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今世の自分
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しおりを挟む「……んんっ……」
うっすら目を開けると、鈍痛が頭を襲った。
「いったたた……」
「お、お嬢様!?目をお覚ましになったのですね?」
私の横たわるベッドの元に駆け寄ってきたのは、専属執事のジョセフだ。
淡い茶髪に緑色の瞳ーーーん?待って、ジョセフって……
「何、目を覚ましたのか!?」
バーンッと扉を開けて部屋に入って来たのは、お父様、続けてお兄様だった。
「うおーーん!エリザベス、お前が目を覚まさなかったらどうしようかと!!」
「そうだぞ!3日も眠ってたんだからな!」
お父様は私を抱きしめ、号泣している。お兄様は私の手を握り、手の甲に頬擦りしている。
「こらこら、エリザベスも年頃なのですから、2人とも落ち着きなさい」
窘めながら部屋に入って来たのはお母様だ。
「お父様、お母様、お兄様……ご心配をおかけしました。少し頭が痛みますが、もう平気ですわ」
「そうか……もう少し安静にしているのだぞ?」
「そうだ、今日は好物のブラウニーを買ってきてやろう!」
「お友達のビアンカ様から心配のお便りがたくさん届いていましたから、連絡しましょうね」
相変わらずこの3人は自由だ。口々に違うことを言って部屋から出ていった。
3人と入れ替わりで部屋に入ってきたジョセフは、大きめのお盆にたくさんの食べ物を持っている。
「お嬢様、3日も食べていなかったのです。ゆっくり、食べられる分だけで良いので、どうかお腹にお収めください」
「ありがとう、ではスープから貰えるかしら」
ジョセフはベッドのサイドテーブルにお盆を置き、私にスープの皿を手渡してから「失礼します」と部屋を出ていった。
ーーー1人になっている間に整理しよう。
私はエリザベス・シュラット。シュラット伯爵家の長女で13歳。
前世は高校生で、受験が終わった頃で…………そうか、大学の入学準備のために買い物に出たら交通事故で……
前世の両親には先立ってしまって申し訳ないと思う一方、パソコンとか高価なものを準備する前で良かった、と金勘定をしてしまった。
ーーーそれだけ私は図太かった、ということだろう。
そして、今世は生前ハマってた乙女ゲー、【恋愛物語~魔法の国で貴方と~】の世界のようだ。
なぜ分かったかというと、私は悪役令嬢ことビアンカ・シュタイン公爵令嬢の取り巻きの1人として、作中に登場していたからだ。
ちなみに取り巻きはもう1人いて、アリア・クーヘン侯爵令嬢という。ビアンカ様の言い分にアリア様が全面的に同調、私が「でも……」と言ってビアンカ様に怒られ、結局従うというのがいつもの流れだ。
恋愛物語はシリーズもので、この世界の~魔法の国で貴方と~を初めとした異世界もの、戦国時代や妖怪の和テイストのものなど、多岐に渡る有名な乙女ゲームだ。
ちなみに、「ラブストシリーズ」と呼ばれていて、~魔法の国で貴方と~は「ラブマジ」と呼ばれていた。
『ラブマジ2』の続編もあったが、プレイする前に転生してしまった。
さて、このラブマジでは5人の攻略対象がいたはずだ。確か……
王太子
宰相子息
騎士
悪役令嬢の兄
ーーーそして、私の専属執事の5人だ。
続編は他国の5人。多分。うろ覚えだけど。
ラブマジのヒロイン、マリア・ケルト男爵令嬢は、商会で力をつけた、平民上がりのケルト家の長女だ。家が商会のトップなのでどケチ根性の主婦のような性格という設定なのだが、それが攻略対象たちの興味を何故か引くのだ。
そのうち、悪役令嬢の出番は王太子ルート、兄ルート、執事ルートの3つだ。
それぞれ悪役令嬢は最後に痛い目をみることになるのだが、特に王太子ルートは酷い。王太子に捨てられ婚約破棄、後に隣国へ追放されるのだ。
(今まで婚約者だったのに鞍替えして捨てるなんて……実際にこの世界に来ると有り得ないわね……)
それに、ビアンカの取り巻きと表現したが、それは彼女がツンツンした性格で我が道を行くタイプなので、それに従う2人がそう見えたのだろう。
実際は仲の良いお友達だ。
ビアンカ様のシュタイン公爵家は王弟様が継承権を返上した事で出来た家で、その王弟様はビアンカ様のお祖父様だ。アリア様のクーヘン侯爵家と私のシュラット伯爵家はどちらも歴史ある名家で、3人は王宮の上位貴族向けのお茶会で知り合った。
(大事なお友達だもの……何とかビアンカ様のバッドエンドは回避しなくちゃ……!)
そう意気込んでオムレツを頬張った瞬間、バンッと扉が開かれた。
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