漆黒の法皇 〜黒き聖職者は世界を救う〜

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第一章 伝説の冒険者、登場

第四話 エンパイア大霊廟攻略作戦 後編

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第一章 伝説の冒険者、登場

4 魔王軍幹部

エンパイア大霊廟に侵入すると、まず先に狩人や盗人、斥候が前に出て、罠や敵の確認を行なっていた。これはダンジョン攻略の基本であり、これが無いとダンジョン攻略の難易度はかなり変わる。すると早速前に出ていた狩人と盗人が前方に敵を感知した。

「皆んな気をつけろ、前方から大量に押し寄せているぞ。」

狩人の言う通り、アンデットの大軍がこちらに押し寄せてきた。冒険者達は武器を抜き、戦闘を始めた。

「よし、皆んな突撃!!」

ラーグの掛け声でアンデットの軍勢に突撃していき、倒していった。アンデット達はそこまで強くないが、ここまでの大軍だと苦戦は必須、徐々に押されてきていた。するとカインが前に手をかざし、魔法を展開した。

「……《死者浄化》」

神聖魔法、死者浄化。数体のアンデット達を浄化する対アンデットの魔法だが、カインの死者浄化はまさに桁違いで、アンデットの大軍を全て浄化した。

「……ハハ、シャイでも流石EXランク。やる事の次元が違うな…。」

ラーグは改めてカインの強さを実感していた。しかし安心したのも束の間、またアンデット達が押し寄せてきた。しかも最初の時とは違い、ゾンビの上位種のグール、スケルトンの上位種の骸骨騎士、外骨魔導士、骸骨狩人もいた。ラーグ達はチャチャっと治癒魔法を発動し完全回復し、アンデット達に再度立ち向かった。ラーグ達は前回の反省を生かし、魔導士達は光属性や火属性の魔法主体で攻撃し、戦士たちは魔法を剣に付与するスキル《魔法剣》を使用し、剣に光魔法と火魔法を付与し、アンデット達に攻撃した。するとこれが効いたのか、アンデット達はみるみると数を減らしていった。そしてアンデット達を全て倒し、進もうとしたが、カインが待ったをかけた。

「……………………。」

「ん?どうしたんだカイン殿?」

「…………………………………。」

「なになに…『このままアンデット達を倒し続けても、こちらも徐々に不利になっていきます。』、なるほど。」

「…………………………………。」

「『私が召喚獣を召喚して、その子にアンデット達を倒してもらいましょう。私達は大霊廟の最奥へ。』、カイン殿、召喚魔法も使えるのか!…分かった。カイン殿の指示に従おう。」

カインの作戦にみんなが同意すると、カインは早速召喚魔法を使用した。

「……《召喚・蒼白炎の蜥蜴 栄光の守護騎士》

すると召喚魔法陣から蒼白い炎を纏う巨大な竜と、真っ白な全身鎧を装備し、背中に4対の翼を持つ天使が出て来た。2体は奥に向かい、アンデット達を倒していった。その間カイン達は最奥の方へ向かっていった。すると大霊廟の最奥に、王族の格好をし、王冠を被った骸骨がいた。

「…何者じゃ、貴様ら。」

「お前が調査隊の報告にあった魔王軍幹部か!」

ラーグは問い詰めると、その骸骨はケタケタと笑った。

「その通りじゃ、愚かな人族達よ。わしは魔王軍幹部《七魔帝》の一人、《冥骸王》ヴァルデン。それで、貴様らはわしを葬りにきたのか?」

「ああ、俺たちはお前を倒しにきた。」

ラーグはそう宣言すると、ヴァルデンは恐怖を感じさせる笑みを浮かべた。

「愚かなり………暗獄魔法《傷付け続ける拷問》」

するとヴァルデンは禁忌と指定されている魔法、暗獄魔法を使用した。暗獄魔法は闇魔法の上位に魔法であり、闇魔法自体は問題ないが、暗獄魔法は正に人を傷つけ、苦しめる為の魔法である為、全ての国で禁忌指定されている。カインは皆んなを暗獄魔法から守る為、ある魔法を展開した。

「《聖なる盾》」

カインが展開した魔法は光魔法の上位の魔法、神聖魔法。神聖魔法は神々の聖なる光を操り、死者を復活させたり、荒廃した大地を大草原へと変えたりといった人々を助ける為の魔法。しかし神聖魔法は神々の祝福を受けた者のみ使用が許されていおり、暗獄魔法の唯一の対抗手段である。

「チッ……神聖魔法か…。」 

ヴァルデンは神聖魔法を見て、憎悪の表情を浮かべた。

「……………………。」

「『下がっていて下さい。此処からは私が。』、ダメだ!いくらカイン殿とはいえ相手は魔王軍幹部だぞ!」

「………………………………。」

「『ご安心を。確かに相手は強いですが、何も苦戦する程ではありません。』、だが!」

「………………………………………………。」

「『大丈夫、私を信じて下さい。』……分かった。カイン殿。ご武運を。」

カインの説得でラーグ達を後方へと下がらせ、ヴァルデンの近くにきた。

「ククク………無駄なことを。どうせ全員等しく死ぬと言うのに………暗獄魔法《黒く汚れた腐食の虹》」

「《凶暗を滅ぼす神聖線》」

ヴァルデンは暗獄魔法を発動し、真っ黒の波動を全方位に放ったが、神聖なる魔力で練られた何本もの光線で全て相殺した。

「クソっ……やはり神聖魔法に並みの暗獄魔法は相性が悪いか………仕方あるまい、こうなれば大魔王様よりいただいた全てを滅ぼす暗獄魔法の最上位、食らうがいい!暗獄魔法最上位《世界を喰らう九つの原罪》!!!!」

するとヴァルデンは、暗獄魔法の最上位《世界を喰らう九つの原罪》を発動した。この魔法の効果は至ってシンプル。一体だけでも大陸と渡り合える実力を持つ怪物を九体召喚するという正に禁忌の魔法に相応しい効果である。しかし、そうは問屋はおろさない。

「《万物を包む世界樹の威光》」

カインも同じく神聖魔法の最上位である《万物を包む世界樹の威光》を発動した。この魔法の効果は術者が指定した存在を世界樹の威光で滅ぼし、魂を天へと還すというヴァルデンの魔法に負けず劣らずの効果であり、ヴァルデンが召喚した怪物達を全て消滅させた。しかし、ヴァルデンの狙いはそこだった。

「かかりおったな!暗獄魔法最上位《万物蝕む冥界の瘴気》!!」

ヴァルデンの狙いは、カインに最上位の魔法を発動させ、魔力を消費させる事だった。最上位の魔法を発動したら、人間で有れば全ての魔力を消費する為、しばらく魔法が使えない。普通の人間で有れば、正に絶体絶命だが、カインに普通という概念など存在しなかった。

「《穢れなき神々の楽園》《神聖なる女神の審判》」

何とカインは神聖魔法の最上位を二つ同時に発動した。一つ目の魔法でヴァルデンの魔法を防ぎ、もう一つの魔法でヴァルデンの体を貫いた。

「バ……バカな………人間如きに、最上位の魔法を三つも…………。」

ヴァルデンの体は塵となり、消えていった。

「…勝った……カイン殿の勝利だ!!!」

ヴァルデンとカインの壮絶な戦いで固唾を飲んで見守っていたラーグ達は、カインの勝利にお祭り騒ぎになっていた。その後霊廟から抜け出し、大宴会が行われたらしい。
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