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今世の自分
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部屋に戻ると、ジョセフが手紙の用意をしてくれていたようで、勉強机の上に紙、ペンとインク、封筒、封蝋が準備されていた。
『ビアンカ様
ごきげんよう、ビアンカ様。寝込んでしまってすみませんでした。心配してくださって、とても嬉しかったです。
さて、体調が十分回復しましたので、15時から家でお茶会でもどうかと思いまして、お手紙を書いております。
もちろん、クルミのパウンドケーキを用意しますね。お待ちしております。
エリザベス
追伸 兄フレディが、ビアンカ様のお兄様にお会いしたいと申しておりましたので、ご都合がよろしければぜひご兄妹でいらしてくださいませ。』
こんなものだろう。アリア様にも追伸以外の所を同じように書き、ペンを置いた。
するとドアがノックされ、ジョセフがロウソクと蝋を持ってタイミング良く現れた。
封筒に手紙を入れた私は封蝋を手にし、ジョセフが溶かして落とした蝋に封蝋を押し付けた。
「ありがとう。それぞれ届けるよう手配してくれる?」
「かしこまりました」
一礼して退室するジョセフ。
窓の外を見ると、雲ひとつない快晴。
「よし」と立ち上がり、厨房へ向かった。
シェフにお願いして調理器具と材料を分けてもらった。
バターをかき混ぜ、砂糖、バニラビーンズを加える。薄力粉とベーキングパウダーを加え、私の取っておきの隠し味ーーー愛情も入れた。
ん?今バカにした人がいましたか?違うのです、本当なのです!
「美味しくなってね」と声を掛けると、本当に美味しくなるのです!
ーーーまあいいでしょう。最後に砕いたクルミを混ぜ、型に流してオーブンに入れた。
今日は時間があるので、家族や使用人の分まで作ってしまった。
火をかけて加減を見ていると、厨房の見習いの子が代わると申し出てくれたので、お言葉に甘えた。
40分後にもう一度来ます、と言い残して庭へ出た。
「おはよう、じいや。私もお花に水やりをして良いかしら」
「おはようございます、お嬢様。ええ、もちろんですよ」
庭の手入れをしていた庭師のおじいさん(じいや、と呼んでいる)に声をかけ、ジョウロを手に取った。
井戸の方へ行くと、メイド達がシーツなどを洗いながら世間話をして盛り上がっていた。
「おはよう、みんな」
「「おはようございます、お嬢様」」
数人はヤバい、という顔をしたが、何の話なのかは聞いていなかった。
「何の話をしていたの?」
「王太子様の話ですよ!2週間後の“鏡の儀式”で魔法の属性を測った後、夜会を開いて婚約者を見つけるのですって!」
「しかも伯爵家以上しか入れない夜会なので、お嬢様にもチャンスがありますよ!」
「こら、そんな事言わないの!」
小さい頃からしょっちゅう井戸にやって来てメイドの世間話を聞かせて貰っているので、おかげさまで私は情報ツウだ。
新入りのメイドは戸惑って世間話をやめてしまうのだが、先輩メイドが私とお喋りするのを見て、だんだん打ち解けていく。
使用人とも仲良く、というのは建前で、結局ワイドショー的なネタが好きなだけだ。
「そうね……私は王太子様との婚約は別に興味がないわ。それに、ビアンカ様が王太子様に思いを寄せていらっしゃるから……」
「そうでしたね、不躾な事を言って申し訳ありませんでした」
「うふふ、いいのよ。井戸端会議は無礼講だもの」
それからしばらくキャッキャウフフと会議(?)を続け、ジョウロを持っているのを思い出し、慌てて水を汲んで庭に戻った。
「おや、お嬢様……メイド達と会議は弾みましたかの?」
「やだじいやったら……当たり前じゃない」
冗談を言い合いながら、私も花の手入れを始めた。
と言っても、耕したりするのは流石に禁止されているので、枯葉や雑草を取ったりするだけだ。
根元に水をやると、ふわっと花が光るような感覚がする。太陽の光に反射して、草に乗った露がキラキラと輝く。
そろそろ焼けたかしら、とジョウロを返して厨房に戻った。
『ビアンカ様
ごきげんよう、ビアンカ様。寝込んでしまってすみませんでした。心配してくださって、とても嬉しかったです。
さて、体調が十分回復しましたので、15時から家でお茶会でもどうかと思いまして、お手紙を書いております。
もちろん、クルミのパウンドケーキを用意しますね。お待ちしております。
エリザベス
追伸 兄フレディが、ビアンカ様のお兄様にお会いしたいと申しておりましたので、ご都合がよろしければぜひご兄妹でいらしてくださいませ。』
こんなものだろう。アリア様にも追伸以外の所を同じように書き、ペンを置いた。
するとドアがノックされ、ジョセフがロウソクと蝋を持ってタイミング良く現れた。
封筒に手紙を入れた私は封蝋を手にし、ジョセフが溶かして落とした蝋に封蝋を押し付けた。
「ありがとう。それぞれ届けるよう手配してくれる?」
「かしこまりました」
一礼して退室するジョセフ。
窓の外を見ると、雲ひとつない快晴。
「よし」と立ち上がり、厨房へ向かった。
シェフにお願いして調理器具と材料を分けてもらった。
バターをかき混ぜ、砂糖、バニラビーンズを加える。薄力粉とベーキングパウダーを加え、私の取っておきの隠し味ーーー愛情も入れた。
ん?今バカにした人がいましたか?違うのです、本当なのです!
「美味しくなってね」と声を掛けると、本当に美味しくなるのです!
ーーーまあいいでしょう。最後に砕いたクルミを混ぜ、型に流してオーブンに入れた。
今日は時間があるので、家族や使用人の分まで作ってしまった。
火をかけて加減を見ていると、厨房の見習いの子が代わると申し出てくれたので、お言葉に甘えた。
40分後にもう一度来ます、と言い残して庭へ出た。
「おはよう、じいや。私もお花に水やりをして良いかしら」
「おはようございます、お嬢様。ええ、もちろんですよ」
庭の手入れをしていた庭師のおじいさん(じいや、と呼んでいる)に声をかけ、ジョウロを手に取った。
井戸の方へ行くと、メイド達がシーツなどを洗いながら世間話をして盛り上がっていた。
「おはよう、みんな」
「「おはようございます、お嬢様」」
数人はヤバい、という顔をしたが、何の話なのかは聞いていなかった。
「何の話をしていたの?」
「王太子様の話ですよ!2週間後の“鏡の儀式”で魔法の属性を測った後、夜会を開いて婚約者を見つけるのですって!」
「しかも伯爵家以上しか入れない夜会なので、お嬢様にもチャンスがありますよ!」
「こら、そんな事言わないの!」
小さい頃からしょっちゅう井戸にやって来てメイドの世間話を聞かせて貰っているので、おかげさまで私は情報ツウだ。
新入りのメイドは戸惑って世間話をやめてしまうのだが、先輩メイドが私とお喋りするのを見て、だんだん打ち解けていく。
使用人とも仲良く、というのは建前で、結局ワイドショー的なネタが好きなだけだ。
「そうね……私は王太子様との婚約は別に興味がないわ。それに、ビアンカ様が王太子様に思いを寄せていらっしゃるから……」
「そうでしたね、不躾な事を言って申し訳ありませんでした」
「うふふ、いいのよ。井戸端会議は無礼講だもの」
それからしばらくキャッキャウフフと会議(?)を続け、ジョウロを持っているのを思い出し、慌てて水を汲んで庭に戻った。
「おや、お嬢様……メイド達と会議は弾みましたかの?」
「やだじいやったら……当たり前じゃない」
冗談を言い合いながら、私も花の手入れを始めた。
と言っても、耕したりするのは流石に禁止されているので、枯葉や雑草を取ったりするだけだ。
根元に水をやると、ふわっと花が光るような感覚がする。太陽の光に反射して、草に乗った露がキラキラと輝く。
そろそろ焼けたかしら、とジョウロを返して厨房に戻った。
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