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理想のプロポーズ①[side:輝子]
女子には、それぞれ理想のプロポーズがある。
最愛の人から指輪と共に愛の言葉を頂戴するシチュエーションに夢を抱かない女子はいないのではないだろうか?
結婚適齢期と呼ばれるお年頃になり、それを意識した恋人が居るなら尚更……
当然私も来るべき日に向けて、何パターンも妄想し、それに対しての返事を用意している。
日々妄想にトリップしては、シミュレーションを入念に行っている。
抜かりはない。
ある日曜の昼下がり
彼を我が家に招いてお茶していると、ニコニコ顔の母が突拍子もなく言った。
「で?高瀬さんは、ウチの輝子をいつお嫁に貰って下さるの?」
その言葉に、飲んでいたお茶を「ごふっ…」と噴いた。
「ちょっと………汚いわね」
母の冷たい視線を浴びて、口元じゃばじゃばのまま睨み返す。
「や、だってお母さんが変な事………」
「変な事も何も、大事な事じゃない」
いや、ある意味よく聞いてくれた………と母に感謝したい所だけど、あまりに唐突過ぎて反応に困る。
チラリと隣の様子を窺うと、母からの不躾な質問を浴びせられた当の本人はこれといった反応もなく……
代わりに今の今までテレビに夢中だった父がしゃあしゃあと口を挟む。
「こんな粗品にもならん娘なんか欲しがらないだろ。押し付けたら迷惑だろうに」
だとさ。
悔しいけど、父の言葉は正しい。
反論出来ずに、むぅっと頬を膨らませてみた。
我ながら見事な膨れっ面。
粗品以下の女を嫁に………なんて、高瀬さんもさぞかし返答に困るだろう。
誰もが振り向く美女でもないし、スタイルが良い訳でもない。
性格が良いという自信はないし、頭だって悪い方だ。
沢山の資格を武器にバリバリ仕事するキャリアウーマンじゃないし、かといって家庭的なタイプでもない。
趣味は妄想とイケメンウォッチング、凛ちゃん曰く、私の特技は激しい思い込み。
これといって何の取り柄もない………寧ろ、ちょっと頭がヤバい系の私の何が良くて付き合ってくれているのか果てしなく疑問だ。
そんな私との結婚を、果たして高瀬さんは考えてくれているのだろうか?
…………考えている訳ないか…
自分が男だったなら、まずこんな奇っ怪な女は選ばない。
だって、キモいもん。
高瀬さんが何を好き好んで私と付き合っているのかは分からないけど、一緒に居てくれているだけで満足だ。
結婚して欲しいだなんて図々しい事は思ってない。
嫁に貰ってくれたらラッキー!ぐらいの感覚でいるべきだ。
淡い期待はなくもないけど。
だから高瀬さんの「頂いてもよろしいんですか?」という言葉に、耳を疑わずにいられなくて……
「どうぞどうぞ、遠慮なく」
「じゃあ、近い内に」
嬉しそうな母と高瀬さんのやり取りが他人事の様に感じた。
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