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【1】
しおりを挟むその声を初めて聞いた時、脳天が痺れる程の激しい衝撃を受けた。
『こっちにおいで』
「………っ、」
耳に響く声は優しくて甘い。
声の主は、悪戯っぽく私を挑発するように囁く。
『何照れてんの?ねぇ、早く』
「………はぁぁ…」
深い深い溜め息を吐いた。
『あは、可愛い』
「……っ、ぐぅぅ………」
胸がキュンキュンと高鳴る。
『今日も良く頑張ったね、お疲れ様』
低く甘い声に蕩けそうになりながら、目を固く瞑った。
『ご褒美に良い事しようか?』
チュッ……と艶かしいリップ音がしたと同時に、声にならない声が出た。
耳を強く握るとイヤホンが奥に食い込む。
『………ヤバ……興奮してきた』
切羽詰まったような吐息混じりの声に対して呟く。
「その台詞、私が言いたい……」
穏やかで優しい低い声。
かといって低過ぎない、丁度良い高さ。
やや甘めで妙に色気を孕んだこの声は、私の好みのど真ん中で、ずっと聞いていたい位心地好い声だ。
『本当はもっといじめたいけど………明日も早いでしょ?』
名残惜しそうな声に「やっ……大丈夫!もっと…」と返してみるも、声の主に私の声は届かない。
『おやすみ、また明日ね』
「っ………」
音声が途絶え、スマホの画面には“高評価”、“チャンネル登録お願いします”の文字が並んだ。
「う………終わってしまった……」
スマホを握り締め、天井を見詰める。
「おやすみって………こんな声聞いたら余計眠れないよ」
少しくすんだ色の天井に向かって溜め息を吐いた。
「………もう一回聞こう」
興奮冷めやらぬ状態で、スマホの画面の真ん中に表示されている再生ボタンをタップした。
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