ヒロインになりたい!!

江上蒼羽

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ハッピーエンドを引き寄せろ⑥



「あ、あの……高瀬さん、シャワー貸して下さい!!」


突然の私の申し出に高瀬さんは「はぁ?」と目を大きく見開いた。

これ、今までで最大の大きさ。


「な、何で?」

「だって………大抵の場合、気持ちが通じ合った二人はこの後、ベッドになだれ込み、情熱的にお互いを求め合う………がお決まりのパターンじゃん」


溢れる想いを抑えきれずに激しく求め合う二人。

普段優しい彼が、ベッドの上でドSに豹変。



『くくっ………こんなにして……体は正直だな』



サディスティックな笑みを浮かべながら見下ろされ、まな板の上の鯉状態の私。



『いや………恥ずかしい……言わないで…!』

『ふっ……俺色に染めてやるよ』



彼の手で女として花開いていく………みたいな。


「…………面白いけど流石に……てるりの頭ん中どうなってんの?」


高瀬さんのドン引き顔に若干傷付いた。


「まぁ………てるりの申し出は嬉しいけど、流石に今日はやめとこうよ」


我に返ったら、自分の発言がかなりヤバい事に気が付いた。

経験すらないくせして、大胆過ぎだ。


「俺はそんな急激な展開じゃなくて、これからじっくり関係を築けていけたら……って思ってるから…」

「…………うん、ですよねー……忘れて下さい」


先走った自分が原因とはいえ、漂う微妙な空気に耐えられずに立ち上がる。


「か、帰るね!またのお越しをお待ちしておいて下さい!」

「あ……てるり」


意味不明な言葉を発しながら、一目散に玄関に向かう。



馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だ。

私は、何てお馬鹿なんだ。

こんなんじゃ、普段からエッチィ事ばっかり考えてるド変態じゃん。

もう、最低。

折角高瀬さんも、私の事を好意的に見てくれてるのに、これじゃ嫌われるどころか、生理的に受け付けないって言われるのも時間の問題だ。



「………どうして私は、普通の思考でいられないのかなぁ?」


大体さ、この前の凛ちゃんと高瀬さんの絡みを目の当たりにしといて、よく言えたものだよ。

私にあんな濃厚なチューとか出来るわけないし、凛ちゃんみたいに色っぽい声出せないし、何より毛の処理が間に合ってない。

そもそも、あんなチューどうやって受けんの?

息継ぎとか、どのタイミングでするか分かんないし。

絶対私、水面で必死にパクパク口開けてる金魚みたいになっちゃうよ。


「ちょっと勉強せねば……」


ブツブツ独り言を吐きながら靴を履こうとした時、背後に高瀬さんの気配を感じた。

律儀に変態の帰宅を見送ってくれるのだろう……と思ったのも束の間、力強い腕が私の体を抱き寄せた。

背中に高瀬さんの温もりを感じる。


「えっ?えぇっ?」


状況が理解出来ない私の耳元で、高瀬さんがそっと囁く。




「………やっぱり、泊まってかない?」



ドッカーン!!!


脳内で火山が大噴火。

思考停止の、緊急避難指令発動。


「あ………あわわわわ……」


全身の血液が、マグマのように煮えたぎっている。


「てるり……」


高瀬さんの熱い吐息が耳にかかる。

免疫のない私は、当然失神寸前。

泊まるという事は、つまり、違う意味で眠れない夜を過ごさねばならないという事。


無理!絶対無理!!


「おっ、おっ、おおお……お断り申し上げる!!」


腕の中でバタつく私に、高瀬さんが笑いを含ませて言う。


「何?その急激過ぎる心変わりは………さっきまでその気だったじゃん」


同じ台詞を、そっくりそのまま返してやりたい。

というか、こんな不意打ち、心臓に悪いったらありゃしない。

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