ヒロインになりたい!!

江上蒼羽

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ハッピーエンドを引き寄せろ②


良いわぁ~きゅんきゅんする~!なんて悶えながら読む私は、不審者感倍増中。

区切りの良い所まで小説を読み、栞を挟んだ所で、辺りが真っ暗な事に気付く。

いつの間にやら、頭上の電灯も灯っている。


「…………帰って来やがらないし…」


ついでに連絡も来ない。



『もういい!帰る!!今日はこの辺で勘弁してやらぁ!!』



なんて叫びたい所だけど、その対象が居ないので、心の中で大絶叫しとく。

また出直しか………と、肩を落としながら部屋の前から去ろうとすると、階段を上がる足音が聞こえてきた。

その足音は、コンクリの床を蹴りながら近付いて来る。


「帰って来た……?」


足音に合わせて、心臓の音も大きくなって来た。

さっきまで早く帰って来いと思っていたくせに、帰って来たら来たでソワソワし出す、この矛盾。

うるさい心臓を落ち着かせようと、固く目を瞑る。

その時、ピタリと止まる足音。


「…………あれ……てるり…?」


高瀬氏、やっとお出まし。




帰ろうとした時に現れるなんて、ドラマのようなタイミングの良さ。

まるで月9のワンシーンのようなこの状況は、私のテンションを異様に上げていく。

ついでに体温急上昇、心拍数は………測定不可。




『ど、どうしたんだよ?急に……』

『………ごめん……何だか顔が見たくなって…』

『ったく……しょうがねぇな』



いじらしい彼女の言葉に胸熱な彼は、衝動に任せて彼女の小さな体を抱き寄せた………という月9的展開を急ピッチで妄想する。

しかしながら……


「どうしたの?」


普通は驚く所を何故か含んだような笑みを浮かべる高瀬氏。

妄想の中の俳優さんとリアクションが違う。


「LINE送ったんだけど。あと電話も何回かしたし………繋がらないから来てみた」

「えっ?嘘」


高瀬さんがデニムパンツのポケットから携帯を取り出した。

画面を確認して「本当だ、何回も来てた」と笑う高瀬さん。

その様子から、期待しても妄想通りの展開にはならないだろうな……と悟った。

だって、相手は高瀬さんだもん。


「気付かなくてごめん、パチ屋に居ると音うるさくて」

「…………そっすか」


私が待ち惚けている間、パチンコしとったんかい?!と、若干イラッとした。

そら、LINEの短い通知音なんか聞こえませんわな……なんて、心の中で毒づきつつ、次の言葉を探す。


「で、どうしたの?急に」


言いながら高瀬さんが玄関ドアの鍵穴に鍵を差し込んだ。

カチャンと音を立てて、施錠が解かれる。


「えっと………凛ちゃんとの約束を果たしたくて…」

「約束?…………よく分かんないけど取り敢えず入りなよ。コーヒーかペットボトルのお茶位しかないけど」


高瀬さんは、ドアを開けて玄関の電気を点ける。


「………パチンコ勝ったの?」

「んー?5000円負けた。最初は勝ってたんだけどね」


靴を脱ぐ彼を前に、私は部屋に上がる気なんて更々なくて。

本日の日程は、凛ちゃんとの約束通り、自分の気持ちを伝えるだけ伝えて退散し、家で恥ずかしさで悶え苦しむ予定としている。
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