悪役令嬢専門お悩み相談係

米粉パン

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今世の自分

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厨房に入ると、焼き菓子の甘くて良い匂いが充満していた。

「あ、おかえりなさいませお嬢様!良い感じに焼けてますよ!」

厨房の見習いの子がイスから立ち上がり、嬉しそうに報告してくれた。

確か彼は9歳……小3で働くのって、すごいわね。


思わず親戚のおばさんのような目で見てしまい、彼の頭をなでなでした。

「立派に火加減を見られるなんて、すごいわね!」

男の子は「えへへ」と大人しく撫でられている。


「お嬢様、あまりうちのを甘やかさないでくださいよ。一人前にはまだまだ程遠いんですから」

ええー、と不満そうな声を出した男の子に、シェフは軽く小突いた。

「ラッピングはどうされますか?」

「15時にお友達とお茶会をするから、お皿に乗せてとっておくことは出来るかしら?」

「ええ、もちろんです。じゃあ、お茶会でお茶と一緒にお出しするようにメイドに伝えましょうか」

「助かるわ、ありがとう」


お茶請けの用意が終わり、ルンルンと自室に戻った。











約束の15時。

よく晴れた空の下、四阿の中で花に囲まれながらクルミのパウンドケーキを頬張る3人の少女がいた。


「まあエリザベスさん!このパウンドケーキとても美味しいわ!!持って帰りたいくらい!」

「ふふっ、ありがとうございますアリア様。マリー、厨房にまだあるはずだから、ラッピングしてお開きになる前に持ってきてくれないかしら?」

「かしこまりました」

「なっ……!エ、エリザベスさん?中々のお味でしたから、私もひとつお願いしたくってよ」

「ふふっ……ビアンカ様も、ありがとうございます。マリー、2人分お願いね」

「ええ、かしこまりました」


ニコニコと去っていくマリーを見送り、改めて目の前の2人を見た。

丸いテーブルを囲んで、私の左にいらっしゃるのがアリア・クーヘン侯爵令嬢様。青い髪はサラサラのロングストレートで、前髪は眉にかかるくらいで切りそろえられている。

切れ長の目はグレーで、クールビューティという言葉がお似合いだ。



そして、私の右側にいらっしゃるのがビアンカ・シュタイン公爵令嬢様。真っ赤な燃え上がる髪は、先が緩くカールしていて、ハーフアップにしていることで女らしさが強調されている。昨日のワンピースも素敵でしたけど、今日のものも可愛らしいわ。

金色のつり目はパッチリとしていて、まつ毛は長くて上向きだ。THEお嬢様、という雰囲気である。



ーーー私のハチミツ色の髪の毛を足すと赤・黄・青で信号機…………なんちゃって!



「お茶をどうぞ」

ビアンカ様から順にアリア様、私の目の前にカップを置いていくのはジョセフ。

彼が淹れる紅茶はうちで一番美味しいのよね。


それぞれありがとう、と言って紅茶に口をつけた。ジョセフは四阿の端で控えている。




「そういえば、“鏡の儀式”がいよいよ2週間後ですわね」

アリア様は少し興奮したように話し始めた。

「どの属性になるかしらね」

「ビアンカ様はやっぱり炎ではないかと思いますの」

「あら、やっぱり?お兄様も炎でしたしね。そういうアリアさんは水ではなくて?髪の毛も青いですし」


(判断基準そこ!?)と思ったのは心の中に留めておく。

「一番分からないのは貴方ね、エリザベスさん」

「え?」

ビアンカ様に話を振られたが、分からないとはどういうことだろう。

「え、じゃありませんわ。私は土かと勝手に予想したのですが」

「あらそうなの?私は木かと思っていたわ」

ほへー、私そんなふうに見えてるんだー。

「本当に、貴方は人のことばっかりで、自分のことは気にも留めないのだから……」

やれやれ、とビアンカ様。

「まあ、それがエリザベスさんの良いところですけれど」

微笑みながらアリア様。


「ふふっ、ありがとうございます。私は、お2人と仲良く出来ればどの属性でも構いませんのよ」

「……はぁ、まったく、エリザベスさんは無自覚の人たらしね」

「??アリア様、もう一度お願い致します」

「いえ、いいのよ」

アリア様はニコニコされていて、ビアンカ様は頬を染めて紅茶を飲んでいらっしゃる。


「ところで、私が気になっているのは、“鏡の儀式”ではなく、その後の夜会なのですが……」

「あら、恋バナの予感」

私はアリア様と目配せをし、硬直するビアンカ様をニヤニヤと見つめた。
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