明楽日生

江上蒼羽

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7月23日(金)

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4連休2日目で既に曜日感覚がおかしい。

どうにも土曜日のような感覚で変な感じ。



空を見上げると、やや赤みがかった満月がぽっかりと浮かんでいてとても幻想的だった。

月の隣に夏の大三角と呼ばれる星が煌めいていた。

昨年理科で星座について習った下の娘と「あのお星蠍座かなー?」「そうかもねー」等と話しながら夜道を歩いた。


私の地元には伝統的な大きな祭りがあるのだけれど、例のウィルスを考慮して2年連続で中止になっている。

とはいっても、祭りの練習はある。

屋台と呼ばれる山車を引けなくとも、笛や太鼓の伝統を後々に引き継がなくてはいけないので。

で、私の住む地域では小学生中学生共に子供の数が少ないので、ほぼ強制参加。

田舎特有の空気感から嫌でも顔を出さねばならない。

地域の行事に参加しないと、村八分………とまではいかないものの「あの家ちょっと変わってるよね……」とヒソヒソされるもんで、コミュ症なりに頑張って参加。

他のお母さん方とお話する貴重な機会だったりするしね。

上の娘はお友達にくっついて笛の練習。

下の娘は、同学年の子がいないのと、昨年引っ越してきたのでまだ馴染めていないのがあり、私が付き添った。

町内で管理している竹製の横笛を借りて練習したのだけれど、中々音を出すのが難しく、娘は苦戦しているようだった。

母はハラハラ。

その横で今年入学したばかりの1年生の女の子がパパと一緒に参加して練習していた。

女の子のママは異国の方なのだけれど、文化の違いと不自由な日本語に苦戦しながらも一生懸命子育てされてる印象。

けど、今日一緒に付き添いで来ていたパパは結構高齢の方で、65歳~70歳くらいかな?

娘が可愛くて仕方がないのか、かなり甘やかしている印象を受けた。


「もうやだ!音出ない!」


女の子が思うように音が出せず癇癪を起こして笛をテーブルに叩き付けた時もやんわり「何やってんだ~」と言うだけ。

おいおい……町内で大切に管理してる笛を乱暴に扱ってるのに注意しないんかい……と私が呆れていると、笛を教えてくれていた青年会のお父さんが厳しい口調で女の子を叱りつけた。


「駄目だよ!笛を乱暴に扱っちゃ!!皆で使う大事な物なんだからね!そんな事する子に笛貸せないよ!!」


普段叱られ慣れていないのか、女の子は「もうやんなっちゃったー」と大声を出して泣き出した。


「嫌だったら無理して来なくていいんだからね!」


女の子が泣き出しても毅然とした態度で叱る青年会のお父さんを見て、凄いなぁ……と感心させられた。

その後も終わりの挨拶の時にぐずった女の子に


「最初と最後の挨拶は皆でちゃんとやるのが決まりだからね!しっかり立って」


と、注意していた青年会のお父さん。

他所の子でも間違った事をしていたらきちんと叱る、注意する………当たり前の事だけれど、中々出来ないんだよなぁ、これ。

それを当然のように実行していた青年会のお父さんに、心の中で拍手しておいたと同時に、女の子のパパに対して『本来なら、貴方が娘を叱るべきなんですよ』と思った。

1年生の子だし、お母さん異国の方だし、文化の違いもあるし……と、どこかで女の子の自由な振る舞いを仕方がないものとしていた私も青年会のお父さんを見習わないといけないなと思った。

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