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ガイドブック片手に①[side:輝子]
高瀬さんと付き合い始めてから暫く経過し、冬を迎える直前
「温泉入りに行かない?日頃の疲れを癒す為にさ」
という彼からの提案を受け、隣県に泊まり掛けで出掛ける事になった。
観光地という事で、折角だしあちこち見て回りたいな………と、ガイドブック片手にウキウキ心を弾ませている私に、凛ちゃんが言う。
「生理と重ならなきゃ良いけどね」
この言葉を受け、思わず「ホワ~イ?」と首を傾げた。
「温泉旅行と生理……関係あるの?………あぁ、そうか!漏れとか気になって、折角の旅行が楽しめないもんね」
凛ちゃんは「違う」とピシャリ。
「アンタと高瀬は、付き合って結構経つ訳じゃん。で、高瀬から温泉旅行の誘い………って事はつまり………分かるでしょ?」
「………はて?」
更に?を大きくさせる私に凛ちゃんは呆れ顔。
「そろそろエッチさせろって事でしょうが」
頭をガツンと殴られたような衝撃を受けた。
「なっ、何ですとー?!」
私の叫びは、迷惑にもファミレス中に響き渡った。
「というか、仕事帰りにちょくちょく高瀬の部屋に寄ったりしてんでしょ?今までそういう雰囲気にならなかったのが不思議」
部屋で二人でまったり~する事はあるけれど、特にこれといって
『キミが欲しいっ!!』ガバッ(←押し倒される)
『あぁっ!いけないわ!およしになって』
『もう駄目だ、我慢出来ない!』
という展開になった試しはない。
「多分、私に欲情出来ないんだと思う…」
「あぁ、確かに。アンタじゃ興奮しないわ」
「そんな正直に………酷いぃ…」
もし私が男なら、こんな変な女に興奮しないと思う。
「女になって帰って来な。ついでにお土産よろしく」
「えぇっ?!私、一皮剥かれちゃうの?!いやん、ハレンチ、ドッキドキ~」
「……………温泉に沈んで来い」
よくよく考えれば、生理が来たら温泉どころじゃない。
旅行出発の日、私の体調は万全だった。
凛ちゃんが変な事を言うから前夜は緊張で眠れないだろうと予想していたものの、その心配は無駄に終わり、昨晩はぐっすり良く眠れた。
寧ろいつも以上に快眠だったような気がする。
お陰で頭スッキリ、肌艶良好、ついでに快便快調。
自分は繊細だと信じて疑ってなかったけど、どうやら私の神経は人より太いらしい。
「おはよ、てるり」
愛車で迎えに参上されたし、高瀬氏。
いつもながら、目が細い。
「おはようであります、高瀬殿!本日はお日柄も大変よろしゅうごじゃりまふ…」
「噛んでるし……何故に軍隊口調?」
彼の笑いを堪える様を見ながら、図太いとはいえ一丁前に緊張しているらしい事を悟る。
高瀬さんの運転でドライブしながら目的地に向かう事になった。
彼が最近お気に入りだという、Aimerの曲を聴きながらのんびり国道を進む。
「なんか、クセのある歌声だね。嫌いじゃないけど」
「うん、クセのある歌声がクセになるの」
そんな会話を楽しみつつ、窓の外を流れる景色も楽しむ。
膝の上には、付箋だらけのガイドブック。
行きたい所、食べたい物、全てにチェックしてある。
これを見て高瀬さんは「メインは温泉だからね?」と笑ってた。
でも、可能な限り立ち寄ってくれるらしい。
心優しい好青年に感謝の意を示して、敬礼しといた。
そして、また笑われた。
途中観光スポットに立ち寄り、景色を堪能がてら名物を食したり、売店で試食をしてみたり……
道の駅に寄り、物珍しい物を口にしたり、直売所にて、出来立ての品を味わったりもした。
お昼ご飯もしっかり食べ、胃の調子の良さを実感する。
…………というか、家を出てから、食べてばっかりだ。
いや、まぁ………折角だし、美味しいものを色々食べたいじゃない?なんて。
「のどかだね~」
「うん、少し寒いかな?大丈夫?」
「平気。日が差してるから、そんなに寒くないよ」
恋人らしい会話を楽しみつつ、腹ごなしに立ち寄った湖周辺の遊歩道を歩く。
終わりかけの紅葉が哀愁を漂わせているけど、季節の移り変わりを目の当たりに出来て、中々良い。
太陽の光が反射して湖の水面がキラキラ光っていて、その様子に高瀬さんが「眩し…」と、元からの細目を細めた。
「眩しい?私が?」
「…………うん、そう思っときなよ」
うん、非常に恋人らしい会話だ。
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