17 / 74
10月9日
しおりを挟む10月9日(水)
この日も特に検査はなし。
仕事を早く上がらせて貰い、16時前に病院へ滑り込んだ。
内科医、神経内科医との面談があった為。
病気と今後の治療についての話を家族にしておきたいとの事だった。
旦那は一人で聞くのでも構わないと言っていたけれど、私は是が非でも参加したかった。
今の今まで担当医と話が出来なかったし、聞きたい事も聞けずモヤモヤしていたので、この機を決して逃したくなかった。
病室で旦那と待機していると、別室に呼ばれた。
そこはスタッフステーションの隣の処置室と書かれた部屋で、中には内科医、神経内科医、看護師、研修医と私と旦那の6名。
物々しい雰囲気の中、私と旦那は取り囲まれる形で座らされ、まずは内科医からの説明を受けた。
リウマチ等の難病のいくつかを総称して膠原病と呼ぶのだけれど、その膠原病の内、皮膚筋炎、関節リウマチ、シェーグレン症候群を旦那が患っているが為に間質性肺炎を引き起こしたのだそう。
本来なら体を守るべき抗体が旦那の体を攻撃している状態らしい。
難病なので完治はしない、ステロイドパルスでこれ以上進行しないよう抑えなければならないと説明を受けた。
ステロイドは副作用が沢山あって、その内一番気を付けなければならないのが免疫がなくなる事。
感染症にかかり易くなるそうで、重症化もし易いそう。
と、ここまではある程度調べていたから知識としてあった。
けれども説明された副作用のあまりの多さにびっくりした。
高血圧やら糖尿病やら、緑内障やら……医師によって書き出された副作用の数、20以上。
必ずしもそうなるとは限らないけれど、ならない保証もない。
下手したら、いくつかの副作用が同時に起こるかも……と思ったら、ぞっとした。
それから肺のレントゲン写真を見せられた。
やはり、肺の下の辺りがぼやーんと曇っていた。
旦那の会社は毎年2月に健康診断があるのだけれど、その時に胸部の撮影もある。
それを思い出して、ボソッと「2月の健康診断時に見付からなかったもんですかね…」と呟いてしまった。
私の嘆きに近い呟きを拾った医師は「さすがに分からなかったろうなぁ…」と。
医師と対面した時に色々と聞きたい事があったのに、内科医の高圧的な態度に萎縮してしまい、聞きたかった事が全部ふっ飛んだ。
その中で辛うじて質問出来たのは、旦那の間質性肺炎は症状が軽いのを1と例えたして、1~5で言うならどの段階なのか?という事。
内科医の返事は、間質性肺炎としては早い段階で見付かったけれども、膠原病はかなり重篤な為、決して油断してはならない……だった。
突き放すような物言いの内科医を私と旦那はどうにも受け付けなかった。
ほぼ一方的に話すだけ話して内科医が出ていった後、神経内科の医師の説明が始まった。
彼は旦那の皮膚筋炎、関節リウマチ、シェーグレン症候群についてとても分かり易く説明してくれた。
シェーグレンは、比較的女性がなり易い病気で、割合的には男性1:女性9で、旦那の例はかなり珍しいのだそう。
ここでも難病だから完治はないとはっきり断言され、落ち込んだ。
原因不明の特発性間質性肺炎より、原因が特定されていてダイレクトに治療を行える膠原病性間質性肺炎の方がまだマシというか……長く生きられる可能性が高いと私は勝手に思い込んでいたので、結局どちらも大して生存率は変わらないという事を知り、更に落ち込んだ。
神経内科の医師は、突き放すような言い方をした内科医とは違い
「今は難病で治らない病気だけど、これらの病気を治そうと色んな研究が行われているから、いずれ効果的な新薬が開発されるかもしれない。それまで辛いだろうけど耐えて下さい」
と、励ましてくれた。
「何か聞きたい事があればいつでも声掛けて。いつもその辺ウロウロしてるから」
とも言ってくれ、凄く親身になってくれるいい先生だな……と思った。
実際、よくウロウロしてるのを見掛ける(笑)
この人、三国志とかにモブで出てきそうなお顔だなぁ……なんてかなり失礼な事を神経内科の医師に対して思ってしまった事を大いに反省した。
すみません。
その後、難病申請について説明を受けた。
国が指定している難病にかかった場合、申請をして通れば医療費がどれだけかかってもかなり安く抑えられるそう。
家庭の収入によって違いはあれど、最大でも一月30000円程度で済むという、非常にありがたい制度。
色々と揃える書類があって少々手間を感じるけれど、貯金が少なくお先真っ暗な状態から僅かに光が差し込んだ。
帰り際、エレベーターの前で
「難病って凄い確率だよね、宝くじも当たらないのに」
「宝くじは買わないから当たらないんじゃん」
「宝くじ買ってみる?当たったりして」
みたいな会話を笑い事じゃないのに笑いながらした。
本当はお互い泣きたいくらい落ち込んでいたのに。
この面談の時、内科医からシェーグレン症候群を知っているかと問われ、咄嗟に「和田アキ子がかかってる病気ですよね」と得意気に答えた私だったけれど
あの重苦しい雰囲気の中、何故和田アキ子の名前を出してしまったのか………と帰りのエレベーターの中、一人恥ずかしさに悶えてた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
痩せたがりの姫言(ひめごと)
エフ=宝泉薫
青春
ヒロインは痩せ姫。
姫自身、あるいは周囲の人たちが密かな本音をつぶやきます。
だから「姫言」と書いてひめごと。
別サイト(カクヨム)で書いている「隠し部屋のシルフィーたち」もテイストが似ているので、混ぜることにしました。
語り手も、語られる対象も、作品ごとに異なります。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】知られてはいけない
ひなこ
ホラー
中学一年の女子・遠野莉々亜(とおの・りりあ)は、黒い封筒を開けたせいで仮想空間の学校へ閉じ込められる。
他にも中一から中三の男女十五人が同じように誘拐されて、現実世界に帰る一人になるために戦わなければならない。
登録させられた「あなたの大切なものは?」を、互いにバトルで当てあって相手の票を集めるデスゲーム。
勝ち残りと友情を天秤にかけて、ゲームは進んでいく。
一つ年上の男子・加川準(かがわ・じゅん)は敵か味方か?莉々亜は果たして、元の世界へ帰ることができるのか?
心理戦が飛び交う、四日間の戦いの物語。
(第二回きずな児童書大賞で奨励賞を受賞しました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる