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しおりを挟む数秒間を置いた後、彼はこちらを振り返らずに「……存じませんが」と返してくる。
その声はやはりリュークの声と似ている。
「それが何か?」
「最近頻繁にリュークという方の動画を視聴しているんですけど、久世さんの声が彼の声にとても似ているので本人かと思いまして……」
久世さんは私に背中を向けたままだから、彼がどんな表情をしているかは分からない。
「…………けど、ご存知ないようなので、久世さんはリュークとは無関係みたいですね。失礼しました、忘れて下さい」
「………はい」
世の中には声質の似た人がいくらでもいるだろうから、今回は残念ながら私の早とちりだったのだろう。
動画配信者がこんな身近にいる筈ないだろうし。
「でも本当に似ているんですよ。興味があったら聞いてみて下さい。後で島津さん………一緒に外観検査している子なんですけど、その子にも聞かせてみようかなって思っ―――…」
「てるんですよ」と言い切る前に、久世さんが竜巻を起こしそうな程の猛烈な勢いで振り返った。
そして物凄い早さで詰め寄り、私の両肩をガシッと掴む。
その手には強い力が入っている。
「…………今日の業務終了後、お時間ありますか?」
「え………?」
いきなりの久世さんの行動に驚かされたものの、すぐにその意味を理解した。
私の肩を掴む手が小刻みに震えている様、切羽詰まったような………怯えたようにも見える表情が私の疑問の答えそのものだった。
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