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幸せな時間①[side:漣]
どうやら、一人暮らしの男が動物の里親として名乗り出てもあまり歓迎されないらしい。
ネットで公開されている猫の里親募集……
その条件は厳しく、特に俺みたいに一人暮らしの男は端から対象外とされている。
保護猫の譲渡会に行っても、やんやり断られる。
何でも、男は転勤や結婚等のライフスタイルの変化で猫を手離す事が多く、里親としては敬遠される………らしい。
猫が飼いたくてペット可のアパートにわざわざ越したにも拘わらず、これはちょっと切ない。
どうしたもんかなー……なんて考えてたら、以前てるりと出掛けた猫カフェが諸事情で閉店する事を知った。
店の猫達の行く末がどうなるのか気になって、店に問い合わせてみた所、猫達の次の飼い主は決まっているとの事。
ただ、一匹を除いて。
「お邪魔っしまーす!………テルにゃ~ん!会いたかったよ、myプリチー!」
俺への挨拶はそこそこに、一目散に部屋の奥へと突進して行く彼女のてるり。
「いやん、もふもふ~!」
「にゃぁぁん」
寛ぎモード全開のサビ猫に飛び付き、頬擦りしたり、匂いを嗅いだり……と、てるりさんの愛情表現はかなり激しい。
「てるりさん………テル子嫌がってるから…」
「だって、存在自体が可愛過ぎるんだもん!テルにゃ~ん、テルテルにゃ~ん」
「愛情表現が狂気じみてる……」
「もう、可愛くて食べちゃいた~い」
「やめなさいって」
猫可愛がり………とは、この事か。
てるりの愛情表現は、ある意味動物虐待に近いものを感じる。
『どうしてだか、この子だけ引き取り手が決まらなくて……』
店の隅で黄昏ていたグレー地に所々斑に茶色が入ったサビ猫のテル子を指差しながら、店主が言った。
『サビ猫って、一般的にあまり好まれないんでしょうかね…あんなに可愛いのに…』
その時の哀愁漂うテル子の後ろ姿が何とも言い難かったのを良く記憶している。
てるりとの関係を結ぶのに少なからず貢献してくれたサビ猫のテル子。
運命だなんてロマンチスト野郎みたいな事を言うつもりはないが、この状況は俺の胸を熱くさせた。
俺は、溜め息を吐く店主にテル子を譲って欲しいと頼んでみた。
幸い店主は、たった一度しか来店していない俺とてるりの事を何故かしっかり覚えていて、譲っても良いと、快く言ってくれた。
後日、てるりと一緒に引き取りに行った際には
『あ、友達から恋人になったんですね!やっぱりお似合いですもんね』
と、いやに喜ばれ、気恥ずかしい思いを体験させて頂いた。
テル子は、俺の部屋をすぐに新しい住みかとして認識し、受け入れた。
我が物顔でベッドを占領し、夜は運動会を勝手に開催してくれたりする。
いつの間にやら、主の俺よりデカい態度になっている。
まぁ、可愛いし猫の居る幸せを満喫出来ているから不満はないけど。
「おお~う、テルにゃ~ん!可愛い!可愛過ぎるぜ、キミは!」
「………」
テル子が我が家に来てから、てるりの訪問回数が増えた。
仕事帰りにちょいと寄っては、テル子を揉みくちゃにして帰って行く。
「あぁ、もう!可愛過ぎてけしからん!特にこのお尻のライン!いやらしくて、けしからんお尻だ。ハァハァ……実にけしからん!」
「………てるりさん……変態っぽいからやめなさい」
この壊れた様子を見ていると、俺よりてるりの方が猫好きなのかもしれない。
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