ヒロインになりたい!!

江上蒼羽

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ハッピーエンドを引き寄せろ⑦



こうして、私と高瀬さんの清い交際がスタートし、生まれて初めての彼氏が出来た。

嬉しいけど、擽ったいような、照れ臭いような……色んな感情を抱えている。

夢に見ていたようなイケメン、ハイスペックな彼氏ではないけど、一緒にいると楽しいし、心が落ち着く感じがする。



「羨ましい。言っとくけど、案外高瀬ってモテるからね。あ、これ負け惜しみじゃなくて本当の話だから」


私を不安にさせようとする意地悪な凛ちゃんは、何だかんだ、散々文句を言っていたカズさんと付き合い始めた。


「………別に?アイツがしつこいから仕方なく付き合ってあげてるだけだし」


憎まれ口を叩きつつも、近い内にカズさんのマンションに引っ越す事になっているらしい。

文句なしにお似合いの二人だから、羨ましいとか、妬みや嫉みみたいな感情はもうない。

とにかく、大好きな凛ちゃんが笑顔でいてくれれば、私はそれで良い。


「これから会うの?」

「うん。凛ちゃんこそ、今日は彼の部屋でお泊まり?」

「ううん、今日はカズオが私の部屋に泊まりに来るの」


凛ちゃんとカズさんは進展が早く、既に大人の関係になってる。

それに対して、私と高瀬さんは、まだ手を繋いだり、時々キスしたりする程度。

学生カップル並みに初々しい。


「アンタもそろそろ許したら?高瀬なら優しくしてくれるよ、きっと」

「ゆ、許すも何も、そんな………ねぇ?」

「ねぇ?の意味が分かんないんだけど……まぁ、アンタ等のペースがあるもんね。野暮だったね」


ここで凛ちゃんが意味ありげに笑う。


「初体験に夢なんて見ちゃ駄目だからね」

「夢?見てないし~」

「アンタの事だから、初めてはベッドまでお姫様抱っこで運んで貰って~とか、ベッドにはバラの花びらが散らしてあって~とか、甘い囁きを浴びながら宝石の様に扱われたい!とか夢見てそうだもの」


少し前までならそう考えてたな……と、思わず苦笑い。


「でも逆に、高瀬さんがそんな事したら大笑いでしょ。ちょっと想像したくない」

「まぁね、高瀬はロマンチストって感じじゃなさそう。アンタはアンタでムードをブチ壊しちゃうタイプだろうし」


あの細い目で愛を囁かれたりしたら、笑いが止まらなくなる自信あり。





凛ちゃんとのお喋りの後は、彼の部屋に向かった。


「いらっしゃい、てるり」


優しく出迎えてくれた糸目の彼。

もうすっかり見慣れたけど、やっぱり目が細いんだよなぁ、これが。


「今度、猫を譲って貰える事になったんだ」

「えっ、本当?!貰う時、私も一緒に行っていい?」

「勿論。誘うつもりだったから」

「楽しみだね。色々グッズ揃えないとね」

「うん、一緒に選んでくれる?」


心なしか高瀬さんの表情が生き生きと輝いている。

本当に猫が好きだよなー……と、吹き出してしまいそうになるのを必死で堪えた。



最初は馬鹿にしていた彼の細い目。

彼の人柄を表している優しい目は、愛らしくもあり、人を強く惹き付ける魅力がある。

ドラマや少女漫画の世界じゃ、ヒロインのお相手はイケメンが鉄則だけど、イケメンが相手じゃなくても、十分キュンを味わえる事を高瀬さんと知り合って学んだ。



「きっと、この後の展開は……彼の元カノが現れて……」

「………てるりさん?」

「もしくは、協力なライバルの出現。二人の間を散々引っ掻き回し、二人の関係に亀裂が入ってヒロイン大ピンチ!!」

「もしもーし」


やっと想いが通じ合った二人を邪魔する、邪悪な影現る。

最愛の彼が奪われてしまうかもしれない不安から、疑心暗鬼になってしまうヒロイン。

彼に辛く当たったりして、ラブラブだった関係はギクシャクし始める。

そんな時に、ひょんな事がきっかけで知り合った人と良い雰囲気になりかけて……



『俺が傍に居るよ』

『でも私には彼が……』

『お前を不安にさせるような奴なんかやめて、俺にしとけよ』

『………でも…』

『俺ならお前をこんな風に泣かせたりしない』(熱視線付き)



みたいな展開になるかもしれない。

寧ろ、大体それが恋愛物のお約束だ。


「………うん、一度脳外科受診してみる?喜んで付き添うよ」


呆れ顔ながらも、その反面、どこか楽しげに彼が言う。


「というか、ヒロインなんてどうでも良くなったんじゃないの?もしかして、またヒロイン目指し始めた?」


いつだったか……

凛ちゃんが名付けた“ヒロイン願望症候群”は、一時治りかけたものの、見事にぶり返した。


「私は、私の人生のヒロイン。一生涯現役を約束します」


私のこの病気は、ある意味不治の病だ。

きっとこの先完治する事はない気がする。


「勝手に約束されても………近い内に、CT検査だな、こりゃ…」

「大丈夫だって」

「いやいや、よく診て貰った方がいいと思う」


細い目を限界まで細くして笑う高瀬さん。

その顔、凄く良いなー……と、見とれながら、いつぞやの母との会話を思い出す。

自分に丁度良い人がうんたらかんたら………

あれの意味を漸く理解し、受け入れた。

確かにしっくり来るというか、丁度良い。



「てるりの頭ん中、解体出来るならしたいね」

「ぷるんと張り艶良い脳が出て来まっせ」

「皺のないような?」

「あはは、殴ろうか?」



高瀬さんみたいな冴えない人なんて、一切合切興味なかったくせして私は、もう完璧に糸目の彼の虜だ。









***終わり***
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