58 / 116
桜吹雪レコード ~失った日々をもう一度~
58 桜の未来
しおりを挟む
◇
忙しくも楽しかった体育祭が終わり、これまた学生らしい年間行事が姿を見せた。それはみんな大好き中間テスト。現在絶賛テスト期間中であり、当日は一週間後に迫っている。ちなみに『みんな大好き』と言ったけど、私は面倒だから嫌いだよ。
まあそんなわけで、真面目な生徒はもっと前から勉強をしていただろうし、私も絶対に受からなければならない大学があるから真面目に勉強していた。苦手な英語は特別教師付きの贅沢コースでね。そして今私の目の前で課題をやっているのが、不真面目な生徒。
「咲良ぁ……これ、難しすぎない?」
「それは二年の時の復習なんだけど、覚えてないの?」
「こんなのやった記憶ない……」
両手で顔を覆い、項垂れる藍那の頭を教科書で軽く叩いたのは蓮くん。これ以上ないくらい呆れた顔をしている。現在の時刻は午後三時頃。うちの学園はテスト前一週間だけ午前で授業が終わる。だからこうして私、藍那、海斗くんに蓮くんの四人で私の家に集まり、一緒にテスト勉強するのが定番となっている。
私の家で集まるのはシンプルに親がいなくて呼びやすいから。学園からも近いから学校終わりにそのまま来れるしね。
「これ、前に俺が教えたとこだろ。お前ぜってえ覚える気ねえな?」
「そんなことないよ? でも蓮、頭がいい人の思考回路だから説明が難しいの!」
「それは褒めてるのか貶してるのか、どっちなんだろうね……藍那、俺が教えてあげようか?」
「いいの!? じゃあお願いします!」
おお……好きな人に教えてもらえると分かった途端目が輝いたね。そんなにやる気が出るものなのかな? 私は好きな人ができたことがないから分からない。藍那を見ていると恋の力がすごいのは良く分かるんだけどね。
「ねえねえ、それなら蓮くんは私に英語を教えてよ。蓮くん私より英語できるでしょう?」
「まあ、ほとんどの奴はお前よりできるな。見返りは?」
「ない」
「もうちょっと悩めよそこは。まあ仕方ねえし教えてやるが」
感謝しろよ? と言いながらわざわざ自分の課題を片付け、私の隣まで来てくれる蓮くん。恩着せがましいのか、普通に優しいのか、どっちかにしてほしいね。
でも私から蓮くんに渡せるものって本当に何もないと思う。だって蓮くん、私程度が手に入れられるものくらい簡単に買える財力があるでしょう? すごくプレゼントに悩む相手だよね。
「そうだ、私が刺繍したハンカチとか使う? たしか蓮くんが好きそうなデザインのもあったと思うよ」
「マジ? じゃあもらう。だがとりあえず勉強するぞ」
私の特技が刺繍であると知ってる人は多いけれど、それを売り物にしてると知る人は学園内だとこの三人くらいしかいない。私は基本的にオーダーメイドしか受け付けてないから希少価値が高いんだよ。その収入だけで生活できるくらいには売れている。みんな私の作品を好きだと言ってくれるけれど、特に蓮くんは好きって言ってくれるんだよね。たまに買わせろと言ってくるくらいには。
私、実は刺繍作家の道に進みたいと思っているんだよ。でもそうはいかない事情がある。私は一人娘だからお父さんの仕事を継がなければならない。そうなると時間の都合上厳しいから……最近は進路についてどうするか、すごく悩んでいる。
忙しくも楽しかった体育祭が終わり、これまた学生らしい年間行事が姿を見せた。それはみんな大好き中間テスト。現在絶賛テスト期間中であり、当日は一週間後に迫っている。ちなみに『みんな大好き』と言ったけど、私は面倒だから嫌いだよ。
まあそんなわけで、真面目な生徒はもっと前から勉強をしていただろうし、私も絶対に受からなければならない大学があるから真面目に勉強していた。苦手な英語は特別教師付きの贅沢コースでね。そして今私の目の前で課題をやっているのが、不真面目な生徒。
「咲良ぁ……これ、難しすぎない?」
「それは二年の時の復習なんだけど、覚えてないの?」
「こんなのやった記憶ない……」
両手で顔を覆い、項垂れる藍那の頭を教科書で軽く叩いたのは蓮くん。これ以上ないくらい呆れた顔をしている。現在の時刻は午後三時頃。うちの学園はテスト前一週間だけ午前で授業が終わる。だからこうして私、藍那、海斗くんに蓮くんの四人で私の家に集まり、一緒にテスト勉強するのが定番となっている。
私の家で集まるのはシンプルに親がいなくて呼びやすいから。学園からも近いから学校終わりにそのまま来れるしね。
「これ、前に俺が教えたとこだろ。お前ぜってえ覚える気ねえな?」
「そんなことないよ? でも蓮、頭がいい人の思考回路だから説明が難しいの!」
「それは褒めてるのか貶してるのか、どっちなんだろうね……藍那、俺が教えてあげようか?」
「いいの!? じゃあお願いします!」
おお……好きな人に教えてもらえると分かった途端目が輝いたね。そんなにやる気が出るものなのかな? 私は好きな人ができたことがないから分からない。藍那を見ていると恋の力がすごいのは良く分かるんだけどね。
「ねえねえ、それなら蓮くんは私に英語を教えてよ。蓮くん私より英語できるでしょう?」
「まあ、ほとんどの奴はお前よりできるな。見返りは?」
「ない」
「もうちょっと悩めよそこは。まあ仕方ねえし教えてやるが」
感謝しろよ? と言いながらわざわざ自分の課題を片付け、私の隣まで来てくれる蓮くん。恩着せがましいのか、普通に優しいのか、どっちかにしてほしいね。
でも私から蓮くんに渡せるものって本当に何もないと思う。だって蓮くん、私程度が手に入れられるものくらい簡単に買える財力があるでしょう? すごくプレゼントに悩む相手だよね。
「そうだ、私が刺繍したハンカチとか使う? たしか蓮くんが好きそうなデザインのもあったと思うよ」
「マジ? じゃあもらう。だがとりあえず勉強するぞ」
私の特技が刺繍であると知ってる人は多いけれど、それを売り物にしてると知る人は学園内だとこの三人くらいしかいない。私は基本的にオーダーメイドしか受け付けてないから希少価値が高いんだよ。その収入だけで生活できるくらいには売れている。みんな私の作品を好きだと言ってくれるけれど、特に蓮くんは好きって言ってくれるんだよね。たまに買わせろと言ってくるくらいには。
私、実は刺繍作家の道に進みたいと思っているんだよ。でもそうはいかない事情がある。私は一人娘だからお父さんの仕事を継がなければならない。そうなると時間の都合上厳しいから……最近は進路についてどうするか、すごく悩んでいる。
0
あなたにおすすめの小説
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
月の綺麗な夜に終わりゆく君と
石原唯人
恋愛
ある日、十七才の春に僕は病院で色のない少女と出会う。
それは、この場所で出会わなければ一生関わる事のなかった色のない彼女とモノクロな僕の
秘密の交流。
彼女との交流によって諦観でモノクロだった僕の世界は少しずつ色づき始める。
十七歳、大人でも子どもでもないトクベツな時間。
日常の無い二人は限られて時間の中で諦めていた当たり前の青春へと手を伸ばす。
不器用な僕らの織り成す物語。
『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』
本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」
かつて、私は信じていた。
優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な──
そんな普通のお兄ちゃんを。
でも──
中学卒業の春、
帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、
私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった!
家では「戦利品だー!」と絶叫し、
年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、
さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!?
……ちがう。
こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない!
たとえ、世界中がオタクを称えたって、
私は、絶対に──
お兄ちゃんを“元に戻して”みせる!
これは、
ブラコン妹と
中二病オタク姫が、
一人の「兄」をめぐって
全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──!
そしていつしか、
誰も予想できなかった
本当の「大好き」のカタチを探す、
壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる