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しおりを挟むアイブロウ先輩が戻って来る気配はない。
だからといって荷物をそのままに出来ないよな……と思い、簡単に纏めてカバンに詰め込んだ。
自分の荷物と先輩の荷物を担いで図書室を出る。
カギはいつも先輩に任せていたからよく分からない。
取り敢えずカギはかけずに電気だけ消した。
先輩はバス通だと言っていたから、カバンを置いたまま帰ったとは考えにくい。
携帯もカバンの中にあったから、まだ校内に残っている筈。
まさか、この歳になってかくれんぼの鬼役をやるとは思わなかった。
非常灯だけが灯る薄暗い廊下の突き当たり、角を曲がった所で、何かの塊が微かに動いた。
よく目を凝らして見ると、それはしゃがみ込んだ人影で
「………アイブロウ先輩、なーにやってんすか…」
俺の問い掛けに大袈裟に体を揺らした。
「………れた……」
「ん?」
「……ビックリして飛び出したはいいけど、荷物全部忘れてきちゃった……」
悪さがバレて叱られる直前に懺悔する子供みたいに涙声の先輩。
「も、戻るに戻れなくって……」
暗くて寒い廊下で一人膝を抱えて途方に暮れてたであろう事を想像すると、笑いが込み上げてくる。
決して馬鹿にしている訳じゃなくて、先輩が可愛くて微笑ましくて。
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