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息の詰まる夜③
「ヒロインみたいに華やかに生きたいんでしょ?てるりは。俺じゃ、てるりをヒロインにしてあげられないし………そもそもあの子はカズ狙いで、俺なんて眼中にないだろうからね」
「………そっか」
ヒロインの相手は、カズさんみたいな何から何まで完璧な王子様キャラだ。
ドSキャラではないのが口惜しいけど、それを除けば完璧だ。
だから、私のターゲットはあくまでもカズさんオンリー。
高瀬さんみたいな脇役中の脇役なんて眼中に……
「………ねぇ、高瀬…」
床が擦れる音がしたと同時に、凛ちゃんの爪先が視界から消えた。
代わりに布みたいな物が視界に入る。
瞬時に、今日凛ちゃんが着ていた服だと気付く。
「……私じゃ駄目なのはよく分かった」
「楠木?」
今度は、ファスナーが降りる音が聞こえた。
まさか………と、背筋が凍り付く。
「高瀬の事はスパッと諦める。だから……一度だけで良いよ。最高の思い出を頂戴?」
まさかの急展開に心臓がバクバク。
息苦しさも感じる。
「………何してんの?服着なよ。目のやり場に困る」
「目逸らさないで」
脱ぎ捨てられたデニムがドサッと重い音を立てた。
「やっぱり、実は結構酔っ払ってんじゃない?」
「………かもね。お酒の力を借りないとここまで大胆になれないし」
意を決して、少しだけ顔の角度を変えてみた。
暗くてよく見えないけど、上下下着姿の凛ちゃんが高瀬さんに迫っている後ろ姿が何となく確認出来る。
「楠木ってもっと賢い女だと思ってた」
「そうなの?だとしたら残念……私、馬鹿なの。でも、こうまでしたいと思ったの、高瀬だけだから」
意外にも高瀬さんの声が冷静だ。
「……やめない?」
「やめないよ」
凛ちゃんの細い腕が背中に回る。
ホックが外れると、すぐにブラが剥がれ落ちた。
「てるりが起きたらどうすんの?」
「大丈夫だよ。あの子、一度寝たら叩いても起きないから」
いやいや、起きてるって。
今更後悔しても遅いけど、こんな事になるんだったら、さっきの時点で起き上がっていれば良かった。
ここで起きたら、気まず過ぎる。
かといって、このまま寝たフリをして、この先の官能的場面を目にするのは、私にとってかなり刺激が強い。
ここはどうにか、高瀬さんに凛ちゃんの誘惑を裁ち切って、暴走を止めて貰うしかない。
「楠木はさ、俺がヤり捨てみたいな残酷な事を平気で出来ちゃう最低な奴だと思ってるの?」
高瀬さんは、溜め息混じりに続ける。
「だとしたら心外だね………それとも、楠木はそういう最低な男が好きなの?」
「………違うよ。高瀬の全てが好き」
凛ちゃんは、只でさえ美人なのに、つるすべ肌のグラマラスダイナマイトボディーの持ち主。
細いんだけど、脱いだら凄いんです体型。
前に一緒に温泉に行った時、凛ちゃんの体に物凄い衝撃を受けた。
そして、同じ女として悲しくなった。
バストはつんと上向き、色白で色素が薄い為、先端も綺麗なお色だった。
たから、ついつい釘付けになっちゃって……
凛ちゃんに「キモいよ、アンタ……」と、冷たく言い放たれた思い出がある。
女の私でも鼻血とヨダレを同時に垂らしそうな体を目の当たりにしても、冷静さを失わずにいる高瀬さんを凄いと思った。
「ねぇ、高瀬……」
凛ちゃんがグラマラスダイナマイトボディーを武器に高瀬さんに詰め寄る。
「お願い………触って…」
「楠木、気は確か?冷静になってよ」
「……確かだよ。高瀬と繋がりたい…」
凛ちゃんが艶っぽい囁きに、女の私の方がドキドキさせられる。
「………それで楠木の気が済むの?」
「うん………満たされる」
二人がどんな表情をして見つめ合っているのか、さっぱり分からないし、想像すらつかない。
「後で馬鹿な事したって後悔しない?」
凛ちゃんが間髪入れずに言う。
「しない、絶対」
高瀬さんが僅かに「ふぅ…」と、息を漏らした。
と、その次の瞬間……
「ん……」
漏れ出た凛ちゃんの甘い声に体が震えた。
高瀬さんに引き寄せられた細い体は、彼に体重を預けるように力が抜けていく感じがした。
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