物語の始まりは…

江上蒼羽

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その日の放課後、百田に図書室に呼び出された。


図書室に行ってみると、呼び出しておきながら百田はいない。

いつもならアイブロウ先輩がいる時間なのに、今日はまだ来ていないようだ。

定位置に腰を降ろしたタイミングで、ドアが開いて誰かが入ってくる音がした。

アイブロウ先輩かと思えば百田で。


「いちいち睨みつけるなよ」


ヤツは苦笑しながら向かい側に座る。

そこ、アイブロウ先輩の場所だし……と心の中で毒づく。


「まずは課題ご苦労さん」


上からな感じで言って、俺が提出した課題を机に置いた。


「率直な感想は良く書けてると思ったよ。若者の心の叫びがガツンと胸にくる」

「……それはどうも」


素っ気なく返す俺に対して百田は余裕の表情をしている。


「取り敢えずは親呼び出しを免れたな。だが、次はないぞ?」


脅しとも取れる牽制をして百田は口角を引き上げる。

その圧倒的な大人の余裕がさっきからずっと癪に障って仕方がない。

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