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ヒロインたる者④
カズさんとの会話は、凛ちゃんの事が中心。
それ以外は沈黙が多い。
高瀬さんが相手なら、ちっとも苦じゃなかった沈黙も、カズさん相手だと苦痛とまでいかないものの、ちょっと辛い。
次は何を話せば良いんだろう?話題を変えるタイミングは?と、悪い頭を駆使して考えるけど、ジャストな話題は何もない。
ただ、ひたすら注文したロコモコを口に運び、咀嚼してやり過ごすのみ。
カズさんはカズさんで、凛ちゃんの事以外、話を振ってきもしない。
「この店、派手ですよね。このロコモコも微妙だし」
「…………そう?ここ、俺の知り合いの店なんだよね」
「…………」
カズさんとは、根本的に話が合わない、生きる世界が違うんだ………って、理解した。
それと同時に、何で私は彼に執着していたんだろう?って、不思議で仕方がなかった。
見た目完璧、中身も優良、お家柄も中々なカズさんは、ヒロインの相手役として素晴らしい逸材だ。
だけど、私の相手としては、ピタリと填まりそうにない。
微妙な雰囲気でカズさんと別れた後、凛ちゃんからLINEが入っていた事に気が付いた。
【少し話したい。ガストで待ってる】
受信は1時間前。
来ない時は一通も来ないのに、携帯にお誘いメッセージが集中する時は集中するもんだ。
凛ちゃんとは、あの夜を境に会ってない。
お互いに何となく気まずさを感じてて、連絡を取り合わずにいた。
正直顔を合わせづらいけど、その後の凛ちゃんの様子が気になっていたのは事実。
勇気を出して会いに行く事にした。
話したいって、あの夜事の言い訳や愚痴なのかな?………なんて思いながら、凛ちゃんの待つファミレスに向かった。
「………遅い」
開口一番、怒りの籠った一言を頂戴した。
「どんだけ待たせんのよ。ドリンク6杯目。ドリンクバー、すっかり元取っちゃったんだけど?」
「えへっ……ごめん、ね?」
普段通りの凛ちゃんの様子にホッと胸を撫で下ろしながら席についた。
「何か食べる?私、飲み物で腹いっぱいだし、デザート系位しか入らないわ」
胃の辺りを擦る凛ちゃんに「私も…」と返す。
「食べて来ちゃったから、腹いっぱいの胸おっぱい………なんつって~」
「なら、取り敢えずドリンクバー頼んどけば?」
精一杯のギャグを凛ちゃんは華麗にスルー。
私としては、そこそこウケるかな?なんて思っていただけに、ちょっとショックだ。
「てかさ、LINEさっさと気付いてよ。中々既読つかなくてイライラしたわ」
「ご、ごめん……ご飯食べに行ってたから…」
ここで凛ちゃんの目が光る。
「へぇ……また高瀬と?」
「えっ…違うよ、カズさんに誘われて、変なハワイの店に行ってきただけ」
凛ちゃんの口から高瀬という単語が出ると、ドキッとする。
「あの店、高い割にはあんまり美味しくなかったんだよね~」
とか言いつつ、ちゃっかりカズさんに奢って頂いたのだけども。
凛ちゃんは「……ふぅん」と鼻を鳴らしながら、グラスを傾けた。
グラスの中身を空にした凛ちゃんが、どこか遠くを見るように言う。
「………アイツ、何か言ってた?」
「えっ?アイツって……カズさん?」
凛ちゃんが僅かに首を縦に振った。
「何かって……例えば?」
「…………別に。アンタに何も言ってなければいいよ。忘れて」
忘れて……と言われても、容易く忘れられる筈がない。
というか、逆に気になる。
「気になるじゃ~ん」
「気にしなくていい。てか、珍しい組み合わせじゃん、あの田中 一男となんて。舞い上がり過ぎて、ドジ踏まなかった?アンタの事だから」
さっさと話を切り替える凛ちゃんに、私は消化不良だ。
「だ、大丈夫だし。ただ、イケメンと何話せばいいか分からなくて戸惑ったよ」
凛ちゃんや高瀬さんを交えた四人の時は弾んだ話も、一対一じゃ何も弾まない。
カズさんは、私に対して積極的に話を振ってくる訳じゃないし。
「でも、良かったじゃん。お気に入りの彼からご飯に誘われて」
「いや、別に……それ程良くはなかったよ…」
ある意味、色んな事に気付けて良かったのかもしれない。
探し求めていた理想の王子様の相手は、私じゃ務まらないというのが、身に染みて分かった。
周囲の目にどう映つろうが何を言われようが関係ない、なんてのは綺麗事で、案外グサグサ来る。
何より、カズさんがあまりに凛ちゃんに夢中過ぎて……
カズさんへの熱は、一気に冷めた。
「それはそうと………実は、報告があってさー」
凛ちゃんの表情が明るくなる。
「えっ?何?………と、その前にドリンク取って来ていい?」
「おい………まぁ、いいけど。早く行ってきて」
話の腰を折って申し訳なく思いながら、ドリンクを取りに席を立つ。
気分的にオレンジジュースをチョイスした。
私がグラスを持って席に戻ったタイミングで、凛ちゃんが口を開く。
「高瀬と付き合う事になった」
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