後は予定が…」

「ハリー王子。私との話し合いなら兄上の後で構いませんよ」

「…後ほどレオン様のお部屋へ伺います」

 ハリーはお小言確定だと眉間にしわを寄せる。

 レオンの部屋でレイは服をむかれた。

「これ以上痩せたら緑の豆を毎日出すよ。林檎だけで一週間近く? いつも好きなものだけ食べてた?   ヴィンセント。君が僕の弟を大事に思うなら、オムレツ以外も残さず食べるまで見張っていなさい」

 怖い。何も言い返せない。

「大事な主君にオムレツ以外も食べてもらえるように努力します」

「ハリー王子。自分だけ肉や魚を食べた上、偏食のレイが残したものまで食べるって? 君も王子でしょ。恥ずかしくないのかな」

「すみません。今後はレイモンド様の食事に気を配ります」

 2人が叱られている隙にシャツを着たが、またレオンに捕まる。

「レイ、服脱いで。傷跡みるから…ほらブリジットの薬塗るから。さっさと脱ぎなさい」

「兄上、自分でやります! くすぐったい…やめて、きゃはは」

「もう仕方ない子だね」

 見てる方が恥ずかしい、いい大人が何やってんだ。部屋から1歩でも出れば、服装から立ち居振る舞いまで全部チェックする。もしやレオンは祖母ソフィア似なのか? 絶対そうだ。

「姐さんの裏切り者、怖かった。弟いるけど俺って愛情足りてない? 可愛がってるけどあれには勝てない。真似たくもないけど」

「僕も今日はさすがにレオ兄様、怖かった」

「お前の好き嫌いのせいで説教食らうなんてな。何が騎士は満腹にしないだ。ただ嫌いで残してたって? 魚は骨取るのが面倒? 辛いのも苦手って初耳だぞ。お前は幼児か、ルーカスのほうがよっぽど食べてるぞ」

「満腹であんな動きしたらお腹痛くして、悲惨なことになるよ!」

「今回は姐さんが悪い」

「明日から3食以外にも分けて食べろ。いいな」

 4歳児に負けた父だった。

 ***

「あら、今日は緑のお豆色のお衣装なのね」

「緑でもあれとは別色だけど」

 リリアと会議室前で鉢合わせして、軽口合戦が始まった。

「仲いいですわね。お似合いです」 

 モリーナ姫は会場国としておもてなし係をしていた。

「「誰が!!」」

「レイモンド、大きな声を出さない」

「はい、レオン兄様。それでは参りましょう」

 レイからバーデットで起きた一連の件が話された後に、アレス国王からもサンドラの尋問の結果を聞かされたが、こちらはあまり成果がない。人格が入れ替わりまともな会話ができなったからだ。

 アガサスの宰相と大臣たちが呼ばれた。

 サンドラ姫がおかしいと気付いた頃にはもう前国王夫妻、第1王子が暗殺された後で、第2王子アーロも性格に難があり、サンドラが王位を継承、女王となった。暗殺はグレイソンを使いサンドラが仕組んだものだが証拠がない。

 カステルに粗悪品を売っていたことを宰相達は知らなかった。虚偽の報告に気づかなかったのだという。今後は賠償を含めカステルに謝罪をしたいと申し入れた。

 もう王家を継ぐ者もおらず、世襲制は廃止、現宰相が代わりに統治していくこととなる。サンドラは死刑が決まり6か国の代表とアガサスの新しい君主が見届けることになった。アーロは貴族籍に残るものの権限は何も持たせない。

 グレイソンはサンドラの影(仮)の手にかかり死んでいた。前国王の汚れ仕事をしているうちに接触があったのだろう。サンドラの愛人の1人で影(仮)の師だったらしいが最後はあっけないものだった。

 あとはベネノンの爆薬の処理だが、これはアレス国王が見つけ出してくれる。

「もう平和が訪れて、僕は自分の領地の心配だけをしていたいよ」

「あなたにそんな日来ないと思うけど」

「ノアール国は妙なことになってないよね」

「今のところはね」

「あとは君がいい夫君を迎えるだけか」

「そうね。モリーに先を越されるとは思ってもみなかったけど」

「リリアちゃんとレイモンド様が結婚すればいいじゃないですか」

「君は暴走するね。セオによく見張るように言っとくよ」

「本当よね。私のこともらってくれないかしら」

「リリアが冗談飛ばすなんてことあるんだね」

「だってレイと結婚すれば、ヴィンセント様をお迎えできるわ」

「僕がおまけみたいじゃないか」

「美男美女カップルにはなれますよ」

「リリアは僕とダンスしてときめく? 足踏んでやろうくらいしか考えてないと思うけど」

「そうね。ドキドキは<騎士様わたしをさらって>を読む以外はないわね」

「サインもらった?」

「それがまだなの。いただいてきてよ」

「自分で行きなよ。レオ兄様喜ぶよ」

「本当? ドキドキしてきた」

「それ違うドキドキですよ」

 平和は身近にあったりする。

 レイは渋るアレス国王にセオの身元保証人として、結婚の許しを正式にもらった。

 セオも今ではボールドウィン伯爵となり、柄じゃないが姫をもらうなら仕方ないと諦めている。なんだかんだ言っても、あれだけ尽くされたら情も湧いてモリーと呼んでいた。

 今まで叙爵がなかったのが不思議なくらいに、代々騎士として手柄を立てて来た家柄だったので、王宮ではむしろ歓迎された。トーマスにも…となったが必要な時がきたらもらうと断られた。

「次はモリーの結婚式で会いましょう」

「リリアちゃんも婚活頑張ってね」

 それぞれが帰国の途についた。
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