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我が主について②[side:猫のテル子]
思えば、猫カフェに客として来た時は普通だった。
「あぁ~テルにゃ~ん、テルンテルンで可愛いよぉ~」
それがどうしてこうなる?
というか、テルンテルンって何だよ、意味わかんねー…
こんな不気味で気持ちの悪い女が、どうやら漣サマのお気に入りらしく…
女の壊れかけた様を呆れ半分、微笑ましさ半分といった具合で見守っている。
そんな漣サマに今一度問いたい。
この変態のどこが良いの?と。
初めこそ暴れまわって、もがきまくっていたけれども
最近は大人しくしていれば、多少は早く解放されるという事を学習した。
「はあぁ~テルにゃん、にゃにゃんにゃん~」
「…………ニャアァ…」
散々揉みくちゃにされ疲労困憊、逃げる気力もなく、その場で横になる。
「…………気が済んだ?」
漣サマが笑いたいのを堪えながら言った。
「ん、満足ゲージは6割り方まできた感じかな」
「そっか……まぁ、でもそろそろ止めたげて。テル子が可哀想」
ここで漸く助け船が出た。
遅過ぎるけど。
「ところで………その包みは?」
漣サマが女の荷物の中にあった紙袋を指差した。
「あぁ、これ?ふふふ……」
女は不気味に笑いながら紙袋を開ける。
「やっと手に入れましたよ、お代官様……」
紙袋から出てきたのは、分厚い本………らしきもの。
「南蛮より苦労して密輸致しました、阿片でございやす………どうぞお納め下さいませ……げへへ…」
「……………うん、本屋で購入したゼクシィだね」
女の悪ノリに対して、漣サマはいつだってクールだ。
漣サマの反応に不満だったらしい女は、頬を膨らませる。
「もう!ここは、越後屋……お主も悪よのぉ…が鉄則でしょー!漣くん、ノリ悪し!」
「いや、俺はてるり劇団の劇団員じゃないから」
女の戯言を軽くかわして、漣サマは本をパラパラ捲る。
「凛ちゃんがね、買っとけってしつこく言うからさぁ」
「あぁ確かに必要かも。見れば参考になりそうだしね」
女の左手で何かがキラリと光る。
何でも婚約指輪……なんだと。
猫でいうならば、首輪みたいな物らしい。
「レジに持っていくの緊張したよ」
「何で?」
「だってさ、レジの店員さんに
“えっ、お前、相手いんの?いないくせに見栄張んなよ。いや待てよ………あ、そうか!妄想か!妄想のオカズにするんだな。可哀想に…”
とか思われてたら嫌じゃん。もう財布を持つ手が震えたよ」
「そこまで考えるなんて………てるりさん流石です」
「思春期の男子中学生がお小遣いはたいて、エッチィ本買う時、きっとあんな思いなんだろうな……うん」
「………ちょっと違うと思うよ。というか、年齢確認されて売って貰えないだろ…」
大真面目な顔で言う女と、それを苦笑いで、だけど楽しそうに聞く漣サマ。
奇妙な二人だ。
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