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いつもの休日②[side:漣]
不意に肩を叩かれる。
振り返ると、奇抜なキノコヘアに黒縁眼鏡の独特の雰囲気を持つ小太りのおっさんが、お世辞にも爽やかとは言い難い笑顔で立っていた。
「よう!漣ちゃん、元気か?」
「堀さん」
こんな所で近所のおっさんに会うとは思わなかった。
しかも、よりによってウザイ系統の。
「どうしたー?若者が土曜の昼間っからパチンコなんてよー」
堀さんがバシバシ俺の肩を叩く。
「まぁ、やる事なくて暇なんで」
痛みに顔を歪めながら答えると、一際デカイ一発を浴びる。
「暇だぁ?彼女とデートしなくていいんか?んん?」
「居たらこんな所に来てませんよ」
途端に、堀さんが憐れむような視線を浴びせてくる。
「そいつぁ~何とまぁ……可哀想に。俺が漣ちゃんくらいの年頃はブイブイ言わせてたもんだけどなぁ…」
「…そうですか」
うん、まぁ………はっきり言って、むさいおっさんの武勇伝に興味はない。
というか、ブイブイの意味が分からない。
堀さんは俺の隣に座った。
絡む気満々らしくい。
「ま、漣ちゃんくらいの男なら、いくらでも女は寄ってくるだろ」
「そんな事ないですよ」
「もうすぐ祭りだ。屋台引いてりゃ、女は群がってくるしな。選り取り見取りだぞ」
堀さんが小汚ない笑顔を近付けてくる。
むわっ……と香る、加齢臭。
ちょっと………いや、かなり嫌。
「うーん………彼女は、今の所特にいいかな……って感じで…」
「おっ?何だ?今流行りの草食系ってやつか?」
「はは……どうかなー…」
彼女ねぇ……と、暫し思案してみる。
一応、一通りの事は経験してきた。
最後に彼女が居たのは、確か………2年前?
居たら居たで楽しいけど、その反面、面倒事も多々あった。
ワガママに振り回されるくらいは我慢出来る。
でも、時々何故か機嫌悪くなって………からのケンカ勃発が厄介で。
面倒臭いんだよね、アレ。
それから、甲斐甲斐しく世話を焼かれたりも好きじゃない。
程よい距離感でいられる相手が理想なんだけど、価値観が近い子ってのは、そうそう居るもんじゃない。
こうなれば、彼女を作る工程からして面倒になってしまってて……
強いて言うなら、強く興味を抱けるような魅力的な子がいれば、彼女を作る気になるんじゃないかと思う。
自分が面白味のない人間だからこそ、相手は強烈な面白いキャラクターが良い………というのは、ただのワガママか。
「一本吸うか?」
「ん、あぁ……ありがとうございます」
差し出された煙草を咥え、火を着けた。
堀さんの煙草は独特の風味があって、苦手だ。
けど、折角のご厚意を無下に出来ずに、我慢して吸う。
「漣ちゃんは、結婚する気はあんのか?」
「ん、まぁ………可能なら」
煙を吐き出しながら答えると、堀さんが沁々言う。
「結婚は良いもんだぞ」
本人的にはキメ顔で格好付けてるつもりなんだろうけど、こちらとしては苦笑するしかない。
「二度奥さんに逃げられてる堀さんに言われても説得力ないですよ」
「おいおい………言うなぁ、漣ちゃんよ」
パチンコの借金と女癖の悪さで、無駄にバツを増やしてる堀さん。
こうはなりたくないな……という、良い見本だ。
ウザいおっさんに絡まれて運を喪失したのか、儲けは微々たるもの。
負けるよりかはマシだけど、何となく悔しい。
リフレッシュのつもりが、逆に疲労感が増しちゃって溜め息が一つ飛び出した。
何気なく携帯を取り出すと、画面にはLINE表示が出ていた。
【仕事終わったー!】
【漣ヒマー?】
【飲み行かない?】
友達のカズから飲みの誘い。
しかも、立て続けに三件も。
こんな短い文なら、一つに纏めとけよ……等と思いつつ、すぐに返事を送る。
【良いよ。どこ集合?】
いくつかやり取りをして携帯をポケットに仕舞った。
まさか、この後の飲みで自分史上最高に面白い逸材と出会えるとは、夢にも思ってなかった。
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