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漣くんの密かな楽しみ②[side:漣]
これまた別の日。
「むふ~…」
彼女のふやけた声に頬が緩む。
また始まった………と。
「てるにゃん、て~るにゃん」
今日の“徹子の部屋”ならぬ、“てるりの部屋”のメインゲストは猫のテル子か。
「もっふもっふ、オーイエー」
「…………」
オッ………オーイエー……?
「むふふ………こりゃたまらんばい」
何故に博多弁?
………にしても、てるりの夢の中で揉みくちゃにされているであろう猫のテル子が不憫で仕方がない。
可哀想に。
更に別の日。
「んんー…」
寝言の前触れを察知して、耳を澄ませる。
「ん、んー………うん……むにゃむにゃ…」
何を言うんだろう?と待っていると…
「ううーん……むにゃり……………」
大した事は言わずに再び寝息を立て始めた。
「…………残念。今日はナシか…」
時にはこういう日もある。
てるりの寝言を聞く事で、彼女と彼女の夢を共有している気分になる。
幸せそうな寝顔、時に険しい表情………見ていて全然飽きないし、どれをとっても面白い。
面白い………というか癒される。
だから彼女が部屋に来た日は、敢えて引き留めて泊まっていくように促す。
まぁ、下心もあるんだけど。
「てるりさん………服着ないと風邪引くよ?」
毛布にくるまるてるりに服を着るよう促すと、彼女は「んー…」と気のない返事。
「おーい、てるり」
「…………脱がせたの高瀬さんじゃん…」
「ん………まぁ…そうなんだけど」
グダグタ言ってるてるりにどうにか服を着せて、寝かしつける。
のび太並みに速攻で寝落ちするてるりの器用さに込み上げてくる笑いを噛み殺しながら、隣に横たわった。
「おやすみ、てるり」
その夜の事だった。
「…………んー……ふふ…」
今日もまた始まったな………と、ほくそ笑む。
「おいしいねぇ~…」
寝言を言いながら口をモグモグ動かすてるり。
「………何か食ってるし」
相変わらずてるりは愉快だ、面白い。
今日はどんな夢を見ているんだろう?
非常に興味深―――…
「漣くん…」
あまりに突然で意表を突かれた。
いつまで経っても名字にさん付けでしか呼んでくれないてるりに名前を呼んで貰えるなんて。
「ん………漣くん、待ってよ~」
これは嬉しいサプライズだ。
本日の“てるりの部屋”に俺が出演しているらしい事を知り、嬉しくて堪えようにも笑いが止まらない。
てるりの夢に登場する俺はどんな感じだろう?
翌日、目を覚ましたてるりに聞いてみる。
「どんな夢を見てたの?」
てるりは「んー…何だっけ?」と、暫く考え込み「あぁ、そうだ!」と、手を叩く。
夢の内容を思い出してか、ほんのり笑みを浮かべている。
――夢の中で俺と何をしてたの?どんな会話をしていたの?
早く聞きたくてウズウズしていると…
「俳優の桐山漣くんとデートしてる夢を見たんだよ」
「…………え…」
期待していただけに、ガッカリ感が凄い。
「すんごい楽しかっ―――…あたっ!」
期待した自分と、夢の中だけど浮気をしたてるりに腹が立って思わず軽く彼女の頭にゲンコツを落とした。
「えっ…何故に?何か怒ってる?えっ?えぇっ?」
「…………別に」
てるりは、やっぱりてるり。
期待を裏切る天才だ。
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